インフレが続き、給料が上がらない今、なかなか貯められないという悩みも多いです。そこで、推奨されているのが「投資」です。でもまだまだ二の足を踏んでいる人が多いのも現状。来年1月より「新NISA」もスタートし、ますます見逃せなくなります。ここでは、ファイナンシャルプランナーの丸山晴美先生に、NISAの基本、投資をやるべき理由について教えてもらいました。

新NISAスタート。それでも投資は必要ですか?

「NISAって私の生活に関係あるの?」「いよいよやったほうがいいの?」などと思っている人も多いのではないでしょうか。2024年1月から新NISAもスタートするので、基本も含めて紹介していきたいと思います。

●そもそも「NISA」とは?

イギリスの「ISA(個人貯蓄口座)」という非課税投資のための制度をモデルにした「日本版ISA」(Nippon Individual Savings Account)の頭文字から名づけられました。正式名称は「少額投資非課税制度」と言います。金融庁の主導で行われ、2014年1月から一般NISA口座がスタートしました。

NISA口座は証券口座の一つですが、最大の特徴はNISA口座で得た利益は非課税になるという制度です。通常、投資で得た利益には約20%(20.315%)の税金がかかります。たとえば株式投資をして10万円の利益が出た場合、NISA口座以外の証券口座の場合、約2万円(約20%)の税金が引かれるため、手元に残るのは約8万円ですが、NISA口座で出た利益なら、まるっと10万円が利益になるということです。
ただし、NISA口座は1人1口座ですので、手数料や売買のしやすさなど自分にとって利用しやすい金融機関で口座を開設するのがおすすめです。

●なぜ今投資が必要なの?

日々の生活していく中で、物価は上がっているけど収入が増えない…。そんな漠然とした不安はありませんか? お金の増やし方には「収入を増やす」「節約をする」「投資をする」の3つがあります。

「収入を増やす」とはパートを増やしたり、副業をして増えた収入でお金を貯める方法です。「節約をする」とは生活費をやりくりして浮いたお金を貯める方法です。

3つめの「投資をする」とは、お金に働いてもらうことで、資産運用とも言われるものです。そもそも「新しいNISA制度」がスタートする背景として、金融庁の資料によると、「日本には2000兆円を超える金融資産が眠っているものの、その過半はリターンの少ない現預金で保有されており、この現預金を投資につなげ、勤労所得に加えて金融資産所得を増やしていくことが肝要とである」と書かれています。つまり、自分で働いて収入を得るだけではなく、お金にも働いてもらいながら資産を形成していくことがだれにとっても大切ということです。

●インフレのリスクに備えるためにできること

高齢化が進む中、資産形成の重要性も増しています。元本は確保されるけど、リターンはほとんどない預貯金だけでは将来のインフレリスクに備えることができないのが現状です。預貯金には元本が減るリスクはないとはいえ、物価が上昇すればそもそもの現金の価値は減るので、実質的にはマイナスになっています。

・ここ数年の物価の比較

イメージとしては、10年前の2013年のビックマックは1つ330〜360円で買えましたが、2023年現在では、450〜500円ほどに値上がりました。東京ディズニーリゾートの2013年の1デーパスポートは大人6200円だったのが、7900〜10900円と変動価格制ではありますが、値上がりしています。

・定期預金と運用の場合の比較

では10年間、100万円を定期預金に預けていた場合の利息はどうでしょう。2013年の定期預金金利の平均が0.037%で、満期時の受け取り利息は税引き前3703円、税引き後2951円です。仮に100万円を年3%で10年間運用した場合、税引き前30万246円、税引き後23万9252円です。投資なので、必ずしもこの通りにはなりませんが、あくまでもたとえとして考えてみましょう。

この税引き前と税引き後とは、利息や利益に対して20.35%の税率で税金がかかるため、税引き後が実際に受け取る金額です。「え、そんなに税金が引かれるの?」と驚いた方は、NISAの運用が向いているかも知れません。その理由はこの後に説明しますが、この10年間だけでも状況は大きく変化しており、デフレからインフレへと現金の価値が変わり、預貯金だけではなく、元本が確保されない資産運用も取り入れながら資産を形成する必要があるのです。

・NISAをやるべき?チェックシート

2つ以上にチェックが付いたらNISA口座の開設を検討してもいいでしょう

□ 将来のインフレリスクに備えたい

□ お金に働いてもらうには預貯金では無理があると思う

□ 利益に対する税金20.35%は取られ過ぎだと思う

●新NISAはこんな制度です

「新NISA口座」で、できることは以下です。

・年間投資枠が大幅に拡大

・非課税保有期間が無期限化

・制度が恒久化

投資は、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つで運用できます。つみたて投資枠は、「長期・積立・分散」に適した一定の投資信託で積み立てながら投資ができるもので、成長投資枠は上場株式や投資信託を購入、積み立てることができます。NISA口座の最大の特徴としては、投資などで出た利益に対する税金が非課税となりますので、先ほど例として挙げた年3%で100万円の運用益が、税引き前30万246円そのまま利益として受けることができるというわけです。ですから、せっかく投資で利益を出しても「約20%も税金で引かれるのは嫌だな、損だな」と思う方はNISAを始めてみてもいいかもしれません。

1年間の投資枠はつみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円の合計360万円で、非課税保有限度額が1800万円で、もし売却をした場合、その翌年に投資枠が復活しますので、1800万円の総枠の中で繰り返し投資をすることができる仕組みです。

●投資にまとまったお金は不要です

これから将来に向けてコツコツと資産運用をしたいと考えているなら、「新NISA」口座開設は始めどきでです。現行の一般NISAやつみたてNISA口座を開設している方は、そのまま「新NISA」口座が同じ金融機関で自動的につくられ、つみたてNISAや一般NISA口座(※)で積み立てている投資信託もそのまま引き継がれます。

一般NISA口座の積み立ての場合は一部引き継がれない金融商品もあります。

投資をしてみたいけど、まとまったお金がないからと二の足を踏んでいませんか?

今は100円から投資信託が買えたり、楽天証券では楽天ポイント、SBI証券ではTポイント、Pontaポイント、Vポイントといったポイ活で貯めたポイントでも投資をすることができる時代です。そう考えると、投資のハードルはそれほど高くはないと言えるでしょう。NISA口座を開設して、貯めたポイントは、100ポイント単位で投資信託を購入や積み立てをしたり、やりくりをしたお金を100円単位で投資信託をスポット(好きなタイミング)で購入することもできます。

【投資のお金を捻出する方法】

・ポイ活をしてポイント投資をする…100ポイントから投資信託が買えます

・つもり貯金ならぬつもり投資…買ったつもりで浮いたお金を投資に回す

・固定費の見直しをして浮いた分を投資へまわす…たとえばサブスクを解約して毎月1000円積み立て投資へ

・強制的に積み立てる…悩んでいる時間がもったいないのでとりあえず1万円投資にして後はほったらかしにする

など、意識を投資へ向けることで、なにかしらの形でお金を捻出することができるはずです。意識が変われば資産運用の方法も変わります。生活に必要なお金は確保しつつ、やりくりで浮いたお金は投資へ回す仕組みをつくるだけです。今は、スマートフォンのアプリで投資ができますので、積み立て額の決定や金融商品の設定も簡単にできます。

金融庁の資産運用シミュレーションを使って資産運用を考えてみましょう。

金融庁のHPには、毎月の積立金額と想定利回り(年率)積立期間を入力すると最終積立金額とグラフ、アドバイスを見ることができますので、将来を考えながらじっくりシミュレーションしてみてはいかがでしょうか?

●積み立て投資をするなら、全部お任せできるNISA口座を使った「ロボアド投資」も一手

「ロボアド」とはロボット・アドバイザーを略した言葉です。金融のプロが開発したアルゴリズムによって投資家の資産状況や希望などに合わせた投資信託を診断し、プロの視点で適切な資産運用のアドバイスを受けられ、分散投資のポートフォリオを組んで運用やリバランス(資産の再配分)も行ってくれる投資です。

アドバイス型と投資一任型がありますが、アドバイス型はアドバイスに従って自分で資産運用をします。投資一任型は自動的に資産運用をしてくれます。さまざまな証券会社がロボアド投資の取り扱いをしていますが、NISA口座を使ったロボアド投資は「Wealth Navi」(ウエルスナビ)の「おまかせNISA」が人気です。リスク許容度を決めて、あとは毎月定額を入金するだけで全自動で資産運用をしてくれるというものです。新NISAにも対応しており、最低投資額は1万円からですので、1万円以上強制的に積み立てができて、銘柄選びなど面倒なことは考えたくない人におすすめできるサービスと言えるでしょう。

●これからますます必要な「投資」

お金に余裕がないからと、投資を避けてしまうのはお金に働いてもらうことなく、将来的なインフレリスクに備えることができなくなってしまう可能性があります。ファイナンシャルプランナーの立場からも、預貯金と併用しつつ、日々の出費を見直して浮いたお金を少額からでもNISA口座で「長期・積立・分散」投資をすることをおすすめします。
ぜひ、新年から新たな挑戦として検討してみてください。

NISAの対象商品は、上場株式や投資信託なので、元本割れをする可能性があります