エッセイ漫画をつづったブログが大人気のゆっぺさん。ゆっぺさん自身が5歳のときに同級生から受けた性被害を描いたエッセイ漫画『5歳の私は、クラスの男子から性被害を受けました。〜なんで言わないの?〜』(扶桑社刊)が、1月27日に発売されました。

この話は、信じてもらえないと思っていた

今回は、大人たちが知らない「子ども同士の性被害」の実態や、本書へ込めた想いについて、著者であるゆっぺさんにお話を聞きました。

【画像】ゆっぺさんの漫画を試し読み

●「私も同じ経験をしました」隠れた被害者たちの声

――子ども同士の性被害という、衝撃的な内容のエッセイ漫画を描こうと思ったきっかけを教えてください。

ゆっぺさん(以下、ゆっぺ):もともと、5歳で性被害にあった話を漫画で描くつもりはありませんでした。こんな経験している人はいないと思っていましたし、信じてもらえないと思っていたからです。

この話をしたら批判されるだろうし、嘘つきと言われるかもしれないと思っていました。でも同じような経験をした人が全国に1人でもいて、その人が共感してくれたらそれでいいと思いました。それで漫画を描いてブログで公開することにしたんです。

――実際、当時の反響はどうでしたか。

ゆっぺ:公開したところ、嘘つきというコメントどころか『私も同じ経験をした』という声が多く寄せられて、ただただびっくりしています。

保育園で同じクラスの子から性被害を受けたという話もありましたが、きょうだいや近所に住む上級生から性被害を受けたという声も多くて、子ども同士の性被害の多さと深刻さに驚きました。

――ゆっぺさんのブログのコメント欄が、同じ経験をしたことがあるという声であふれていたそうですね。

ゆっぺ:はい。目を覆いたくなる被害もたくさんあり、隠れた被害者がこんなにも多いのだと思いました。誰にも言えない問題だからこそ、被害にあった子どもは一生一人で傷を抱えることになります。

●「なんで言わないの?」と言わず、子どもの言葉に耳を傾けて

――小さな子どもが、自分で被害を認識して大人に説明することの難しさを、本書では訴えていました。

ゆっぺ:ブログで公開した漫画や、今回の本のタイトルに「なんで言わないの?」という言葉を入れた意図がまさにそこなんです。

子どもが性被害やいじめなどの被害にあったときに、大人は「なんで言わないの?」と言ったり思ったりしてしまいがちです。本当は子どもの「なんで言えなかったのか?」に着目して、目を向けなくてはいけないはずなのに、子どもの言えなかった行動を非難するのは、違うと思うんです。

子どもの言動や小さな変化に目を向けて、「一体なにがあって、どんな気持ちだったのか?」を受け止めるために、私たち大人は子どもの話を聞かなくてはいけないはずです。そのことを、この漫画を通して伝えたいです。

●子どもや女性の加害者、男の子の被害者もいる

――悲しい被害は起こってほしくないですが、万一のとき、大人が気づいてケアや対処をしてあげるだけでも、状況は変わってきそうです。

ゆっぺ:子どもの性被害というと、大人の男性から女児への加害というイメージをおもちの方が多いと思います。でも、それだけでないんですよね。子どもや女性の加害者、男の子の被害者もいるんです。

子どもだから、女子だから、男子だからと、先入観だけで「大丈夫」「心配ない」と思わずに、子どもの異変に気づいたら、とにかく耳を傾けてあげてることが大事なのではないでしょうか。

●性被害について「誰にも知られたくない」と隠していた

――保育園のお昼寝中に、同級生に下着の中に手を入れられたとき、5歳のゆっぺさんはどのようなお気持ちだったのでしょうか。

ゆっぺ:当時はまだ幼く、性被害という言葉はわからなかったのですが、今まで受けていたいじめとは明らかに違うと感じました。当時は「恥ずかしい」「誰にも知られたくない」という気持ちが大きくありました。

――本書によると、当時はご両親にも相談できなかったんですよね。

ゆっぺ:私の家は父親がとても厳しかったので、このことを親に話したら逆に叱られてしまうと思ったんです。当時は「怒られるから隠さなきゃいけない」という気持ちの方が強くて、必死に親にバレないようにしていました。

でも、ボス太郎くんの加害内容がどんどんエスカレートしていったので、耐えきれなくなって保育園の先生に相談したんです。

――先生の対応はどうでしたか?

ゆっぺ:先生に話しかけたタイミングが悪すぎました。先生の機嫌が悪かったこともあって雰囲気に萎縮してしまい、うまく伝えることができませんでした。それで結局「男の子は、好きな女の子にいたずらするもの」という言葉で片づけられてしまったんです。

編集部注:ゆっぺさんは一連の出来事について、当時の先生方の対応を批判する意図はないと本書で強調しています。

私たちの想像の及ばないところで、子ども同士の性被害は起きています。「子どものしたことだから」ではすまされない問題がそこにはあり、被害者はその傷を一生負います。子どもを被害者にも加害者にもしないために、大人であるわたしたちがまずその実態に目をむけることが大切です。