『ドラえもん』のスネ夫役をはじめ、『鬼滅の刃』の不死川実弥役や『呪術廻戦』のパンダ役など、話題作に多数出演している人気声優・関智一さんの暮らしのエッセイ。今回は、関さんの「年始め」についてつづってもらいました。

関智一さんの「2022年→2023年」の過ごし方

遅ればせながら、明けましておめでとうございます。皆さんどんな年越しをされましたでしょうか? 私はといいますと、例年は年越しでお仕事をさせていただいていることが多かったのですが、今回は年越し番組の出演はなし。

【写真】にっこり微笑む関さんですが…意外な展開に

折角だからのんびりすごす…つもりだったんですが、根っからの貧乏性。なにかしてないと落ち着かない。

そこへ、落語でお世話になっている立川志ら乃師匠から、元旦に落語会をやるからとお声がけ。これはシメた! と、二つ返事で出演させていただくことに。てな訳で、今年は落語の練習をしながらの年越しとなりました。

●お正月の恒例行事はフェリーから見る「初日の出」

元旦を落語で笑って過ごし、幸せな年の始まりとなったわけですが、一つ心残りがあるとすれば初日の出を見に行く余力が残っていなかったこと。

例年は多少無理してでも、10年来の友人とフェリーに乗って洋上から初日の出を見ることを恒例としていたのですが、今年は落語の練習に集中するため初日の出は断念。代わりに2日の早朝、フェリーからの日の出を拝みに行くことに変更しました。

早朝、友人と待ち合わせ、いざフェリーに乗船! 新年の豊富などを語り合いながら、楽しみに1月2日の日の出を待つ。元旦とは違い人手も少なく、ゆったりと過ごせる。なにより天気がいい。これは、かえって快適な船旅になった、さぞキレイな日の出が見られるだろうと、期待に大きく胸をふくらませ、ご満悦な我々。

いよいよ空が明るくなり始めた。いつもだと、進行方向の右側から太陽が見えてくるはず。毎年の事なので、勝手はよくわかっている。さ、神々しい朝日よ、我々を照らしたまえ。我々を照らし………

あれ? 朝日が見えない。日の出の時間はとうに過ぎている。空も明るい。しかし、朝日そのものは、いつもの山の影に隠れてしまっている様。恥ずかしがっているのか? そんな馬鹿な。これはどういうことなのだ。

●日の出が見られなかった衝撃の理由

そばにいた船員の方に聞いてみると、どうやら元旦は、日の出を見るために特別なルートで運行しているそうなのだ。ガーン。なんてことだ。知らなかった。元旦だけの特別運行だったとは!? てっきり、早朝に乗船すれば、いつでも日の出が拝めるものとばかり…。

驚きを隠しきれない我々を乗せた船は、そんなことは意にも介さず、港に着岸しようとしていた。つまり我々は、早起きしてフェリーに乗り、只々、甲板で見えるはずのない朝日を待ち続け、寒い風に吹かれていたにすぎない。

●しくじりから再認識できた「大切なこと」

我々の調査不足。ちゃんと確認してから乗船すればよかったのだ。我々はなんだか少し恥ずかしいような気持ちになりながら下船し、ふと顔を見合わせると、どちらからともなく笑い合った。

新年早々、しくじったわけだが、腹から笑い合ったせいか清々しさを感じた。気心の知れた友人と、些細なことで笑い合うのは、なんと幸せなことであろう。なにか特別なことがなくとも、友がいて笑いがあることのぜいたくさを新年から再確認する事ができた。それだけで意味のある航海だったように思う。

今年もいろいろなことがあるだろう。よいことも悪いこともあるだろう。しかしながら今日の日を思い出せば大抵のことは笑い飛ばして、乗り越えられる気がするのだ。よし、2023年も楽しんでいこう。皆さん、改めて本年もよろしくお願いいたします。

☆今月の関智通信☆

『黒蜥蜴』という朗読劇に参加しました。江戸川乱歩先生の原作で名探偵明智小五郎が登場するシリーズです。これで金田一耕助と明智小五郎を演じることができました! あとは銭形平次もやってみたい(笑)。