by Gage Skidmore

ドナルド・トランプ元大統領が2022年12月に発表した、非代替性トークン(NFT)の公式トレーディングカードの関連企業について調べたところ、過去のさまざまな不正とのつながりが疑われる事実が発覚したと、The New York Timesの元記者でベストセラー作家のカート・アイヘンヴァルト氏が指摘しています。

Trump's Trading Card Grift is Worse than You Think

https://threats.substack.com/p/trumps-trading-card-grift-is-worse

トランプ元大統領が「重大発表」として12月15日に満を持して公開した公式トレカの「Donald Trump Digital Trading Card NFTs」は、1枚99ドル(約1万3600円)のNFTです。カードには、トランプ元大統領がウエスタンスーツや宇宙服、スーパーマン風の衣装に身を包んだ姿など、さまざまなトランプ元大統領が描かれています。

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このトレカについて、アイヘンヴァルト氏がまず注目したのは、NFTであるという点です。これは、購入者がデジタルアートの所有権そのものではなく、カードに紐付けられたトークンを購入しているに過ぎないことを意味しています。

また、購入者がカードを売った場合、その代金の全てを手に入れることができず、売却額の10%はトランプ元大統領らに還元されるようになっているとのこと。しかも、購入者は規約を読まないと購入ができないことになっていますが、アイヘンヴァルト氏が購入者向けの規約を読もうとリンクをクリックしたところ、以下のようにページが存在しない旨が表示されてしまい、具体的にどのような規約になっているのかを確認することができませんでした。



アイヘンヴァルト氏はまた、トレカ発行に関する権利関係にも目を向けています。トレカの公式ページには、NFTを発行したNFT Internationalという企業について、「NFT Internationalはドナルド・J・トランプ氏、Trump、The Trump Organization、CIC Digitalや、それぞれの組織の中心人物および関連会社によって所有、管理、または運営されていません。NFT Internationalは、CIC Digitalからの有償ライセンスの下で、トランプ氏の名前、肖像、画像を使用しています」と案内されています。

このトランプ元大統領に関連するライセンスをNFT Internationalに販売したCIC Digitalという会社は、記事作成時点からわずか9カ月前に設立されたばかりの企業で、登記はデラウェア州にあります。デラウェア州で登記された法人は取締役や役員の氏名を匿名にできるため、やろうと思えばトランプ元大統領が1人で役員・取締役・株主を兼任することも可能です。

事実、トランプ元大統領が大統領選出馬時に公開した財務記録には、同氏が数百もの有限責任会社(LLC)を保有していることが記載されていましたが、そのほとんどはデラウェア州で設立されたもので、役員などもトランプ元大統領1人が兼任しているとのこと。もしトランプ元大統領がCIC Digitalでも同じ手法をとっていれば、トランプ元大統領がトレカの権利関係を全て1人で掌握していることになります。

また、NFT Internationalについても不明な点があります。トレカの公式ページに掲載されているNFT Internationalの連絡先は「6300 Sagewood Drive, Suite 427, Park City, UT」となっていますが、これはNFT Internationalの所在地ではありません。実際にGoogleマップのストリートビューでこの住所を見てみると、The UPS Storeという私書箱サービス企業の店舗が表示されます。



では、NFT Internationalがどこにあるのかというと、提携契約に関する公開情報ではワイオミング州シャイアンの「1712 Pioneer Avenue」ということになっています。これを見た時、アイヘンヴァルト氏は驚いたとのこと。なぜなら、「パイオニア通り」という住所は、多数のペーパーカンパニーの設立に関与しているとしてロイターが報じた「Wyoming Corporate Services」という企業の住所と同じだからです。同社の創業者兼社長であるジェラルド・ピッツ氏はロイターの取材に対して、「わたしたちは、ペーパーカンパニーであれ老舗であれ、事業体が善にも悪にも使われうることを認識しています」と回答したことがあります。

さらにアイヘンヴァルト氏が調べを進めると、NFT Internationalの最終的な所在地として、ワイオミング州シャイアンの「2710 Thomes Avenue」という住所に行き着きました。この小さなレンガ造りの建物は、ピッツ氏が幹部として名を連ねている40の企業が住所として登録しており、その中にはアメリカ軍に納入した車両に不正な部品を使用して詐欺罪に問われたNew York Machineryがあるとこと。



また、金融詐欺で逮捕され「世界で最も腐敗した役人第8位」に格付けされたこともあるウクライナのパブロ・ラザレンコ元首相が横領金の資金洗浄に使用したペーパーカンパニーや、少なくとも18のフロント企業を駆使してクレジットカード詐欺を働いたIra N. Rubinという詐欺師も、この住所に関連があるとアイヘンヴァルト氏は指摘しています。

もちろん、過去の不正や犯罪に関連した企業と住所が同じというだけでは、NFT Internationalが悪徳企業だということにはなりません。しかし、アイヘンヴァルト氏は「かつて自由世界のリーダーだった人物なら、取引する企業についてはもっとデューデリジェンスを意識できるでしょうし、これだけうさんくさい企業とは関わらないようにするはずです」と述べた上で、「しかしながら、トランプ氏はペテン師中のペテン師です。彼が今までとは違うことをしていると考える理由はありません」とコメントしました。