道路運送法施行規則等の一部を改正する、省令及び関連告示が8月1日に公布された。それにともない、バス、タクシー(および自家用有償旅客運送)内における、乗務員などの氏名などの掲示義務が同日付で廃止された。

 制度が改正となった理由は、昨今のSNSの普及などで、バスやタクシーのドライバーの個人情報が悪用されることを防ぐためだという。

 日ごろ、タクシーをよく利用する人であれば、助手席の上に掲示されている運転車証に、タクシー会社の名前、ドライバーの顔写真と氏名などが表記されているのを見たことがあるだろう。しかし、今回の改正で、今後は、

《利用者に表示する面から、氏名、顔写真、運転免許証の有効期限を削除します。なお、引き続き運転者証等としての機能を保持するよう、氏名等については利用者から見えない面に記載します》(国土交通省のHPより)

 となるようだ。この変更に、ネット上では賛否が寄せられている。賛成派の意見を見てみよう。

《これでスマホで乗務員の個人情報を撮影してSNSに晒そうとするカスタマーハラスメントを減らすことはできそうだ》

《良いですね。プライバシーを守る事も重要だと思います》

 一方で、否定派の意見も散見される。

《別に氏名は必要ないけど、苦情言いたいときに特定できる仕組みは残しといて欲しい。ごくたまにタクシー乗ると嫌な思いする事あるし。。》

《愛称でも書いておかないと責任ある運転出来ないんじゃない?まあ運転クソなヤツは名前載っててもするけど…》

 タクシードライバーとの、ちょっとしたトラブルを人から聞いたり、自ら経験したりすることは珍しくない。それだけに、運転手の氏名の提示がなくなることを不安視する人がいるということだろう。

 タクシー利用の常連で「この20年、ほぼタクシーに乗らない日がない」というクリエイターのSさん(48歳)も、今回の改正で、運転手のサービス意識が低下することを危惧しているという。

「私は普段から、接客にムラがある個人タクシーは避けて、ちょっと背の高い、いわゆるハッチバック型のタクシーを好んで利用するようにしています。その理由は、運転手さんの接客態度がいいからです。私は20年以上、ほぼ毎日、タクシーに乗っているので、運転手さんといろいろな話をするんですけど、『会社へのクレームなどがない優良ドライバーから、優先的に背の高いタクシーに乗れる』という話を、20人以上の運転手さんから聞いています。

 一方で、背の低いタクシーは、やはり接客態度の悪い人に当たることもあります。しっかりやっている人、態度がよくない人、どちらもいますが、そのどちらでもない『真ん中の人たち』は、乗客に名前を提示されていることで、ちゃんとやってきた人も多かったと思うんです。

 乗客に顔と名前を示すことで、運転手さんもいい意味で緊張感を持って接客するでしょうし、それがサービス向上に繋がってきた面は絶対にあると思うので、それが廃止となると、正直、不安のほうが大きいですね」

 今回の改正が、運転手の接客に影響を与えることはあるのだろうか。