●製品概要とテスト環境の紹介 / 3DMark

Desktop向けのRadeon RX 7600が登場となった。7600という型番はMobile向けには今年1月のCESで発表されているが、Desktop向けにやっとこれが降りてきた格好だ。ということでスペック及びベンチマーク結果をご紹介したいと思う。

テストに用いた「Radeon RX 7600」。メインストリーム級のゲーミングデスクトップ向けに新登場した。注目はコストパフォーマンスだ

まずRadeon RX 7600のポジショニングを明確にしておくと、2K(つまり1080p)に対応した、Gamingのメインストリーム向け製品ということになる(Photo01)。ただ異なるのはその価格だ。Radeon RX 6600が$329、Radeon RX 6600 XTが$379とされていたのに対し、Radeon RX 7600は実に$269である。それでいてスペックは大幅に強化されている(Photo02)。ただしメモリは8GBということもあり、基本は1080p向けとなっており、それ以上の解像度は推奨しない(不可能ではない)、としている(Photo03)。

Photo01: RNDA 2世代の場合はRadeon RX 6600 XTがここに位置付けられていた(参考記事はこちら)。

Photo02: 流石にTBDは132Wから165Wに増えた(Radeon RX 6600 XTは160Wだから、こちらと比較しても微増)だが、後のスペックは全て上回っているのが判る。

Photo03: 右の価格帯は、現時点でのAMDの製品ラインナップでのものとなる。

製品の位置付けとしては、GeForce GTX 1060(Photo04)やGeForce RTX 2060(Photo05)の置き換えに最適というものだが、Radeon RX 6600(Photo06)はもとより8GB版のGeForce RTX 3060(Photo07)や12GB版のGeForce RTX 3060(Photo08)と比較しても高速としている。またeGamesなどで利用される、比較的負荷の低いFPS系のフレームレートはこちら(Photo09)で、十分に楽しめるとしている。

Photo04: そもそもGeForce GTX 1060で1080p Max Settingというのが無茶な気はするのだが。

Photo05: Photo04と比べると向上率は大分少なくなっているが、それでもそれなりに性能が向上しているのが判る。

Photo06: 流石に性能向上率は大分穏やかに。

Photo07: Photo06と比較すると、Radeon RX 6600がGeForce RTX 3060よりも高速に思えてしまうのが不思議。実際にはGeForce RTX 3060の方がやや高速である。

Photo08: DXRTを有効にするとやはりまだRDNA系列はGeForceには及ばないのは、Radeon RX 7900シリーズでも確認されていることであり、それが多少足を引っ張っているのは致し方なしではある。

Photo09: Dota 2だと解像度を変えてもフレームレートが変わらないあたり、CPUネックな気がする。ちなみにRyzen 5 7600XにDDR5-5200 32GB Memoryの構成だそうだ。

これとは別に、Encodeなどでも高速(Photo10)とか、Stable Diffusionが36%高速になった(Photo11)といった話も示されたが、EncodeはともかくStable Diffusionを使うなら現時点ではGeForce系列を使うべきだとは思う。

Photo10: こうした用途にRadeon RX 6600/GeForce RTX 3060を使うのか? というのがまず疑問ではあるが。

Photo11: これは恐らくだがStable Diffusion WebUI DirectML版を利用しての結果と思われる。

ちなみに冒頭でも触れた様に、Radeon RX 7600は要するに今年1月のCESで発表されたRadeon RX 7600M XTのデスクトップ版という位置づけである。なのでNAVI 31とは異なりGCDとMCDの機能が一つのダイに収まったMonolithic構造。製造プロセスはTSMCのN6である。出荷開始は5月25日で、複数のAIBメーカーから製品がリリースされることとなっている(Photo12)。

Photo12: 普通だと各メーカーのカードの紹介などがありそうなものだが、現時点でこれが出ていないあたりは相当綱渡りスケジュールになっているものと思われる。そもそもレビュー用にReferenceが出てくるあたりが、かなりスケジュールがタイトだったことを伺わせる。

余談ながら、今年のCOMPUTEX TAIPEI、AMDは「大きなイベントは一切用意していない」(広報談)ということで、AIBメーカーのブースなどにはこれが展示されるかもしれないが、それ以上の情報はなさそうだ。直近で言えば、米国時間の6月13日にオンラインイベントが開催されるが、こちらも名前の通りデータセンターやAI向けということで、コンシューマ向けにはあまり関係ない話である。

○評価機材

さてRadeon RX 7600、今回届いたのはAIBメーカーのものではなく、AMD提供のReference Modelである。パッケージそのものは比較的コンパクト(Photo13)。全体的にモノトーンというかモノクロっぽいところにワンポイントで赤が入っているのが余計に目立つ格好だ。型番から判る通りメインストリーム向けで決して高価な製品帯向けでは無い筈だが、Reference Modelという事もあってかパッケージの構造はそれなりに豪華である(Photo14)。

Photo13: パッケージ外形寸法は260mm×173mm×65mm、重量1091.5g(いずれも実測値)。

Photo14: この構造、AIBメーカーから登場するときには簡略化されるだろうなぁ。

カードそのものはちょっと寸詰まり感はあるものの、手頃なサイズである(Photo15)。ちょっと珍しいのはファンの外周がリング状になっていることだろうか?(Photo16)。ファンそのものの厚みは7mm程度である。裏面はこのグレードのカードとしては珍しくフルカバード構成となっている(Photo17)。

Photo15: ファンは直径80mm。寸法は203mm×103mm×38mm、重量754.0g(いずれも実測値)。

Photo16: 一種のダクテッドファンではあるが、ここまで厚みが無いとそういう効果を期待できるのかは謎。

Photo17: カバーはカードエッジ端から4mmほどはみ出す格好になっている。

このアングル(Photo18)で見ると、全体としてのコンパクトさが良く判る。上面のヒートシンクには、パッケージと同じようにワンポイントで赤のストライプが入っているのが判る(Photo19)。補助電源は8pin×1(Photo20)。ほぼ基板全面をヒートシンクで覆っている格好だ(Photo21)。

Photo18: 細かくエッジを斜めに落としたり、とコストの掛かる構成になっており、結構見た目は格好良い。このReference Model、一般に発売されるといいのだが。

Photo19: 角を細かく落としているのもセンスが良い感じである。全体の流れとしては、Radeon RX 7900 XTX/XTに近い。

Photo20: 基板そのものはこの補助電源コネクタギリギリのところまで来ている模様。

Photo21: 完全に向こうが透ける訳では無い。斜めの影は、ヒートパイプの配管である。

出力はDisplayPort×3+HDMI×1という構成(Photo22)。このDisplayPortがRadeon RX 7900 XTX/XT同様にDisplayPort 2.1である。後端は綺麗に面取りされている(Photo23)。

Photo22: カードの高さはカードエッジ端から8mmほどはみ出しているが、この程度なら対応できるケースは多いと思う。

Photo23: この寸法と重要ならカード保持用リテンションを使う必要もないから、このスッキリさも納得。角を落としてあるので、ケース内の配線に引っかかり難そうなのも好感が持てる。

表1にテスト環境を示す。今回はスライドにもあったRadeon RX 6600とGeForce RTX 3060 8GB版を対抗馬として用意した。ちなみにRadeon RX 6600の方は筆者の私物、GeForce RTX 3060の方は以前レビューしたZotacの製品である。

ちなみに今回は1080pがメインということで、解像度は1600×900pixel(1.5K)/1920×1080pixel(2K)/2560×1440pixel(2.5K)の3つに絞った。ただAMDは1080pでMax Settingが可能ということで、各ゲームの描画設定はかなり高いものにしている。ただしRay Tracingはやる前から駄目だろうということが見えている(そもそもGeForce RTX 3060ですら、Ray Tracingを使うとかなり性能が下がる)ので、可能な限り無効化している(無効化できない一部のゲームを除く)。DLSS/FSRなどの超解像度に関しては無効化した状態と、有効にした状態の両方を測定した。ちなみに設定は品質優先としている。

なお、グラフ中のビデオカードの表記は

とした。

○◆3DMark v2.25.8098(グラフ1〜3)

3DMark v2.25.8098

UL Benchmarks

https://benchmarks.ul.com/3dmark

グラフ1

グラフ2

グラフ3

おなじみ3DMarkであるが、今回はメインターゲットが2Kという事もあり、4K解像度で実施されるWildLife Extreme/FireStrike Ultra/TimeSpy Extremeについてはテストを省いた。とはいえ、2.5Kのテスト(WildLife/TimeSpy/PortRoyal/SpeedWay)が多く含まれているので、それなりに負荷は掛かっている。

さてOverall(グラフ1)を見ると、ほぼ全て(SpeedWay以外)でRadeon RX 7600が明らかに高い性能を発揮している。意外だったのはRay Tracingを使うPortRoyalでGeForce RTX 3060を上回っている事。Radeon RX 6600が概ね「GeForce RTX 3060にちょっと及ばない」程度の性能なので、ここから大きく性能を伸ばした感がある。

これはGraphics Test(グラフ2)からも明白である。今回はCPUが共通だから、性能差はほぼ全てGPUに起因することになる。実際傾向そのものはグラフ1と2で全く一緒である。

そしてFireStrikeのGraphics Testの結果はそのままCombined Test(グラフ3)に反映される訳で、当然こうした結果になる。少なくとも今回の3製品の中では、確かに高い性能を発揮できていることが確認できた。

●ゲームその1: Borderlands 3 / Company of Heroes 3 / Cyberpunk 2077

○◆Borderlands 3(グラフ4〜9)

Borderlands 3

2K Games

https://borderlands.com/ja-JP/

ベンチマーク方法はこちらのBorderland 3の項目に準ずる。設定は

全体的な品質:ウルトラ

アンチエイリアス:テンポラル

とした。なおDLSSやFSRには未対応である。

グラフ4

グラフ5

グラフ6

グラフ7

グラフ8

グラフ9

もう結果(グラフ4〜6)からも明らかだが、Radeon RX 7600はRadeon RX 6600は元よりGeForce RTX 3060と比較しても、圧倒的な性能を誇っているのが判る。FSRには未対応だが、ウルトラ設定でこれだけ性能が出れば十分というべきか。2Kで120fps近い平均フレームレートは、かなり満足度が高いと思う。フレームレート変動(グラフ7〜9)からもこれは明らかで、2Kは元より2.5Kで常用しても差し支えない、と考えて良いと思う。

○◆Company of Heroes 3(グラフ10〜15)

Company of Heroes 3

Relic Entertainment

https://www.companyofheroes.com

ベンチマーク方法はこちらのCompany of Heroes 3の項目に準ずる。設定は

Image Quality:Ultra

Physics Quality:High

Shadow Quality:High

Texture Detail:Ultra

Geometry Detail:Ultra

Anti-Aliasing:High

とした。これもDLSSやFSRには未対応である。

グラフ10

グラフ11

グラフ12

グラフ13

グラフ14

グラフ15

Borderlands 3に比べるとやや重いかな? というCompany of Heroes 3だが、Radeon RX 6600と比較するとRadeon RX 7600の性能の高さは明白である(グラフ10〜12)。とはいえ、GeForce RTX 3060と比べると大きくは変わらない感じではあるが。

これはフレームレート変動(グラフ13〜15)からも明らかで、2KとかだともうGeForce RTX 3060と差が無い感じだ。ちなみに全般的にグラフが右下がりになっているのは、後半になるとどんどんユニットが追加され、軽くCPUネックが発生し始めているためで、GPUの側の問題ではないと思われる。フレームレートだけで判断すれば、2Kは元より2.5Kでも十分プレイ可能という感じだ。

○◆Cyberpunk 2077(グラフ16〜21)

Cyberpunk 2077

CD PROJEKT RED

https://www.cyberpunk.net/us/ja/

ベンチマーク方法はこちらのCyberpunk 2077の項目に準ずる。設定は

Quick Preset:Ultra

とした後でFSR 2.1を無効化している。またDLSS/FSR 2.1利用時はどちらもQuality Settingで利用した。

グラフ16

グラフ17

グラフ18

グラフ19

グラフ20

グラフ21

ということで結果(グラフ16〜18)だが、全体として面白いのは1.5KだとDLSSの効果が殆ど無いのに、FSR 2.1だと1.5Kでもちゃんと性能が上がる事だろうか。とは言え、流石に1.5KだとFSR使っても粗がかなり目立つ。それはともかくとして、こちらでも性能の伸びが明白だ。2Kでの平均フレームレートを比較すると、DLSS/FSR無しだと

と、ほぼ12fps位づつの差をつけている。Radeon RX 6600でも平均60fpsを確保しているとは言え、最小で50fps程度だからちょっと心もとない程度。GeForce RTX 3060でまぁコンスタントに60fpsを維持、Radeon RX 7600ではそこに10fpsの上乗せが入る格好で、十分にPlayableなところまで性能が引きあがっている。DLSS/FSRはQuality Settingということで性能の上乗せは少ないが、それでも15fps程度は上振れしている訳で、性能と画質のバーターとは言え2Kだとまぁまぁ使える格好。2.5KだとRadeon RX 6600/GeForce RTX 3060はDLSS/FSRを使ってもちょい厳しい(Balanced/Performance Settingへの変更が必要)が、Radeon RX 7600だとQuality Settingのままでもギリ行ける感じで、その意味でもヘッドルームの大きさが貢献している感じだ。

これはフレームレート変動(グラフ19〜21)からも明白で、Radeon RX 7600はFSRなしで2K、FSRありなら2.5Kまでは十分に楽しめる性能となっているのが判る。

●ゲームその2: F1 22 / Far Cry 6 / Hitman 3 / Metro Exodus

○◆F1 22(グラフ22〜27)

F1 22

EA Sports

https://www.ea.com/ja-jp/games/f1/f1-22

ベンチマーク方法はこちらのF1 22の項目に準じる。設定は

Anti Alias:TAA only

Anisotropic Filter:16X

Detail Preset:Ultra High

である。またDLSS/FSR2利用時はどちらもQuality Settingとしている。

グラフ22

グラフ23

グラフ24

グラフ25

グラフ26

グラフ27

まず結果(グラフ22〜24)だが、PresetをUltra HighにするとDXRTが無条件で有効になるために、RT Engine側がボトルネックになるため、Radeon RX 6600は2Kだと平均で50fps切りという厳しい数字だし、GeForce RTX 3060も平均63.8fpsだからあまりゆとりは無い。これはRadeon RX 7600も同じだが、それでも平均67.7fpsを実現しているのは流石である。そしてボトルネックがRT Engineだから、DLSS/FSRを使うと恐ろしいほど性能が上がる。2Kの場合でも倍とは言わないまでも1.6〜1.7倍フレームレートが向上するのは非常に有難い。実際Radeon RX 7600はFSRを有効化すれば2.5Kでも十分プレイできるフレームレートを確保できているのが判る。そしてDLSS/FSRなしだとそれほど無いGeForce RTX 3060とRadeon RX 7600の差は、有効化すると大きく広がるあたりも興味深い。

フレームレート変動(グラフ25〜27)でもこれは判る。2Kの場合で言えば、GeForce RTX 3060とRadeon RX 7600の性能はあまり変わらず、DLSS/FSR無しだとなんとか60fps辺りに留まる程度。ところがFSR/DLSSを有効化すると90fpsを切らない程度までフレームレートが上がるので、十分プレイを楽しめる。2.5KだとGeForce RTX 3060はちょい辛いが、Radeon RX 7600はまだ余裕が十分であるのが判るあたり、性能差そのものは小さく見えるがヘッドルームの大きさはRadeon RX 7600の方が大きいということだ(もっともFSR無しだとRadeon RX 7600でも2.5Kは厳しいが)。

○◆Far Cry 6(グラフ28〜33)

Far Cry 6

Ubisofy Entertainment

https://www.ubisoft.com/ja-jp/game/far-cry/far-cry-6

ベンチマーク方法はこちらに準ずる。設定は

Quality:High

Antialias:TAA

DXR Reflections/Shadows Off

としている。またFar Cry 6はDLSSには未対応だがGeForce RTX 3060でもFSR 1.0は利用できるので、こちらを利用している。この際の設定はUltra Qualityである。

グラフ28

グラフ29

グラフ30

グラフ31

グラフ32

グラフ33

結果(グラフ28〜30)を見るとGeForce RTX 3060とRadeon RX 6600が概ね同程度の性能で、そこからRadeon RX 7600が頭一つ抜け出している格好だ。ただそのRadeon RX 7600、流石に1.5KでFSRは全然効果が無いし、2Kでもあまり効果が無いのに、2.5Kではそれなりの性能向上があるというあたりは、ひょっとしてCPUがボトルネックになっているのかもしれない。

それにしても2Kの場合、Radeon RX 6600/GeForce RTX 3060のFSR有効の場合より、Radeon RX 7600の生の性能の方が上、というあたりは流石と言うべきか。ただ絶対的なフレームレートで言えば、Radeon RX 6600/GeForce RTX 3060も2Kでプレイするには十分で、2.5Kだとちょい厳しいかな? と言う程度。FSRを併用すれば2.5KでもOKだろうが、Radeon RX 7600は更に性能が上な訳で、これならFSRを併用すれば3Kでも十分行けるし、設定を変えれば4Kもギリいけるかもしれない。ただPerformance Settingにすると4Kでも結構画質が荒れるので、その位なら3Kに留めておく方が無難な気はするが。

フレームレート変動(グラフ31〜33)を見ると、ただもう少し話が変わってくる。性能差が明確に出るのは45〜50秒付近で、そこから60秒くらいまでの間は急に性能差が無くなる。これは要するにこの辺になるとCPUがボトルネックになりつつあるという話で、性能差が明確なのは10秒くらいまで、その後は差がずっと小さくなっているのが判る。実際描画負荷全体が上がる2.5Kだとグラフが非常にフラットっぽくなっている辺りは、DXRTを無効化している限りにおいてFar Cry 6はそもそもあまり描画負荷が高くない(≒それ以外の負荷が大きい)という事なので、あまり高解像度とか欲張らないで2〜2.5Kで遊んでいるのが無難なのかもしれない。

ちなみに今回は敢えてDXRTは無効化しているが、これを有効化すると今回の3枚はどれも2KですらFSRを有効化してギリという感じで、その意味ではまだDXRT対応ゲームを遊ぶにはちょっと物足りないというべきなのかもしれない。

○◆Hitman 3(グラフ34〜39)

Hitman 3

IO Interactive A/S

https://www.epicgames.com/store/ja/product/hitman-3/home

ベンチマーク方法はこちらのHitman 3の項目に準じる。設定は

Adaptive Supersampling Technique:Off

Ray Tracing:Off

Level of Detail:Ultra

Texture Quality:High

Texture Filter:Anisotropic 16x

SSAO:Ultra

Shadow Quality:Ultra

Mirrors Refrection Quality:High

Reflection Quality:High

Variable Rate Shading:Off

Motion Blur:High

Simulation Quality(Graphics):Best

とした。またDLSS/FSR2利用時はQuality Settingにしている。

グラフ34

グラフ35

グラフ36

グラフ37

グラフ38

グラフ39

さて、訳の分からない結果(グラフ34〜36)になったのがこちら。Hitman 3はNativeでDLSS/FSR2/XeSSに対応しているのだが、有効化すると解像度に関係なくフレームレートが低空飛行するというのはどういう事か? 以前こちらの記事で試した際には、4K+DXRTと4K+DXRT+SS(DLSS/FSR)を比較するとDLSS/FSRを使った方が性能が向上していたから、効果が無いわけではない筈なのだが、DXRTを無効化した状態で使うとむしろ効果薄(というか性能が下がる)のかもしれない。

そんなわけで今回の場合はDLSS/FSRの事は考えずに使うのが吉ということになるが、Radeon RX 7600の性能はGeForce RTX 3060と同等だが、1.5Kではやや負けており、逆に2.5ではやや勝っているあたりは、若干とは言え性能の上乗せがあると考えても良いかもしれない。フレームレート変動(グラフ37〜39)で見ると甲乙を付けるのは難しい感じではあるが。いずれにせよ、Radeon RX 6600から比べると随分の向上だし、2Kは元より2.5Kでも十分プレイできる性能、として良いかと思う。

○◆Metro Exodus PC:Enhanced Edition(グラフ40〜45)

Metro Exodus PC:Enhanced Edition

4A Games

https://www.metrothegame.com/

ベンチマーク方法はこちらのMetro Exodus Enhanced Editionの項に準じる。設定はUltraプロファイルに準ずる。FSRには未対応なので、GeForce RTX 3060のみDLSS利用時はQuality Settingで利用した。

グラフ40

グラフ41

グラフ42

グラフ43

グラフ44

グラフ45

さて結果(グラフ40)を見ると、Radeon RX 7600は流石にGeForce RTX 3060+DLSSには勝てないものの、確実にGeForce RTX 3060の生の性能を上回っており、2.5Kは厳しいものの2Kならば十分という感じだ。ちなみにこのMetro Exodus PC:Enhanced EditionもDXRTが無効化できない(Metro Exodusは無効化できたが、PC:Enhanced Editionは無条件で利用される)事を考えると、かなり性能の上乗せがあると考えられる。実際Radeon RX 6600とのフレームレートの差がその性能の向上ぶりを物語っている。

フレームレート変動(グラフ43〜45)の2Kを見ると、60fpsを切るのは75〜90秒付近の「いつもの場所」だが、ここだとGeForce RTX 3060+DLSSとフレームレートが大差ない事から判るように、描画以外の事がボトルネックになっていると考えられ、それ以外はほぼ60fpsを切らない事から判るように、十分高速である。2.5Kは流石に厳しいが、2K向けのビデオカードという位置づけだからこれは問題にならないだろう。どうしても高解像度で使いたければ、何ならRSR(Radeon Super Sampling)を使うという技もあるからだ(限界はあると思うが、多分2.5Kまでなら何とかなるだろう)。

●ゲームその3: Tomb Raider / The Division 2 / Watch Dogs

○◆Shadow of the Tomb Raider(グラフ46〜51)

Shadow of the Tomb Raider

SQUARE ENIX

https://tombraider.square-enix-games.com/en-us

ベンチマーク方法はこちらに準じる。設定は

Preset:Hightest

Ray Traced Shadow Quality:Off

としている。

Shadow of the Tomb Raiderの場合、FSRには未対応だがDLSSとXeSSには対応している。なので、GeForce RTX 3060はDLSSで、Radeon RX 6600/7600はXeSSをそれぞれQuality Settingで利用した。

グラフ46

グラフ47

グラフ48

グラフ49

グラフ50

グラフ51

さて結果(グラフ46〜48)を見ると判るように、DLSSは効果があるが、XeSSは逆効果だった。まぁそれでもGeForce RTX 3060+DLSSより生のRadeon RX 7600の方が性能が上だから、実質的には問題は無いと言えるが。性能的には、2.5Kまで十分プレイ可能という数字に見える。

これはフレームレート変動(グラフ49〜51)からも明らかである。2Kだと120fpsを割り込むことも稀だし、2.5Kでも80fpsを維持しており、これだけフレームレートがあれば十分プレイ可能である。まぁそれを言えばRadeon RX 6600も一応2Kで60fpsは維持している様にも見えるので、プレイは可能といえば可能なのだろうが、ちょっとギリギリであり、Radeon RX 7600のヘッドルームは魅力的である。

○◆Tom Clancy's The Division 2(グラフ52〜57)

Tom Clancy's The Division 2

Ubisoft

https://www.ubisoft.co.jp/division2/

ベンチマーク方法はこちらの"Tom Clancy's The Division 2"に準ずる。設定は

品質:ウルトラ

とした。DLSS/FSRには未対応である。

グラフ52

グラフ53

グラフ54

グラフ55

グラフ56

グラフ57

今となっては軽めのゲームに分類されてしまうThe Division 2。結果(グラフ52〜54)を見ると、Radeon RX 6600は元よりGeForce RTX 3060と比べても明確に性能差があるのが判る。また2Kは当然の事、2.5Kでも十分なフレームレート(平均73.6fps)を確保しているのが判る。

フレームレート変動(グラフ55〜57)でもこれは明白で、2Kではほぼ100fps、2.5Kでも70fps前後を維持しており、50fps台をうろついているRadeon RX 6600や、時折60fpsを割り込むGeForce RTX 3060とは比較にならない。2.5Kまでの範囲には十分な性能、として良いと思う。

○◆Watch Dogs:Legion(グラフ58〜63)

Watch Dogs:Legion

Ubisoft

https://www.ubisoft.co.jp/wdlegion/

ベンチマーク方法はこちらの"Watch Dogs:Legion"に準ずる。設定は

Quality:Ultra

RT Reflection:Off

DLSS:Off

としたうえで、GeForce RTX 3060のみQuality SettingでのDLSS利用環境も比較している。

グラフ58

グラフ59

グラフ60

グラフ61

グラフ62

グラフ63

比較的重めに分類されるWatch Dogs:Legion。実際結果(グラフ58〜60)を見てもそんな感じ。Radeon RX 6600とGeForce RTX 3060がほぼ同じ性能で、DLSSを使うと10〜16fpsの上乗せが(GeForce RTX 3060のみ)生まれるが、Radeon RX 7600はそのDLSSの場合よりもさらに性能が高い。2KだとRadeon RX 6600/GeForce RTX 3060が60fps台なのに、Radeon RX 7600はほぼ90fps近いというあたりでこれは明白である。

フレームレート変動(グラフ61〜63)からもこれは明らかである。Radeon RX 7600は2Kだと一番性能が下がっても70fps台で、通常は80fps台を維持している。対してRadeon RX 6600/GeForce RTX 3060は60fps台で、時々60fpsを割り込むという感じ。流石に2.5KだとRadeon RX 7600もちょっと厳しいが、2K向けビデオカードという位置づけで言えば十分な性能として良いかと思う。

●PCMark / 消費電力 / 評価まとめ

○◆PCMark 10 v2.1.2600(グラフ64〜69)

PCMark 10 v2.1.2600

UL Benchmarks

https://benchmarks.ul.com/pcmark10

グラフ64

グラフ65

グラフ66

グラフ67

グラフ68

グラフ69

一応ちゃんと2Dアプリケーションも使える、という確認のためにPCMark 10も実施してみたが、御覧の通り全く問題ない、という結果である。ところで冒頭のスライドではOpenCLを使ったエンコードが高速になるとか説明していたが、実際OpenCL周りはどうか? ということで、PCMark 10のテストの中でOpenCLを利用するテスト結果を抜き出したのが表2である。単位はsecで、要するにその処理を行うための時間なので、短いほど高速ということになる。

ということで比較して見ると、Video Conferencingに関して言えばGeForce RTX 3060が最高速で、Detection(テレビ会議で顔の位置を認識する)がRadeon RX 6600/7600に比べて3〜5倍高速である。逆にSpreadsheetとかPhotoEditingのDenoiseなどではRadeon RX 6600/7600の方が圧倒的に高速だし、Unsharpingなども結構性能差がある。

ではRadeon RX 6600とRadeon RX 7600では? というと、明確に違うのはPhotoEditingのBatchくらいのもので、あとは大きな違いはない(VideoConferencingのDetectGroupなど、Radeon RX 6600の方がやや高速である)感じで、言うほど違いが無いという気がする。勿論このあたりは使うアプリケーションによって差があるだろうが、ただOpenCLを本気で使うなら、もう少しCU数の大きい上位のビデオカードを使うべきだと筆者は考えて居るので、このグレードの製品でそこまで気にすることは無いだろうと思う。

○◆消費電力測定(グラフ70〜76)

最後に消費電力測定である。今回は解像度2K、DLSS/FSRは全て無効化という状況で、3DMark SpeedWay(グラフ70)、CyberPunk 2077(グラフ71)、Hitman 3(グラフ72)、Metro Exodus:PC Enhanced Edition(グラフ73)、Watch Dogs:Legion(グラフ74)の5つについて実行中の消費電力変動と、ベンチマーク中の平均消費電力(グラフ75)、及び待機時との消費電力の差(グラフ76)を示してみた。

グラフ70

グラフ71

グラフ72

グラフ73

グラフ74

グラフ75

グラフ76

確かにスペック通り、Radeon RX 7600はRadeon RX 6600に比べると50W前後の消費電力増加が見られる。ボードそのもののTBDの差は30Wだが、これは要するにGPU性能が上がった事でGPUネックになる可能性が減り、結果CPUとかメモリの稼働率も上がり、その分消費電力が上乗せになった、という事と考えられる。ただそれでもWatch Dogs:Legionを例外としてGeForce RTX 3060よりも消費電力は少なく、また待機時の消費電力は一番低いというあたりは、間違いなく性能/消費電力比は向上している。純粋に性能/消費電力比だけを問題にすればRadeon RX 6600の方が良い場面もあるが、もうRadeon RX 6600では2Kでも厳しい場面がある事を考えると、若干の性能/消費電力比の悪化で大幅な性能の上乗せが期待できるRadeon RX 7600は十分に良い選択肢と見なして良いかと思う。

○考察

絶対性能は申し分ない。確かに8GBというメモリ容量は、2.5K以上のゲームを遊ぶには厳しい(今回も幾つかのベンチマークがこの8GBの限界にぶち当たった)ので、2Kまで(それ以上はFSRを併用)という縛りは付くが、その範囲で遊べれば十分という人にはRadeon RX 7600は非常に良い製品に仕上がったとしても良いかと思う。

しかも何しろ価格が安い。たったの$269である。Radeon RX 6600の売り出し価格より安いのに、これだけ性能が上がるのはもう申し分ない。まだ日本での発売価格はこの原稿執筆時点では未公開なのでなんとも言えないが、Ryzen 7 7800X3Dの時の換算レートが\160/$程度だったので、\43,800とかだろうか? 日本円での価格がどうなるか次第だが、おそらく5万円を大きく切ってこの性能は素晴らしい、の一言に尽きる。

ちなみに今回筆者は担当しないが、NVIDIAはこのRadeon RX 7600の対抗馬としてGeForce RTX 4060 Tiを用意するらしい。恐らく性能で上回る(こちらは最大16GBのSKUもあるらしい)のだろうが、価格もその分上がるだろう。どうもこの記事が公開される「前」に、GeForce RTX 4060 Tiが発表されるらしいのだが、絶対性能はともかくこの性能/価格比に勝てるのだろうか?

■参考記事(2023/05/23掲載):

「GeForce RTX 4060 Ti」(8GB版)の実力を徹底検証 - RTX 3070と同クラスで圧倒的な省電力!

https://news.mynavi.jp/article/20230523-2685984/