秋葉原のPCを渋谷から操作して『エーペックス』をプレイ、「APN IOWN 1.0」の性能を見た
NTTe-sportsは、3月16日に商用サービスを開始したばかりのネットワーク技術「APN IOWN 1.0」を使用したプレス向けイベント「Open New Gate for esports 2023〜IOWNが創るeスポーツのミライ〜」を、2023年3月19日に渋谷(En STUDIO)と秋葉原(eXeField AKIBA)で開催しました。
APNとは、オールフォトニクス・ネットワーク(All-Photonics Network)の略称で、通信ネットワークのすべての区間で光波長を占有することで「大容量」「低遅延」そして将来的には「低消費電力」を実現する、新しい通信ネットワークを指します。
IOWNは、(Innovative Optical and Wireless Network)の略称。あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、光を中心とした革新的技術を活用し、高速大容量通信ならびに膨大な計算リソースなどを提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤の構想のことです。
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報道陣に公開されたのは渋谷の会場ですが、「APN IOWN 1.0」を活用した通信のデモを行うため、秋葉原のeXeField AKIBAと2カ所での開催です
○「当たり前のように」遠隔地と遅延なしでつながるデモンストレーション
まず、今回行われたデモを紹介します。1つ目はeスポーツに関する実証です。渋谷と秋葉原の2拠点を「APN IOWN1.0」でつなぎ、『Apex Legends』のエキシビションマッチを実施します。
渋谷にはPCを設置せず、ゲーミングモニター、キーボード、マウスとヘッドセットだけを配置。秋葉原の会場にのみゲーミングPC(第13世代Intel Core+NVIDIA GeForce RTX3080のマシンだそうです)を設置します。
そして、渋谷の会場では、プロゲーミングチーム「ZETA DIVISION」所属のすでたき氏がスタンバイ。渋谷の会場から秋葉原のPCを操作し、『Apex Legends』をプレイします。IOWNを使用して、キーボードとマウスの操作情報を秋葉原に送り、その結果が今度は秋葉原から渋谷へ転送され、モニターに表示される、という流れです。秋葉原の会場では、プロゲーミングチーム「FENNEL」所属コンテンツプロデューサーのalelu氏と、eスポーツ実況者の大和周平氏が、一緒にゲームをプレイします。
フルHD、240FPSまで対応するそうですが、今回は安全を見込んで144Hzのモニターを使用。ほかにも、IOWN回線では、プレイヤー3名の画像データとお互いの会場の映像を120Hz撮影の低遅延カメラで伝送しています。
デモでは、チーム制ゲームでは欠かせないVC(音声チャット)もクリアに伝わっており、傍目で見る限りでは操作のズレに戸惑っている様子もなく、ごく普通にプレイしているようでした。実際、ゲーム後には、「普段と同じようにプレイできて相手にダメージも与えられている」とコメントしていました。
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今回実証に用いられたのは、基本プレイ無料のバトルロイヤルゲーム『Apex Legends』。渋谷の会場にはゲーミングパソコンがなく、マウス、キーボード、ヘッドセット、ディスプレイが右に見える箱に接続されているだけ。秋葉原にあるゲーミングPCを渋谷から遠隔操作します(C)2023 Electronic Arts Inc.
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渋谷の会場でプレイしたのはプロゲーミングチーム「ZETA DIVISION」所属ストリーマーのすでたき氏。『Apex Legends』の元プロゲーマーです。2021年にプロを引退してますが『Apex Legends』自体は現在もプレイしています
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渋谷会場はこのように左右にモニターが据え付けられており、秋葉原会場は逆に中央にモニターが置かれてすでたき氏が映されていました
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普通にプレイしているように見えました。「普段やっているのと大して変わらず、ダメージも出せていた」とコメント
それもそのはずです。なぜなら、カメラの表示ラグはわずか3ms。オンラインのゲームをプレイしている人ならば、ゲームサーバーまでの遅延が10ms以下ならFPSゲームでも快適と言われているので、3msではタイミングにシビアなプロ格闘ゲーマーでも体感できるかどうかわかりません。
ちなみに今回の渋谷・秋葉原の遅延は200μs程度だそうです。動画や音声は、圧縮展開に伴う遅延をなくすため、非圧縮でそのままやり取りしていました。100Gbpsの速度を持つIOWNだからできることでしょう。
続いて、2つ目のデモンストレーションは、ダンスレッスンです。渋谷の会場には埼玉県の高校ダンス部に所属する松橋さんと田中さんが生徒役として、秋葉原会場にはAvexDanceMasterのインストラクターで数々のミュージシャンのバックダンサーや振付を担当したことがあるTAiSHI氏が先生役として登場します。
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2つ目のデモは遠隔ダンスレッスンです
秋葉原の会場で音源を再生し、コーチが振付をレクチャーします。その映像と音声を渋谷に転送。渋谷の生徒は秋葉原からの音楽と指導を元に動き、秋葉原の先生は「秋葉原から流れた音を聞きながら踊る生徒の映像を見ながらアドバイス」します。こちらも低遅延でまったく違和感がありません。
ダンスレッスンを真うしろから撮影することが報道陣に許可されていなかったので、公式提供の動画から一部切り取っています。先生と生徒の動きはほぼズレがなく、音楽にも合っているのがわかります
動画でうしろに2つ見えるモニターの左が「APN IOWN 1.0」での伝送、右がFLETS(1Gbps)の転送。パッと見てもFLETSでの動画は手前の女性との動きにズレがあるほか、2回ほど再生が途切れていました
先生のモニターには、生徒の映像も映っていることから「渋谷の生徒の映像をIOWNを通じて先生側のモニターに表示し、これを先生側のカメラで撮影してIOWNを通じて渋谷で表示」と往復していることがわかますが、まったくと言っていいほど違和感なく再生されていました。
ダンスが速くてわかりくいので1/8のスロー録画で撮ってみました。右側の女性と奥の先生画像のシンクロ加減で低遅延がよくわかると思います
○速度や遅延だけでなく、低消費電力も見込むIOWN
なお、デモンストレーションの前には、NTTe-Sports 代表取締役副社長 大森吉雄氏による「IOWNが実現するe-Sportsの未来」をテーマにしたプレゼンテーションがありました。
NTTe-Sportsのミッションは「eスポーツによって地域の課題解決・価値創造を実現する」こと。そのために「地域を盛り上げたい。その想いに、eスポーツで応えたい。」とブランドメッセージを掲げます。
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NTTe-Sports 代表取締役副社長 大森吉雄氏
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NTTe-Sportsの理念。地域課題の解決に通信を使うのでNTTに関わってきます。またeスポーツゆえに低遅延、高帯域は重要です
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eスポーツの施設、イベント、教育、そしてコンサルと5つの事業セグメントに注視
現在の「APN IOWN 1.0」は、IOWN構想のすべてを実現したものではありません。とはいえ、「APN IOWN 1.0」でも専有型100Gbps回線を実現(将来はさらなる高速化を目標)し、遅延は従来の1/200(これは将来も変わらず)で、専有型ゆえにほかのトラフィックの影響やゆらぎはゼロです。
これを日本全国(ただし現在は都道府県単位での接続で、光未提供エリアなど一部を除く)で提供。遅延に関しては同時に提供する端末「OTN Anywhere」で可視化できるほか、1μs単位で遅延の調整が可能です。
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商用サービスが始まった「APN IOWN 1.0」4つの特徴。まだIOWNの構想すべてを埋めるパーツはそろっていませんが、それでも専有型100Gbpsと低遅延は十分メリットがありますし、専有型ゆえにゆらぎもないので、ストリームのバッファも極小に減らせます
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ゲームプレイヤー側にとってみるとネットワークトラブルは重要。プロeスポーツリーグの試合でもネットワークトラブルによる中断がありました。一方、臨場感や一体感のあるオフライン大会を見たいというファン側の要求もあります
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今回行われたデモンストレーションの説明です
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IOWNなら低遅延広帯域なので、1カ所に集まらなくても大会運営が可能。回線費用さえ何とかなれば全国に普及してほしいところです
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2つ目のデモで実施されたプロコーチによるダンスレッスン。ダンスを採用したのは、低遅延をわかりやすく伝えるためでしょう
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ダンスに限らず、吹奏楽や合唱の合同練習やゲームのコーチングなどにも使えそうです
説明会のあとで大森氏に伺ったところ、eスポーツを通じて(地域の)若者のICT教育につなげたいという説明がありました。「学校単位でIOWNを導入するのはかなりの負担では?」という質問に対しては、例えば公民館に1つ設置して共同で使うことで自治体が費用を負担する考えもあると回答。とはいえ、「APN IOWN 1.0」の回線費用は月198万円なので、自治体レベルでも簡単ではないでしょう。
現在の「APN IOWN 1.0」は都道府県レベルの接続になっています。これに対して「IOWN 2.0なのか1.0拡張版になるのかわからないが、都道府県を超えた接続には今後対応する」とのことで、実現できれば地域の壁を越えた大会やイベントに活用できそうです。
IOWNは元々2024年の仕様確定、2030年度の実現を目指していました。今日の「APN IOWN 1.0」は初期段階ですが、それでも最終目標の(トータル)遅延1/200は満たしています。2025年度の大阪万博時に「IOWN 2.0」、2029年度に「IOWN 3.0」、そして2030年度以降に「IOWN 4.0」と段階的に提供し、現在のネットワークよりも電力効率100倍、容量125倍へ向けて今後も開発が進む予定です。
APNとは、オールフォトニクス・ネットワーク(All-Photonics Network)の略称で、通信ネットワークのすべての区間で光波長を占有することで「大容量」「低遅延」そして将来的には「低消費電力」を実現する、新しい通信ネットワークを指します。
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○「当たり前のように」遠隔地と遅延なしでつながるデモンストレーション
まず、今回行われたデモを紹介します。1つ目はeスポーツに関する実証です。渋谷と秋葉原の2拠点を「APN IOWN1.0」でつなぎ、『Apex Legends』のエキシビションマッチを実施します。
渋谷にはPCを設置せず、ゲーミングモニター、キーボード、マウスとヘッドセットだけを配置。秋葉原の会場にのみゲーミングPC(第13世代Intel Core+NVIDIA GeForce RTX3080のマシンだそうです)を設置します。
そして、渋谷の会場では、プロゲーミングチーム「ZETA DIVISION」所属のすでたき氏がスタンバイ。渋谷の会場から秋葉原のPCを操作し、『Apex Legends』をプレイします。IOWNを使用して、キーボードとマウスの操作情報を秋葉原に送り、その結果が今度は秋葉原から渋谷へ転送され、モニターに表示される、という流れです。秋葉原の会場では、プロゲーミングチーム「FENNEL」所属コンテンツプロデューサーのalelu氏と、eスポーツ実況者の大和周平氏が、一緒にゲームをプレイします。
フルHD、240FPSまで対応するそうですが、今回は安全を見込んで144Hzのモニターを使用。ほかにも、IOWN回線では、プレイヤー3名の画像データとお互いの会場の映像を120Hz撮影の低遅延カメラで伝送しています。
デモでは、チーム制ゲームでは欠かせないVC(音声チャット)もクリアに伝わっており、傍目で見る限りでは操作のズレに戸惑っている様子もなく、ごく普通にプレイしているようでした。実際、ゲーム後には、「普段と同じようにプレイできて相手にダメージも与えられている」とコメントしていました。
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それもそのはずです。なぜなら、カメラの表示ラグはわずか3ms。オンラインのゲームをプレイしている人ならば、ゲームサーバーまでの遅延が10ms以下ならFPSゲームでも快適と言われているので、3msではタイミングにシビアなプロ格闘ゲーマーでも体感できるかどうかわかりません。
ちなみに今回の渋谷・秋葉原の遅延は200μs程度だそうです。動画や音声は、圧縮展開に伴う遅延をなくすため、非圧縮でそのままやり取りしていました。100Gbpsの速度を持つIOWNだからできることでしょう。
続いて、2つ目のデモンストレーションは、ダンスレッスンです。渋谷の会場には埼玉県の高校ダンス部に所属する松橋さんと田中さんが生徒役として、秋葉原会場にはAvexDanceMasterのインストラクターで数々のミュージシャンのバックダンサーや振付を担当したことがあるTAiSHI氏が先生役として登場します。
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秋葉原の会場で音源を再生し、コーチが振付をレクチャーします。その映像と音声を渋谷に転送。渋谷の生徒は秋葉原からの音楽と指導を元に動き、秋葉原の先生は「秋葉原から流れた音を聞きながら踊る生徒の映像を見ながらアドバイス」します。こちらも低遅延でまったく違和感がありません。
ダンスレッスンを真うしろから撮影することが報道陣に許可されていなかったので、公式提供の動画から一部切り取っています。先生と生徒の動きはほぼズレがなく、音楽にも合っているのがわかります
動画でうしろに2つ見えるモニターの左が「APN IOWN 1.0」での伝送、右がFLETS(1Gbps)の転送。パッと見てもFLETSでの動画は手前の女性との動きにズレがあるほか、2回ほど再生が途切れていました
先生のモニターには、生徒の映像も映っていることから「渋谷の生徒の映像をIOWNを通じて先生側のモニターに表示し、これを先生側のカメラで撮影してIOWNを通じて渋谷で表示」と往復していることがわかますが、まったくと言っていいほど違和感なく再生されていました。
ダンスが速くてわかりくいので1/8のスロー録画で撮ってみました。右側の女性と奥の先生画像のシンクロ加減で低遅延がよくわかると思います
○速度や遅延だけでなく、低消費電力も見込むIOWN
なお、デモンストレーションの前には、NTTe-Sports 代表取締役副社長 大森吉雄氏による「IOWNが実現するe-Sportsの未来」をテーマにしたプレゼンテーションがありました。
NTTe-Sportsのミッションは「eスポーツによって地域の課題解決・価値創造を実現する」こと。そのために「地域を盛り上げたい。その想いに、eスポーツで応えたい。」とブランドメッセージを掲げます。
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現在の「APN IOWN 1.0」は、IOWN構想のすべてを実現したものではありません。とはいえ、「APN IOWN 1.0」でも専有型100Gbps回線を実現(将来はさらなる高速化を目標)し、遅延は従来の1/200(これは将来も変わらず)で、専有型ゆえにほかのトラフィックの影響やゆらぎはゼロです。
これを日本全国(ただし現在は都道府県単位での接続で、光未提供エリアなど一部を除く)で提供。遅延に関しては同時に提供する端末「OTN Anywhere」で可視化できるほか、1μs単位で遅延の調整が可能です。
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説明会のあとで大森氏に伺ったところ、eスポーツを通じて(地域の)若者のICT教育につなげたいという説明がありました。「学校単位でIOWNを導入するのはかなりの負担では?」という質問に対しては、例えば公民館に1つ設置して共同で使うことで自治体が費用を負担する考えもあると回答。とはいえ、「APN IOWN 1.0」の回線費用は月198万円なので、自治体レベルでも簡単ではないでしょう。
現在の「APN IOWN 1.0」は都道府県レベルの接続になっています。これに対して「IOWN 2.0なのか1.0拡張版になるのかわからないが、都道府県を超えた接続には今後対応する」とのことで、実現できれば地域の壁を越えた大会やイベントに活用できそうです。
IOWNは元々2024年の仕様確定、2030年度の実現を目指していました。今日の「APN IOWN 1.0」は初期段階ですが、それでも最終目標の(トータル)遅延1/200は満たしています。2025年度の大阪万博時に「IOWN 2.0」、2029年度に「IOWN 3.0」、そして2030年度以降に「IOWN 4.0」と段階的に提供し、現在のネットワークよりも電力効率100倍、容量125倍へ向けて今後も開発が進む予定です。