最近のTVはNetflixやYouTubeが直接見られるスマート化や、より大画面で低価格なものが出てくるなどスマートフォンのお供として購入したいと考えたくなる製品が増えています。TVの用途は地上波の視聴ではなく、ネット配信やスマートフォンの画面を投影するものに変わりつつあるのです。そんなTVの最新の進化を1月にラスベガスで開催されたCES 2023のLGブースで見てきました。

最新TVが展示されていたCES 2023のLGブース

○透明になるディスプレイ:LG OLED T

LGブースで最も目を惹いた展示が透明TVの「LG OLED T」でした。実は透明なTVはLGや他のメーカーがすでに発表していますが、家庭用というよりも店舗で商品紹介などに使うデジタルサイネージ向けとして使われています。その理由は透明なTVで映画を見ようとすると、背景が透けてしまうためコンテンツをしっかりと見ることができないからです。

しかしLG OLED Tはリモコン一つで「TVモード」と「透明モード」を切り替えられます。まずはTVモードを見てみましょう。普通のTV同様に画面には映画などが表示されています。この状態を見ると透明なTVであるようには見えません。

LG OLED T。普段は普通のTVとして使える

ここでリモコンのボタンを押します。すると画面が上からみるみる透明になっていくのです。

画面の上半分から透明になっていく

そして完全透明になると、ディスプレイ部分の表示はそのままに、背景が透けて見えるようになります。

背景が完全に透明になった

普段、TVの画面を消すと、TVはただの「黒くて大きな板」になってしまいます。LG OLED TならTVの後ろに照明器具をセットして、さらにTVには環境ビデオのようなものを映し出せば、TVがインテリアに早変わりするのです。間接照明的に使うのもいいですね。映画や動画を見ないときにもインテリアになるTV、それがLG OLED Tなのです。

TVがそのまま部屋のインテリアになる

○ソファーやベッドサイドで自在なスタイル:LG StanbyME

ソファーでくつろいでいるとき、あるいはベッドでそろそろ寝ようかなと思いながらスマートフォンで動画を見ることも多いでしょう。壁にTVがあればそれを点けるのもいいですが、タブレットのように目の前にちょっと大きい画面があれば便利です。「LG StandbyME」はユーザーに寄りそうように変形できるTVです。

LG StandbyME

StandbyMEはその名の通り、スタンドの先に27型のTVが取り付けられています。スタンドの高さは片手で自在に上下させることができ、さらにTV部分も自由に回転します。ソファーやベッドの横においておき、自分の目の前、見やすい位置や角度に調節することができるのです。

高さや角度を自由に調節できる

LG StandbyMEもスマートTVですから動画サービスなどのアプリが入っています。またスマートフォンの画面の投影も可能です。そして画面はタッチパネル。リモコンを使わずアプリのアイコンをタップすれば、すぐに動画配信を見ることもできるのです。スタンド付きの大型タブレットのように使えるので、普通のTVを買うより使い勝手は良さそう。

見やすい位置に調節したら、画面をタッチして操作できる

またディスプレイは縦方向にも出来るので、Tiktokなどの縦動画を見るのにも適しています。ソファーでくつろぎながらこのモードで縦動画を見ているうちに、気が付いたら朝になってしまった、なんてことに注意したくなるほど、LG StandbyMEは使いやすいと感じました。

縦向きにすれば縦動画も見やすそう

○平面ディスプレイが曲面になる:LG OLED Flex

「LG OLED Flex」は没入感を高めるためにディスプレイを曲げることのできるスマートTVです。日本でもすでに販売中で、CES 2023でも多くの来場者がそのギミックを試していました。サイズは42型で、自宅で映画などを手軽に楽しめるサイズと言えるでしょう。

LG OLED Flex。普段は42型の平面TVとして使える

ゲームをするとき、湾曲したディスプレイであれば眼を左右に動かしてもプレイ画面から視線がはずれることもなく、ゲームプレイに集中できます。LG OLED Flexはリモコンのボタンを押すとディスプレイがモーター駆動で湾曲します。カーブの度合いは細かく20段階に調節可能。大自然のドキュメンタリー番組を見るときなど、画面をちょっと曲げて視聴すれば没入感が高まるでしょう。

リモコンを使ってカーブさせれば没入感が高まる

LG OLED Flexの日本での販売価格は40万円前後。やや高いものの曲面にしたときの没入感はハマるほどで、日本で発表会が行われたときにはデモゲームを始めたところ、ついつい我を忘れて本気でプレイしてしまったほどです。ゲームをする人は曲面ディスプレイの楽しさをぜひ味わってほしいと思います。

日本の発表会会場では、気が付けばゲームに没頭してしまった

○ゲーム画面がぬるぬるサクサク動く:LG UltraGear OLED

本格的なゲームプレイヤー向けのディスプレイが「LG UltraGear OLED」です。まさしく没入感を高める横ワイドな27型の曲面ディスプレイは、世界最速の240Hzのリフレッシュレートで動作するとのこと。リフレッシュレートは画面を書き換える速度で、一般的なスマートフォンなら90Hz、ハイエンドスマートフォンの中には144Hzで動くものもあり、数値が高いほどなめらかな表示が可能です。LG UltraGear OLEDは240Hzという超高速なので、ゲーム中にマウスやキーボードで画面を上下左右に動かしても一切の遅延を感じないといいます。一瞬の動きの隙も見せられないハイエンドゲームをプレイするユーザー向けに開発されたディスプレイなのです。

画面の動きがスムーズすぎて、ゲーム画面が現実かと思ってしまえるほど

新型コロナウィルスと人類の戦いもそろそろ終焉を迎えそうで、ウィルスと共に生活する「ウィズコロナ」の時代がやってきます。リモートワークは当たり前となり、今まで以上に自宅で過ごす時間が増えることから、家庭に設置するTVにもこれまでにはない機能が求められるようになりました。CESでLGはこれからの時代を見据えた新しいTVの開発を常に進めている姿を見せてくれたのです。どの製品も魅力的であり、ぜひすべての製品を日本でも販売してほしいものです。

ウィズコロナを見据えたTVをLGは開発している

富永彩乃+山根康宏 富永彩乃(とみなが あやの) ITジャーナリスト/自撮り端末研究家。日本や海外各国のIT事情、特に海外の最新スマートフォンやビデオコンテンツサービスに精通。海外展示会の取材も積極的にこなし、現地からライブ配信によるレポートや動画撮影・編集も自身で行っている。スマートフォン複数台を常に使いこなし、TVやメディアへの出演も多数。 公式サイト:https://ayanotominaga.com/ 山根康宏(やまねやすひろ) 香港在住の携帯電話研究家。海外(特に中国)のスマートフォンや通信事情に精通。IoT、スマートシティー、MaaS、インダストリアルデザインなど活動の幅は広い。最新機種のみならずジャンク品から百万円のラグジュアリーモデルまであらゆる携帯電話・スマートフォンを購入する収集家でもあり、その数はまもなく1800台に達する。 公式サイト:http://www.hkyamane.com/ この著者の記事一覧はこちら