イ・ミョンジェ(右)のSNS投稿に端を発する一大騒動。クラブと関わった選手たちは謝罪に追われた。(C)Getty Images

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 韓国サッカー界のトップ選手たちが示した軽率な行動が物議を醸している。

 韓国放送局『KBS』や全国紙『スポーツ朝鮮』などが一斉に報じたのは、Kリーグ王者・蔚山現代の選手たちによる人種差別疑惑だ。現地6月10日、蔚山は本拠地で済州ユナイテッドと対戦して5―1の快勝を収めた。その試合後、蔚山のDFイ・ミョンジェがSNSに投稿した自身の写真を巡って、チームメイトたちがあれこれと意見を書き込んだという。

 かつてアルビレックス新潟でもプレーしたイ・ミョンジェはやや浅黒い肌の持ち主。そんな彼を僚友たちが東南アジアのひとになぞらえ、さらには全北現代に以前所属していたタイ代表のDFササラック・ハイプラコーン(現ブリーラム・ユナイテッド)に喩えるなどしてイジったのだ。

 MFイ・ギュソンが「ASEAN(東南アジア)枠は心強いね」と書けば、MFパク・ヨンウは「ササラックのフォームが凄い」と揶揄。ほかにも蔚山のチームスタッフも加わって悪ふざけを続けたのである。

 するとファンやフォロワーからはすぐさま人種差別だと指摘する声が殺到し、タイ語での抗議コメントも多く寄せられた。慌てたイ・ミョンジェはすぐさま投稿を削除。パク・ヨンウが翌朝に、蔚山は12日になって謝罪文を掲載して事態の収束に努めた。イ・ミョンジェ、イ・ギュソン、パク・ヨンウの3人はいずれもチームで副主将を務める立場にある。蔚山は状況を調査・把握したうえで、懲罰委員会を開くと公言した。
 
 そして全北が公式SNSで「NO ROOM FOR RACISM(人種差別に場所はない)」との声明を発すると、ササラック自身がその投稿をリツイートして想いを共有。『KBS』によれば、韓国プロサッカー連盟は人種差別的な振る舞いに対して明確な規定を設けており、選手には10試合以上の出場停止処分と、1000万ウォン(約100万円)以上の制裁金などが科されるようだ。

 韓国の国民的英雄、ホン・ミョンボ監督が率いる蔚山現代。昨季に17年ぶりのリーグ優勝を飾り、2023年シーズンもここまで18試合を終え、2位に13ポイント差をつけて首位を独走中だ。元日本代表のMF江坂任が今季からプレーしているほか、元ガンバ大阪のDFキム・ヨングォン、元韓国代表のMFイ・チョンヨン、FWパク・チュヨンら大物がずらりと名を連ねる韓国屈指の名門クラブである。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

【画像】全北現代が真っ黒画面で「NO ROOM FOR RACISM」と抗議