両親や夫など身近な人が亡くなったら、呆然とするもの。相続の際に「やってはいけないこと」について、今から知識として蓄えておきませんか。司法書士として終活に取り組んでいる篠田裕子さんが教えてくれました。

気をつけて!相続トラブルになりがちな3つのポイント

身近な人が亡くなって相続が開始すると、悲しみにひたる間もなく、次から次へとやるべき手続きがあります。
そんなとき、焦ってやってしまって「失敗した!」とならたいために、3つのポイントをお伝えします。

●1:「葬式はいらない」という言葉どおりに直葬をすること

「直葬」という言葉は聞いたことがありますか? 通夜式、告別式を行わず、火葬だけ行うことを直葬と言います。生前、「葬儀はやらなくていいから」と聞いていたという理由で「直葬」をした場合、こんなリスクがあります。

直葬したところ、故人の兄弟から「なんでちゃんとした葬式をやらないんだ。あれじゃあ故人がかわいそう」とクレームが入ってイヤな気持ちになったとOさんが話してくれました。

そうならないために、「直葬」をするなら、事前に親族とコミュニケーションを取っておけば、トラブルにならなかったかもしれません。

また葬儀を行わなかったので「お線香をあげたい」と友人や職場の人が絶え間なく自宅に来るのを断るわけにもいかず、疲弊してしまったと、相続の相談に来られたOさんが話してくれました。個々におもてなしする気苦労があるなら、葬儀を行ったほうが気楽だったかもしれませんね。

直葬は費用が安くすむメリットもありますが、デメリットも知った上で利用しましょう。

●2:「マイナスの財産」を確認しないで故人の財産を使ってしまうこと

相続とは、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も引き継ぐことをいいます。
そのいずれも引き継ぎたくないときは「相続放棄」という家庭裁判所の手続きを経る必要があります。

でも、あることをしてしまったために「相続放棄」ができなくなってしまい、マイナスの財産を引き継ぐことになってしまった残念なケースがあることを知っておいてください。

その一例として、相続が開始したことを知った上で、故人の銀行口座からキャッシュカードを使ってお金を下ろして自分自身のために使うこと。これは「法定単純承認」となり、相続放棄をすることができなくなる場合があるので注意が必要です。

なお、葬儀代の支払いに使った場合は高額で社会的に不相当なものといえない限り、法定単純承認にはあたりません。まずはマイナスの財産がないかよく確認してくださいね。

●3:「すぐに遺産分割協議」をして遺産分けをすること

「遺産」とは亡くなった人が残した財産のことですが、財産の中には「負債」も含まれます。その遺産をどうやって分けるかを話し合う遺産分割協議、これを早くやりすぎても、あとからもめることになるかもしれません。

なぜなら、亡くなったあと、しばらくしてから故人の入院費、施設の利用料、クレジットカード利用料などの請求書が届きます。そのとき既に遺産分けをしていた場合、相続人のだれがその支払いをするのか、また話し合いをしなければならないからです。

あとは、高額療養費や介護保険料などの過誤納還付金など申請すれば行政から戻ってくるお金があることもあります。その額がわかるのは相続が開始してから3か月から半年ぐらいかかることも。

あまり早く遺産分割協議をしてしまうと、あとからまた話し合いをする可能性があるので、早すぎる遺産分けはやめておいた方がよさそうです。

●相続は「焦らない」ことがもめない秘訣

相続が始まるといろいろとやらなければならないことの期限が決まっています。それを踏まえた上で、いろいろな手続きをする必要があります。焦らず遅れず。落ち着いて手続きを進めましょう。