女優・川上麻衣子さんの暮らしのエッセー。 一般社団法人「ねこと今日」の理事長を務め、愛猫家としても知られる川上さんが、猫のこと、50代の暮らしのこと、食のこと、出生地であり、その後も定期的に訪れるスウェーデンのこと(フィーカ:fikaはスウェーデン語でコーヒーブレイクのこと)などを写真と文章でつづります。第31回は、「高齢親の実家じまい」について。手をつけてみるとなかなかに大変で…。

猶予は2か月!高齢親の「実家じまい」

2023年、年末は…(1)本業である俳優業の活動がコロナ前に戻り始めたことを実感しながら、(2)店舗SWEDEN GRACEは全国各地の「北欧フェア」催事をかけ回り、(3)猫譲渡会ではボランティア団体「しあわせにゃんこ」さんとの連携で里親さんへの譲渡が1000匹を達成。(4)WEB上に立ち上げた「にゃなかtown」は住猫登録が着々と伸び、街が彩り始めています。

【写真】川上麻衣子さん幼少期の思い出の品&懐かしのグッズも発掘!

とにもかくにも、やらなければならないことが山積みの毎日。そんな中にあって今年の年末の最大のイベントはなんといっても「実家じまい」です。両親が健在の中での実家じまいは「生前整理」と表現することもあるようですが、まさしくその真っ只中をひとり娘の私は過ごしています。

家族3人全員がB型典型と思われる川上家のため、なかなか行動に移せないジレンマを抱えていましたが、ある日突然やると決めてから、猪突猛進で現在突っ走っています。

実家をしめようと決めてから、不動産屋に家を明け渡すまでの期間はわずか2か月という強行突破。締め切りがなければ、結局は先延ばしになってしまうのだからと、93歳の父、85歳の母そして57歳の私の、たしたらなんと235歳の大騒動です。

●実家の片づけは体力よりも心の消耗が激しい

インテリアデザイナーという両親の職業柄、愛着あるものや資料にあふれ、倉庫と化した実家となり、全容がわからない状態でのスタートでした。

力仕事は主に私と同世代のマネージャーに手伝ってもらい、母は1960年代のヴィンテージとして貴重なお宝を発掘、選別することに専念。93歳の父にはさすがに負担が大きいこともあり、遠隔から、本当に捨てたくないものだけを指示してもらうことにしました。

実際には父は、自分の目で見てしまったらなにを残すべきなのかの判断がつかないことを予測してなのか、「麻衣子の判断に任せるから好きにしなさい」と伝えられました。ただあのレコードプレーヤーとステレオはもったいないなぁ…」とも。

実家じまいがこれほどまでに体力を消耗するとは。ある程度は覚悟をしていましたが、体力以上に精神面での消耗が激しいかもしれません。

●自分自身の幼少期のものも続々発見

少しずつ片づけていくと見えてくる、懐かしい生活道具や、子どもの頃に読み聞かせてくれた絵本たち。

私の部屋からは、自分の好みの曲を集めてつくったカセットテープ。大好きだった百恵ちゃんのアルバムや雑誌中1時代の付録シール。

さらに棚の奥を探っていくとなんと私が1歳の頃に描いたクレヨンのいたずら描きから始まり、成長に合わせてしっかりとスクラップされたスケッチブックが大量に出てきました。

ページをめくると、記憶の中にさえ残っていない自分の足跡がそこにあります。
「捨てるべきなのか、残すべきなのか…」
心が幾度も揺り動かされ、自分が幼かった頃が蘇ります。

●懐かしい思い出に触れながらの片づけ作業

人生において過去に帰りたいと思ったことはまず、ない私でしたが、久しぶりに実家での時間を過ごしていると、父や母が若かった時代が、つい昨日のように思い出されてきます。

昭和の頃に流行したカキ氷マシーンは、まだクーラーが普及していない時代に父とともにシャキシャキという音を楽しみながら、着色料たっぷりのシロップをかけて、真緑になった舌を見せてはしゃいだ夏の思い出。毎日レコードプレーヤーに針を落としていた日々。

ジョン・レノンとオノ・ヨーコのアルバムが話題だと父が自慢げにレコードを持ち帰り、3人そろっての夕食後に鑑賞会となると、聞こえてきたのはなんとも妖艶なオノヨーコの生々しい声。全員苦笑いとなり、だれがどの時点で演奏を止めたらよいものかドギマギした記憶が蘇ります。

●実家じまい…気になる父母の様子は?

実家じまいとは、こういうことなのか…と思う日々。幼少の頃に暮らした家があれば、どこかしらに、記憶を呼び覚ますものたちが存在します。柱に残した成長の証はその典型かもしれません。そしてなにより、両親が設計した部屋そのものが、2人の作品であったことを思い知らされています。

それでも、私たち家族は実家じまいを決めました。正直なところ85歳の母は、この数週間の整理作業で、疲れてはいそうですが、貴重な品々を発掘する喜びからか、以前より生き生きしているように娘には映っています。

反対に、考えることを放棄してしまったと見える父は心の底では寂しいのではないかと心配になります。想像以上に細かく仕分けされた父が集めた資料や写真の数々は、家族だけのものではなく、デザイン界の歴史としても貴重なものに違いなさそうです。

片づけにあると便利な手づくり「TO DO リスト」

娘の苦悩は、まだまだ続く年末。最後に、そんな超多忙で、大切なことをうっかり忘れてしまう不安を防ぐための、付箋活用「私の頭のなかを分割して、TO DO リスト」づくりを紹介します。

私の場合では、
(1) 俳優業
(2) 経営する店舗関連
(3) 猫
(4) SNS
(5) やりたいこと

などと仕分けした紙(2L版の台紙にテーマに合わせた画像やロゴをプリントして、パッと見てわかるようにしています)をつくってその上にTO DO 付箋を貼っています。完了したらはがしていくのですが、これは案外、トイレなどに入れておくと便利。家族が多ければ伝言的な要素にもなるのでぜひ試してみてくださいね。