「大島らしさ」は出せたが…・大島大島・大野

<第151回九州地区高校野球大会鹿児島県予選:枕崎5−2大島>◇24日◇1回戦◇平和リース

 枕崎と大島。県立屈指の強豪同士が見ごたえのある好勝負を繰り広げた。

 先手をとったのは枕崎。立ち上がり、エラーと5番・田中智起(2年)の左前適時打で2点を先取した。3回には1死一、二塁から5番・田中が中越え二塁打を放ってリードを4点に広げた。

 「この夏、日本一になろうと誓って今大会に臨んだ。直球が走っていた」と枕崎の右腕エース宮田一平。球速は120台後半から130台だが気持ちの入った直球に、2種類のスライダーを巧みに使い分け、鹿児島大島打線に狙い球を絞らせず、6回まで散発2安打、三塁を踏ませなかった。

 7回に1番・上釜征也(1年)の右前適時打でダメ押しの5点目を挙げる。

 枕崎がこのまま押し切るかと思われたが、その裏、大島が持ち味の粘り強さを発揮する。1死から4番・関凛太朗(2年)の左前打を皮切りに4連打。初めて打線がつながり、6番・要彌真登(1年)の中前適時打と押し出しで2点を返した。

 8、9回は2番手・安田喜之祐(1年)が好投し、主導権は鹿児島大島が握ったが、宮田の気迫が勝り8、9回に追加点を許さず、枕崎が接戦をものにした。

 終盤に粘りを見せ「過去の先輩から受け継ぐ鹿児島大島らしさ」(塗木哲哉監督)は出せたが、2年連続となるセンバツへの挑戦は初戦で幕切れとなった。

 先発したのは2年生右腕の大野幸乃進。この夏、鴨池を沸かせた3年生左腕・稼頭央の弟だ。

「投手の仕事は気持ちを込めて球を投げること。兄ちゃんはできていたぞ!」

 3回、4点差となった直後、塗木監督が檄を飛ばす。そこからの幸乃進は球に気持ちが入り、4回から6回は3人ずつで打ち取り、守備で粘る展開に持ち込んだ。

 打線が6回まで振るわず、7回に5点差となったが、その裏に「大島らしい粘り」(塗木監督)を発揮する。1死から4連打を浴びせ2点を返した。それまで相手エースの術中にはまっていたが、ボックスの投手寄りに立つなど、様々な工夫を凝らし、自分たちの間合いに引き込んだ。第4試合でナイターとなったにも関わらず、大勢の観客が駆けつけた一塁側スタンドが沸き、終盤は夏の逆転劇をほうふつさせる雰囲気だった。

 それでも勝てなかった。敗因は自分たちにある。「自分をはじめ、前のチームで試合に出ていたメンバーが打てず、チームを引っ張れなかった」と体岡大地主将は悔しがる。昨秋優勝、今夏準優勝の3年生の後を継ぐのは想像以上に重いプレッシャーを感じる。周囲の注目を気にするあまり相手に「向かっていく」「挑む」気持ちを忘れてはいなかったか? そんなことが敗れてみて身に染みた。この秋は初戦敗退。この事実と悔しさをエネルギーに替え、はい上がっていくしかない。

(取材=政 純一郎)