岸田文雄首相=共同通信

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(東京中央社)立憲民主党の衆議院議員2人が国会で岸田文雄首相に対し、台湾独立不支持を明言するよう相次いで求めたのを受け、在日台湾人団体「全日本台湾連合会」(全台連)は5日、両議員と同党に発言の撤回と謝罪を求める抗議声明を出した。謝長廷(しゃちょうてい)駐日代表(大使に相当)は6日、取材に対し、「台湾独立」の定義に注意を払うべきだと述べた。

立民の岡田克也幹事長は10月17日の衆院予算委員会で岸田氏に対し、台湾独立についての考え方を質問。台湾の独立を支持してもらえると思う人が台湾内で増えた場合、「その動きは止められなくなるかもしれない。それはわれわれ日本にとっても耐え難い状況が生まれる。だから台湾は友人だが、独立は支持できない」と述べた。また、ブリンケン米国務長官が今年5月、「台湾の独立を支持しない」と発言したことを念頭に、「米国の国務長官も最近でも『独立は支持しない』と言っている」と付け加えた。

この発言に続き、先月29日の衆院予算委員会では同党の末松義規衆院議員が「台湾が独立するというような動きは封じていかなければならない」と発言し、岸田氏に「台湾独立は支持しない」と明言するよう促した。また、バイデン米大統領が中国の習近平国家主席に「台湾独立は支持しない」と明言したとも述べた。

両議員の発言に対し、岸田氏は「台湾は日本にとって基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人」だと繰り返し説明。「台湾との関係は1972年の日中共同声明を踏まえ、非政府間の実務関係として維持していくこと、また台湾海峡の平和と安定は重要であり、台湾を巡る問題は対話により平和的に解決されることを期待する」との日本政府の一貫した立場を改めて表明した。

全台連の趙中正(ちょうちゅうせい)会長や常務理事・理事一同の名義で出された声明では、両議員の一連の発言は「正に台湾に対する著しい内政干渉であり、台湾人の人権や国民感情を蹂躙(じゅうりん)するものである。誠に言語道断であり、断じて容認できない」と批判。バイデン氏の台湾独立を巡る発言については、バイデン氏が9月18日の米CBSテレビのインタビューで「独立に関しては台湾自らが判断を下す。われわれ米国として台湾独立を促してはいない。それは彼らの決定事項だ」と述べたことに触れ、議員の発言は「アメリカの立場をもねじ曲げるものであり、あたかも中華人民共和国外交部の代理人のような発言」だと非難した。

謝氏は6日、在日台湾メディアの取材に応じ、両議員がどういった発言をしたのかは分からないものの、台湾独立の定義がどんなものであるかに注意すべきであり、現状は台湾独立ではないのかと述べた。また、岸田氏が明確に回答しなかったのはスマートだと語った。

(楊明珠/編集:名切千絵)