1月からの「新NISA」でどう変わる?知ってトクする4つの変更点
いよいよ2024年1月からスタートする「新NISA」。これを機に始めてみようと考えている方もいらっしゃるかと思いますが、いったいどこが改正されたのでしょうか?
今回は押さえておきたい4つの改正ポイントを、『1時間でマスター!マンガと図解でわかる新NISAの教科書』(扶桑社刊)の著者で、マネックス証券、国際認定テクニカルアナリスト福島理さんにお話を聞きました。
年金だけでは「老後資金」はたりない
まずは、「年金だけでは老後資金はたりない」「なにもしないでいるとお金の価値は目減りしていくばかり」という現状を踏まえ、これからなにをすればいいのかを福島さんに伺いました。
●「新NISA」で変わること
いよいよ2024年から「新NISA」がスタート。NISA(少額投資非課税制度)そのものは2014年から始まった制度ですが、新NISAは投資枠の拡大や投資可能期間の恒久化など、限定的だった従来のNISAを抜本的に制度改正されます。
「日々の生活や老後にまったく不安がないほどのお金を持っているなら資産運用の必要はないかもしれませんが、多くの人たちにとって新NISAは資産運用の“キホンのキ”となりそうな制度。すでに株式投資の経験がある方はもちろん、これからチャレンジしようと思っている初心者にとっては、新NISAをやらない理由が見つからないと言っても過言ではありません」(福島さん)
NISAは、老後に向けた資産形成を促すため「貯蓄から投資へ」という流れをあと押ししようと、2014年に創設されました。
「投資によって得られる譲渡益や配当などの利益には、通常だと約20%の税金がかかります(2037年までは復興特別税を含め20.315%)。そのため、どんなに儲かったとしても、その税金分を差し引いた金額しか受け取ることはできません」(福島さん)
「たとえば20万円で買った株式が30万円に値上がりして売ったとすると、差額の10万円が譲渡益になりますが、受け取れるはここから約20%の税金を差し引いた約8万円。ところが、NISA口座で売買したものについては、この税金が非課税となるため、10万円をまるまる受け取ることができ、配当金についても同様に税金がかかりません」(福島さん)
●なぜ、今「NISA」なのか?
では、なぜ新NISAが必要だと話題なのでしょうか。
「2019年に話題となった『老後2000万円問題』を覚えていますか? 老後30年間で約2000万円が不足するという金融庁の試算が発端となった問題です。平均寿命が延びる一方で、年金受給額は減少していますので、豊かな老後を送るには、ある程度の老後資金を確保する必要があります。
日々の生活をきりつめながら給料をコツコツ貯蓄していくのもひとつの方法ですが、低金利で利息が期待できない現在では、お金の価値は目減りしていくばかり。そこで新NISAの出番! 日々の充実した生活を送りながら老後資産づくりを目指していきましょう」(福島さん)
●円の価値は目減りしている
2023年は電気代やガス代から食品、日用品まで周りのあらゆるモノ・サービスの価格が上がった1年でした。このような物価の上昇が続くことを「インフレ」と呼びます。物価の上昇に伴って給料などの収入も上がっていけばいいのですが、なかなかそういうわけにはいかず、家計は苦しくなっていきます。
「これまで500円で購入できていたものが500円では買えなくなってしまうわけですから、お金の価値が目減りしたことになります。一方、銀行の預金金利は0.002%程度。100万円を預けていても1年間に20円(税引き前)の利息しかつきません。つまり、ある程度のリスクを取ってでも、資産を運用する必要があるということです」(福島さん)
また、円安が続くのも、日本円の価値が目減りすることにもつながります。
「欧米各国が金利を引き上げる一方で、日本が低金利政策を維持していることで、外国為替市場では円安(ドル高)が進行した1年でした。円安とは一言でいえば、円の価値が下がってしまうことです。つまり、このまま円安が続けば、円の価値はさらに目減りしてしまうことになります」(福島さん)
このような経済情勢で、これからは少なからず投資をしていくことは必須の時代となっています。ただ、投資したことがない人がいきなり株式やFXのデイトレードをするのも難しい…。そこで福島さんは、「2024年から神改正される新NISAがいい」と言います。
「NISAとは『少額投資非課税制度』で、少額の投資について、その利益にかかる税金を非課税にするという制度です。このNISAが“神改正”されて、2024年からとても使いやすくなります」
「新NISA」で改正した4つのこと
福島さんによると、おもな改正点は4つ。では、具体的にどのように改正されるのか、詳しく教えてもらいました。
<おもな改正点4つ>
【1】これまでの「つみたてNISA」と「一般NISA」が一本化される【2】投資限度額が合計で最大1800万円に拡充される
【3】非課税保有期間が無期限化される
【4】一度使った非課税枠が復活する
●1:これまでの「つみたてNISA」と「一般NISA」が一本化される
「これまでは『つみたてNISA』と『一般NISA』がありましたが併用できず、どちらかを選ぶ必要がありました。新NISAでは『つみたて投資枠』と『成長投資枠』の2つの枠が用意されていて、同時に使うことができるようになります。
つみたて投資枠で購入できる対象は積み立てに適した一定の投資信託で、成長投資枠で購入できる対象は上場株式や投資信託など。資産形成のための長期運用に適さないと思われるハイリスク商品が除外される予定です。
今後はコツコツ積み立てをしながら、好きなときに成長投資枠で別の商品を購入するといった具合に、同時に使うことができます」
●2:投資限度額が合計で最大1800万円に拡充される
「なんといっても最大のメリットは、NISAを利用して非課税で運用できる資産の金額が最大1800万円へと大きく広がったことです。これまでの運用できる限度額は『つみたてNISA』で最大800万円(年間40万円×20年)、または『一般NISA』で最大600万円(年間120万円×5年)。両者は併用できず、どちらか一方を選ぶ必要がありました。
ところが新NISAでは『つみたて投資枠』(年間最大120万円)と『成長投資枠』(年間最大240万円)を同時に使うことができるようになり、合わせて年間合計360万円、生涯で最大1800万円まで非課税となり、大幅に拡充されます」
●3:非課税保有期間が無期限化される
これまで、一般NISAは5年間、つみたてNISAは20年間と非課税期間が限定されていました。これが無期限となります。
「これまでは期限がきたら売却したり、通常の課税口座に移管するなどしなければならず、制度開始当初から不満の声が上がっていました。そもそも『老後に向けた資産形成を応援する』という制度の趣旨からすると、5年や20年という期限を設けること自体に無理があり、長期運用の妨げとなっていました。
今回の改正で制度自体が恒久化され、売却や煩わしい手続きが一切必要なくなります。非課税期間が無期限となったことによって、自分のペースでじっくり長期にわたって運用することができるようになったわけです」
●4:一度使った非課税枠が復活する
今回の改正でもっとも画期的なのが、「売却すれば一度使った非課税枠が復活する」という点ではないでしょうか。
「これまでの一般NISA口座では、非課税枠を使って商品を購入すると、たとえそれを売却したとしても、その枠はもう使えませんでした。たとえば年間限度額120万円のうち80万円で株を買ったとすると、残りの非課税枠は40万円。
その株を売却しても、一度使った80万円分の枠は使用ずみとなって再利用できなかったのです。ところが今回の改正で、売却によってあいた分の非課税枠が再利用できるようになります。
仮に総投資額が生涯投資枠の1800万円に達しても、一部を売却することでその分の枠が復活し、再びNISA口座で運用することが可能になります。住宅購入資金や子どもの教育資金などで一時的にお金を使う必要がある場合にも、利用しやすくなります」