歌にのせて児童虐待防止を訴える 幼いころに虐待受けたロックシンガーTOMOYAさん
宇都宮市が拠点のロックバンド「CrazyーZephyr」ボーカルのTOMOYAさん55歳。
子どものころの虐待から生き延びた、いわゆる「サバイバー」です。
歌う曲には幼少期の経験をもとにしたものもあります。
県内で生まれたあと親戚の家を転々とし、行く先々で暴力を受けてきたTOMOYAさん、14歳の頃、宇都宮市で両親との暮らしを再会させますが、服役していた父親と薬物中毒だったという母親、それに暴力にまみれた生活はすぐに破綻。
その後も波乱の日々を生き抜いてきました。
現在は、バンド活動をするかたわら虐待防止を呼び掛けるイベントを開いたり、自身に賛同する仲間と団体を結成して街頭活動を展開したりと、活動の幅を県内各地に拡げています。
先月30日に宇都宮市で開かれた国際交流のイベント。ここにもTOMOYAさんの姿がありました。
ユーモアたっぷり、明るく楽しくふるまうその姿からは壮絶な過去を想像することはできません。
しかし虐待を受けてきたほかの人たちと同じようにTOMOYAさんも記憶障害やうつ状態など虐待の「後遺症」に苦しめられています。
痛みを抱えながらも活動を続け、今年で9年。
TOMOYAさんの草の根の活動は実を結び始めています。
話に耳を傾けるのは、地域住民を支える民生委員、なかでも児童福祉が専門の「主任児童委員」たちです。委員らがTOMOYAさんの活動を知り、講師を依頼しました。
ステージ以外で初めてマイクを握ったTOMOYAさん。
虐待された暗い過去もライブで鍛えた話術で振り返ります。
しかし死別するまでずっと避けて暮らしてきた両親との記憶や誰にも明かしたことのない過去を語るうちに、感情がこみ上げてきます。
講話を終えた夜。TOMOYAさんは自身が主催するイベントに向けて準備を進めていました。
イベントで配るこの琥珀糖に加え活動にかける費用はすべて自分持ち。
週5日のアルバイトと通常のライブ出演のギャラで賄っています。
実はTOMOYAさんには中学2年生の娘、美麗さんがいます。
虐待を受けていたころには想像もできなかったという母と子、2人の暮らしはTOMOYAさんにとって、かけがえのないものです。
過激な衣装に身を包みロックに生きるTOMOYAさん。
時には誹謗中傷を受けることもありますが、それでもステージに立てるのは周囲の人々の支えがあるからだと言います。
生活に苦しむ一人親家庭に食事などを提供するイベント。
TOMOYAさんをはじめとする「児童虐待撲滅隊」が開き、主旨に賛同する人々が歌や踊りを披露しました。
県内では昨年度の1年間で児童虐待に関する相談が3,332件寄せられていて、今この瞬間もどこかで誰かが苦しんでいるかもしれません。
自分のような経験をする子どもを1人でも減らしたい。
TOMOYAさんは今日もどこかで声を上げ続けます。