楽しい旅行につきものなのが、「おみやげ問題」。あの人にあれを買わなきゃ、職場にもお菓子を買わなきゃ…とやっているうちに、帰りの電車乗車ギリギリまで悩んだり、買いすぎてスーツケースに入りきらず、余計なエコバッグを買う羽目になってしまった…なんてことも。

「今の時代、おみやげは無理して買わなくていいです。自分の分もそうですが、職場のおみやげなどもできたらパス」と語るのは、人気スタイリストで、旅の達人でもある地曳いく子さん。大人旅についてつづった新刊『大人の旅はどこへでも行ける 50代からの大人ひとり旅』(扶桑社刊)より、「おみやげ」にまつわる文章を抜粋して紹介します。

旅の新常識。おみやげは「自分用」だけでいい!

今はお伊勢参りも海外旅行も、人生で一度だけという時代ではなくなり、地方の名物や海外の珍しいものも物産展や通販で手軽に買えるようになりました。昔あんなにありがたがられていた仙台の銘菓「萩の月」や北海道の「トラピストクッキー」でさえ、東京で簡単に手に入るようになりました。

●おみやげを購入する際は一度立ち止まってみる

もう義理でおみやげのお菓子を買う必要はありません。珍しくもなんともありませんし、職場の仲間やご近所さんも糖質制限中かもしれませんから!(笑)

地方の銘菓や海外の珍しいチーズやお菓子などを買うなら、自分が帰宅後2〜3日中に食べる量、ほんの数個だけでいいです。

食品以外の人形や皿、絵画なんかもそうです。人からいただいたものは処分しづらい気持ちになるので、かえって迷惑なことも。旅でどなたかへのおみやげを購入しようと思ったときは、ご実家の木彫りの熊、富士山のペナント、謎の木刀などを思い出して一度立ち止まってくださいね。

「みやげもの」ならぬ、みうらじゅんさんが言っている「いやげ物」になってしまいます。キレイな風景の写真をLINEで送った方がよっぽど喜ばれます。

●旅先で調味料を買うのは待って!

国内でも海外でも、旅先で出合う料理には毎回新鮮な驚きがありますよね。使われている調味料にも興味津々。普段使ったことのない新しい味との出合いに感激します。

そんな調味料をスーパーやコンビニで見つけたらさぁ大変! すぐに手に取りレジに直行したくなります。でも、ちょっと待ってください。これは私の経験なのですが、いざ自宅に持ち帰ると使えるものはかなり少ない。旅先のウキウキ気分でいろいろと買うと大変なことになります。結局、棚の奥にしまい込んだまま、数年後にホコリをかぶった状態で発見…なんてことになるのは残念ですよね。

料理を再現しようと思っても、その土地の食材をそろえるのは大変ですし、なにより料理というのはその土地の気候風土に合った味なので、現地でいただく味と日本でいただく味は違うと思います。

●現地では感動したはずなのに…

私が忘れられない味に、カラッとした気候のフランス郊外で食べた、豚のソテーにかかっていたタプナードソース(黒オリーブを刻んだソース)があります。

帰りに空港の売店で見つけて早速買ってきました。帰宅してすぐに豚をソテーしてタプナードソースを添えてみたのですが、なにか違う。あんなにおいしいと思ったタプナードソースが重く感じられました。同じ食材でも湿度の高い日本の夏に食べると同じ味に感じないものです。

調味料だけでなくインスタント食品もそうです。たとえばタイのスーパーで見つけた「パッタイの素」や沖縄で見つけた「沖縄そばの素」も、今やご近所やAmazonで買えます。「パッタイの素」はちょっと高級なスーパーで見つけましたし、「沖縄そばの素」は銀座わしたショップで買えます。

そんな私が買うおみやげは、帰宅した夜や翌日に食べるものです。疲れて帰ってなにもする気が起きないとき、すぐに食べられるものがあると本当にうれしい。駅ビルや空港でご当地の名産品やお弁当を毎回買ってしまいます。「旅もいいけど、やっぱりわが家がいちばん」と思いながら、持ち帰ったお弁当やおかずでハイボールを一杯やるのが楽しみです。

 

『大人の旅はどこへでも行ける 50代からの大人ひとり旅』(扶桑社刊)では、荷づくり、旅ファッション、ホテルや飛行機選びなど、大人ひとり旅のコツをたくさん紹介しています。