火星で将来的に行われるミッションに影響を与える可能性があるという詳細な火星地質図を、惑星地質学科学センターが公開しました。

A Martian Mons Mystery, (Paleo) Climate Change, and Rivers of Lava: What Three New USGS Maps Reveal About Mars | U.S. Geological Survey

https://www.usgs.gov/special-topics/planetary-geologic-mapping/news/a-martian-mons-mystery-paleo-climate-change-and

公開されたのは太陽系最高峰・オリンポス山周辺地域、アイオリス・ドルサ(しわ状の構造になった尾根)、アサバスカ渓谷の地図と関連資料です。

Geologic map of Olympus Mons caldera, Mars

https://doi.org/10.3133/sim3470

Geologic map of the Aeolis Dorsa Region, Mars

https://doi.org/10.3133/sim3480

Geologic map of the Athabasca Valles region, Mars

https://doi.org/10.3133/sim3477

以下はオリンポス山のインタラクティブマップ。

Geologic Map of Olympus Mons Caldera, Mars, 1:200K. Mouginis-Mark (2021)

https://usgs.maps.arcgis.com/apps/webappviewer/index.html?id=1e3decd17b8840a39fb8c31fa27bf390

画像化された地図は以下のリンク先にありますが、ファイルサイズが64.6MBあるので、モバイル環境での閲覧時には要注意です。

USGS SIM 3470: Geologic Map of Olympus Mons Caldera, Mars | U.S. Geological Survey

https://www.usgs.gov/media/images/usgs-sim-3470-geologic-map-olympus-mons-caldera-mars



地図を作ったのはハワイ大学マノア校のP・J・モーギニス=マーク博士らのチーム。博士による過去の研究を踏まえて作られており、最高地点がこれまで予想されていたところとは異なることがわかりました。今回作られた地図のポイントの1つは、過去の火星の地図ではあまり描かれてこなかった等高線の存在で、そのおかげで、若い溶岩流がいくつか上方に流れているのが確認できるとのこと。縮尺を20万分の1にしたことについてモーギニス=マーク博士は、カルデラ全体を壁に掛けられるぐらいの紙に収めたいという思いがあったことを明かし、10万分の1や15万分の1では大きすぎ、一方で50万分の1だと細部が見えなくなってしまうためだったと語っています。



以下はアイオリス・ドルサのインタラクティブマップです。

Geologic Map of Aeolis Dorsa, 1:500K. Burr and others (2021)

https://usgs.maps.arcgis.com/apps/webappviewer/index.html?id=8d18548ceb39459d94e397097a894f12

ドルサとは低く連続した曲がりくねった尾根のことで、まるで川の水路を反転させたかのような地形。地図を作ったのは「曲がりくねった河川地形の歴史を理解しようと考えた」というノーザンアリゾナ大学のデヴォン・バー博士らで、以下のページに画像化された地図が掲載されています。ファイルサイズは97.7MBあります。

USGS SIM 3480: Geologic Map of the Aeolis Dorsa Region, Mars | U.S. Geological Survey

https://www.usgs.gov/media/images/usgs-sim-3480-geologic-map-aeolis-dorsa-region-mars



以下はアサバスカ渓谷のインタラクティブマップ。

Geologic Map of the Athabasca Valles Region, Mars, 1:1M. Keszthelyi and others (2021)

https://usgs.maps.arcgis.com/apps/webappviewer/index.html?id=fb47fbdfb61044c5a114609ed78a78b1

火星には、過去に洪水があったことをうかがわせる地形が多数存在しています。アサバスカ渓谷も、長らく大規模な洪水によりできた地形だと考えられてきましたが、その後、洪水によるものか、高温の溶岩の噴出によるものかの議論が発生。今日では、噴出した溶岩が流れたことでできた、若い洪水玄武岩で構成されていると考えられています。地図はラズロ・ケスタイ博士らによるもので、当初はより高い解像度でのマッピングを目指して4枚の地図を作る予定でしたが、「役に立つ」よりも「混乱を招く」ものになるという判断から、現行のものが作られたとのこと。ケスタイ博士は「火星探査機インサイトがこの地域で地震を観測しており、まだこの地域の地質活動は終わっていないことが示唆されています。今後も、全体像を把握し、従来の地域スケールやグローバルスケールの地図の必要性は大いにあると思います。しかし、新発見は特にローバースケールの詳細な地図から得られることが多くなるでしょう。そういったスケールでのマッピングが、地上の地質学者にとって身近なものになると思います」と語りました。

以下、アサバスカ渓谷の地図のファイルサイズは96.4MBあります。

USGS SIM 3477: Geologic Map of the Athabasca Valles Region, Mars | U.S. Geological Survey

https://www.usgs.gov/media/images/usgs-sim-3477-geologic-map-athabasca-valles-region-mars