不景気なときほど、いろんな人が働きに来ます

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ゴミ清掃員としても働く芸人の滝沢秀一(マシンガンズ)が、ゴミを回収していて気が付いた事実、それが「金持ちの家から出るゴミは少ない」ということ。長年にわたりゴミを見続けた滝沢氏だからわかる、ゴミに隠された秘密を教えます! みんなでゴミを少なくして、金持ちになろう!

【画像】今週のゴミトリビア

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最近あらゆるものが値上がりし、家計が圧迫されていますよね。ゴミ業界も例外ではなく影響はありますが、給料に関しては世間の景気にあまり左右されないのがゴミ業界のいいところ。公務員のような感じと思っていただければわかりやすいかもしれません。

ただ、世の中の景気を映し鏡のようにあらわすのもまた「ゴミ業界」の特徴でもあります。かつてコロナ禍では、不景気のためゴミ業界に転職してくる人がいっぱいいました。僕が出会った中には、元通訳や元ホストがいました。

コロナが落ち着き街に活気が戻ってくると元ホストはお店に帰っていきましたが、元通訳の人は「通訳と違って毎日仕事があるし、ゴミは文句を言わないから」と、今でも働いています。

また、景気がいいときほどゴミは多くなりますし、今でも給料日近辺のゴミの量は多いです。それだけゴミと僕たちの生活は密接だということがわかります。

そんなゴミ業界ですが、やはり燃料代の値上がりの影響は大きいところです。


■高騰する燃料費

ゴミを燃やすための燃料であるコークスや、ゴミ回収車の燃料(CNGなど)が高騰しています。現在、東京23区でゴミ回収は無料ですが、高騰が続くなら有料化されることも無いとは言えません。

コークスは「溶融炉」の燃料として使われています。溶融炉というのは、ほとんどのものを高温で溶かす焼却炉の一種です。なので、あまり分別をせずにゴミが捨てられる自治体では溶融炉を使っている可能性が高いです。1300度もの高温で燃やしますので、ダイオキシンなどの有害物質が出にくいと言われています。

そう聞くといいことばかりに思えるかもしれませんが、燃料のコークスはそもそも高額です。オーストラリアなどから買っているのですが、契約などの関係で直接輸入ができず、一度中国を通して日本に来る関係でかなりお金がかかるところもあるみたいです。燃料代が高騰している今となってはさらに、ということでしょう。

また、「何でも溶かすことができる」ということは、資源として再利用できたはずのものもすべて溶かして捨てている、ということにもなります。

分別をしなくて済むのは住人にとって便利なことですが、そういう地域のゴミの量は減りづらいそうです。気軽にごみを捨てられるからなのでしょう。

便利なことはいいことですが、それと引き換えに燃料やお金、人員の確保などさまざまな負担を負うことになるわけです。

ゴミについて考えるときは、エネルギーや費用、さらに雇用についてもよく考える必要があるのだと思います。


中身が入っていると回転板に挟まれて破裂し、清掃員の目に入る危険があります。中身は出して捨ててください!

■「ゴミ」と「雇用」の関係性

かつて、フィリピンに「スモーキーマウンテン」と呼ばれたゴミの山に埋もれた町がありました。政府は住人を退去させ、ゴミの山を撤去しました。町が綺麗になってよかった、そうなるはずだったのですが、住人たちはみな怒ったそうです。

彼らはゴミの山からお金になりそうなものを探して売ることで、生計を立てていました。ゴミの山がなくなったことで、仕事を失ってしまったのです。

これはとても難しい問題だと思いました。ゴミがなくなれば僕も仕事を失う立場ですから、他人ごととも思えません。ゴミと雇用は密接に関係しています。ゴミがなくなるとどうなるか、慎重に考えなければいけなかったのでしょう。例えば、ゴミを撤去した跡地にリサイクル工場を建てて雇用を発生させるとか。ただ単純にゴミを減らすのではなく、いい意味で減らしていかなければなりません。

世の中からゴミを無くしたいという思いはありますが、そう単純なことではないのかもしれませんね。現実的にゴミがゼロになるということは難しいでしょう。だからこそ、生活ととても密接に関係しているゴミのことを、しっかりと考える必要があるのです。

滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)
1976年9月14日生まれ、東京都出身。
お笑いコンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、ゴミ清掃員としての仕事もこなす。
著作はゴミ清掃員の体験を書いたエッセイ『このゴミは収集できません』ほか多数
公式Twitter【@takizawa0914】

※ごみの捨て方のルールは自治体によって異なります。お住まいの地域のルールをご確認ください。

イラスト/北村ヂン