就活の内定倍率「10年前比較」で激変した会社

写真拡大 (全6枚)


10年間で倍率は大きく変化している。倍率が下がった元人気企業はどこか(写真:IYO / PIXTA)

就活が学生優位の「売り手市場」に戻ってきている。

リクルートワークスの「ワークス大卒求人倍率調査(2024年卒)」によると、コロナ禍の2022年卒で1.5倍まで落ち込んだ新卒の求人倍率は、2024年卒では1.71倍まで回復した。


就活生自身も「売り手市場だ」と実感している人が全体の半数強で、コロナ禍前と同水準になっている(ディスコ「2024年卒7月1日時点の就職活動調査〈速報〉」)。

とはいえ、これから本格的に就活を開始する2025年卒の就活生の中には、「良い企業から内定をもらえるだろうか」「どんな企業を選んだらいいのかわからない」と先行きが不安な人もいるだろう。

そんな就活生の企業選びの参考としてもらうため、今回は「倍率」に注目し、10年前は高倍率の人気企業だったが最近倍率が下がった企業と、逆にこの10年で莫大な人気を獲得し高倍率となった企業を紹介していく。倍率は本エントリー(正式応募)数と内定者数を基に算出した。

2014年卒と2024年卒でどう変わった?

『就職四季報 総合版』とその公式デジタルサービス「シキホー!Mine」では、毎年各企業の採用状況を調査し倍率を算出している。リーマンショック後、求人倍率もまだ低迷中であった2014年卒と、直近の2024年卒の総合職(技術系以外)の倍率を比較し成長率の絶対値が大きいものをリスト化した。

倍率が大きく変化した企業は、採用人数の増減があった場合と、応募者数の増減があった場合とがある。2014年卒と2024年卒の総合職(技術系以外)の内定者数も記載したので併せて確認してもらいたい。

まずは、この10年で大きく倍率が上がった企業のリストを見ていこう。


ミルボンは美容室向け業務用ヘア化粧品の首位企業。「ミルボン」「オージュア」などのブランド名を聞いたことがある人も多いだろう。

10年前の倍率は技術系と合わせて52.7倍であったが、2024年卒では技術系は184.4倍、技術系以外は353.4倍とかなりの人気企業に成長した。売上高も2012年12月期から2022年12月期にかけて2倍以上に伸びている。ミルボンを志望する場合は、かなりの人気企業であることを念頭に、同業他社も視野に入れておく必要がありそうだ。

2024年卒は147.5倍になった日本化薬

日本化薬はニッチな高シェア品が多い中堅の化学・医薬企業だ。10年前の総合職(技術系以外)倍率は41.8倍であったが、2024年卒は147.5倍まで上がり、内定者数2人の難関企業となっている。同社は業界平均と比べ平均年収や新卒3年後定着率が高水準となっており、最近の就活生に人気の企業であることもうなずけるだろう。


(出所)『就職四季報』公式デジタルサービス「シキホー!Mine」の日本化薬のチャート表

次に、10年前と比べ倍率が下がった企業を見ていこう。


プレス工業は2014年卒では210倍とかなりの難関であったが、2024年卒では7倍と倍率が大きく下がっている。同社は自動車部品メーカーで、トラック用フレーム・車軸生産で国内トップの企業だ。平均年収は763万円で有給休暇も年間平均14日取得できる。

新光電気工業は、アメリカのインテルを主要顧客に持つ半導体パッケージメーカー。海外売上高比率約9割のグローバル企業だ。10年前は内定者数1人の難関企業だったが、2024年卒では内定者数21人、倍率14倍と現実的なラインに落ち着いている。

「電子部品メーカーは文系学部卒の自分とは関係ないや」と思う就活生もいるかもしれないが、学部卒や文系からの採用も毎年多数あるので、敬遠せずにぜひ候補の1つとして調べてみてほしい。


(出所)『就職四季報』公式デジタルサービス「シキホー!Mine」の新光電気工業の採用実績表

倍率が高すぎない企業とバランスよくエントリー

今回は「倍率」に着目して企業を見てきたが、「やりたい仕事ができるか」や「自分が働きやすい環境か」ももちろん大切だ。これらの軸から志望企業を選び、倍率が高い企業にチャレンジすることは決して悪いことではない。冒頭に述べたとおり売り手市場であるいま、憧れの企業に入れるチャンスをぜひ逃さずつかんでいってもらいたい。

ただ、高倍率の企業にばかりエントリーし気づいたら「持ち駒」ゼロに……という状態は避けたい、というのも就活生のみなさんの本音だろう。本記事や「倍率が25倍以下で平均年収が高い100社」なども参考に、倍率が高すぎない企業とバランスよくエントリーしていくことをおすすめしたい。

(丹羽 夏海 : 東洋経済『就職四季報』編集部)