大人気ドラマ『silent』で強烈な“優しさ”でインパクトを残した、鈴鹿央士さん。

今や若手実力派俳優の筆頭として名前があがるが、素顔は初々しさも残す23歳。そんな彼を連れて、代々木上原のカウンター割烹へ。

一層の飛躍を予感させる鈴鹿さんのインタビューを、今日と26日(日)の2回に渡ってお届けします!



もっと見たい方は写真ギャラリーをチェック!


撮影現場にいた全員が、鈴鹿央士さんの食事風景を前にほっこりしていた。

時に目を見開いて驚き、時に「く〜っ」と眉間に皺を寄せ、そして、満面の笑み。あまりに表情豊かなのだ。もう、ヤング版『孤独のグルメ』に主演してほしいとすら思う。

本人も自身の写真を見て、「笑顔だけじゃなく、いろんな表情が美味しいごはんから引き出されるんですね」と発見していた。

素をさらけ出せたのは、代々木上原らしい気取りのない割烹だったからかもしれない。

過去にこの街に来たのは一度だけ。展示会があり、『ファイヤーキング カフェ』でランチをして帰ったのだとか。街の印象を聞いた。

「その時は大人のカップルが多くて、落ち着いた雰囲気の素敵な街だなと思いました。

今日は久しぶりに来て撮影前に少し歩いたんですけど、服屋さんや古本屋さんが並んでいて、カルチャーもあふれる街で楽しそうと感じました」


「東京は時間の流れが速くて便利すぎるかもしれませんね」


岡山に生まれ、自然があふれる地域で育った鈴鹿さん。

「周りは田んぼばかりで少し歩けば山があって、タヌキや猿が出るようなところ。川も流れていて夜には牛蛙が鳴いていました」と話す彼は、マネージャー曰く、「上京してもそんなに変わっていない」とのこと。

本人に上京後の変化を聞くとこう答えた。

「東京は時間の流れが速いですし、便利すぎるかもしれませんね。いろんなものがあって、困ったらすぐ手に入る。

自分が東京に染まったなと思うことがあって、地方で撮影をしていた時、コンビニが遠いとか、お店が周りにないことを不便と思ってしまったんです。結構歩かないとコンビニもない環境で育ったのに……」

吸い込まれるような瞳で話す。

コロナ禍や仕事の忙しさもあって、東京の外食の楽しさを知ったのはつい最近だ。

「美味しいごはんを頑張る気力にすることをやっと覚え始めて。

今は、店員さんがあまり多くなく、でも素敵な人柄の店員さんとたまに話しながら食事できる場所を見つけたいです。ひとりで行ける焼き鳥屋さんとか知りたいですね」



カニクリームコロッケに添えられていたカニ味噌をつまんで「濃厚〜!」とのけぞった後、笑顔を見せた。「このコロッケは10個ぐらい食べたいと思いながら噛み締めました」

「美味しいごはんを活力に変えて、これからも頑張っていきたいです」


たまに先輩が誘ってくれることもある。4年前のクリスマスは千葉雄大さんが町鮨と卓球に連れ出してくれて、同じ事務所の広瀬アリスさんも「ごはん行こう!」と言ってくれるとか。

理想の東京デートについて聞いてみると「プレミアムシートの席で映画を観て、落ち着いた和食屋さんでごはんを食べて帰りたいです」と浮つかない。

鈴鹿さんといえば、広瀬すずさんの主演映画の撮影が通っていた高校で行われ、エキストラとして参加していたところを広瀬さんに見出された。

広瀬さんがマネージャーさんに声をかけてみたらどうかと勧めたため、「恩人です」と話す。

「直接話したわけじゃなく、たまたま横をすれ違うタイミングがあって、その時に目が合って、“おはようございます”みたいになっただけです。

そしたら、撮影が終わる頃に教頭先生に“体育館裏に来てください”と言われ、行ったらその時の現場マネージャーさんがいて名刺をいただきました。体育館裏だったので、変なことやったかな……と思いました」

長身とかわいらしい顔立ちで昔からモテたと思いきや、「全然です。モテるのはバスケ部とかで、僕は目立たず静かにぼ〜っとしていました」と振り返る。

突然のスカウト。そんなウソのような、ドラマのような展開だが、当時、背中を押してくれたのは母親だった。

「母親は“誰にでもあるチャンスじゃないからやってみれば”と言ってくれました。

高校2年生だったので、“東京の大学に行って就活するまでに芸能界を続けたかったら続ける、続けたくなかったら就職すればいいよ”とも言ってくれて、それを聞いて、少し軽い気持ちで東京に来れたのがよかったと思います。

これでしか生きていけないじゃなく、余裕を持って出てきたことがすごくよかったです」




「流されずに焦らずに地道にしっかりと土台を固めたいです」


そうして昨年は『silent』と巡り合った。「主成分優しさ」である湊斗を実在するように演じ、多くの人の心を温めた。

1秒ごとがリアルで鈴鹿さん自身が優しいからとすら思ってしまうが……。

「そうでもないですね(笑)。

湊斗は目の前の人と接する時に、その人の大切な人のことまで考えます。すごくいろんなことを考えながら生きている人だったけど、僕はちょっと疲れるので、そこまでできないですね(笑)」

では、客観的にみて印象に残っている湊斗の優しい瞬間とは?

「2話の“コンポタもあります”のシーン、優しかったなぁと。いろんなことが考えられる台本でしたね。4話では想と話していたから冷めたコンポタだったのかなとか。

最初にそこを読んだ時は、湊斗の心が熱いのか冷めているのかが温度に関係していると思ったけど、でも4話でも湊斗は冷めていた訳じゃないから違うのかなぁと思ったり」

社会現象となったドラマで存在感を放ち、今年も映画『ロストケア』をはじめ話題作への出演が続く。

若くして台頭するものの、本人は冷静だ。その人格のヒントにこんな話がある。自身の理想を尋ねた際の答えが「河島英五さんの『時代おくれ』な男になりたい」だったのだ。

「家ではずっと音楽をかけているんですけど、ある日流れてきた河島英五さんの『時代おくれ』を聴いて、すごい歌詞だなと衝撃を受けました。

目立つことなく、無理もせず、人の心を見つめる、時代に流されない男になりたい、という趣旨の歌詞です。気になった人は、ぜひ聞いてみてほしいですね」

歌手名と歌詞を聞きながら「鈴鹿さんが?」と現場が驚いたものの、時代に流されがちな芸能の世界で戦う人だからこそ響いたのかもしれない。

「たぶん、この世界もそう。いろんな活躍をされている方や同世代ですごくいい作品に出ている人を見て、自分も頑張らなきゃとなるのはいいけど、焦りすぎないようにしようと、この曲を聴いて思いました。

無理をせず、でもお芝居は一つひとつ向き合って丁寧にやっていかないと、すぐに崩れちゃうものだと思う。だから地道にしっかりと土台を固めたい。永遠に土台固めですね(笑)」

言葉に敏感で一言ひと言を噛み砕く能力も高い鈴鹿さん。大物になる予感を伝えると、「真面目に生きます」とはにかんだ。

こんなに真っ当な若手俳優が、「これからは悪役からほっこり系までどんな役でも演じたい」と言うのだから、楽しみすぎるじゃないか。


【後編】 3/26に公開!
■鈴鹿央士さんが「幸せです」と感嘆した、代々木上原のカウンター割烹の魅力

■プロフィール
鈴鹿央士 2000年生まれ、岡山県出身。2018年に『MEN'S NONNO』の専属モデルオーディションにてグランプリを獲得。2019年には『蜜蜂と遠雷』で映画初出演。3月24日公開の映画『ロストケア』では松山ケンイチ、長澤まさみに次ぐ主要キャストを演じている

■衣装
ジャケット 51,700円〈エンジニアド ガーメンツ TEL:03-6419-1798〉、サテンブルゾン 47,300円、Tシャツ 12,100円、パンツ 26,400円〈すべてニードルズ/ネペンテス TEL:03-3400-7227〉

▶このほか:Snow Man・目黒 蓮が「内面から出る品性に、僕は色気を感じる」と語ったワケとは?




東京カレンダー最新号では、鈴鹿央士さんのインタビュー全文をお読みいただけます。
東カレに語ってくれた、鈴鹿さんが俳優業に引き込まれるきっかけとなった作品とは?

アプリのダウンロードはこちら(iOSの方・Androidの方)から。




【未公開カット!】可愛らしい、おちゃめな表情を見せてくれた鈴鹿さん

この日は同店で人気の「定番コース」からカニクリームコロッケや、お肉、土鍋ご飯を味わってもらった。「どれもホッとする味です。こういう店に、両親を連れてきたいって思いました」

『代々木上原 ゆう』に入った感想を、「すーっと流れる時間の中で、特別なひとときになる予感がする、温かな空気のお店」と鈴鹿さん

天草の穴子と、筍、原木椎茸を乗せた「土鍋御飯」