試合ができて「全てに感謝」・喜界喜界2点目

<第151回九州地区高校野球大会鹿児島県予選:出水工9−5喜界>◇20日◇1回戦◇平和リース

 立ち上がり、出水工はエラーを足掛かりに2番・桜井潤士郎(2年)の右越え二塁打で口火を切り、3連打で3点を先取した。

 喜界は2回裏、相手のエラーとスクイズで1点差に詰め寄る。

 4回表、出水工はスクイズと7番・池林陽斗(1年)の右越え二塁打で2点を追加し、再び3点差とした。

 5回裏、3点差を追いかける喜界は、4番・住友晴城主将(2年)の犠牲フライ、5番・住友晴哉(2年)の左前適時打で1点差に詰め寄る。

 6回以降、出水工は松元怜音(1年)から森園健悟(1年)への継投、喜界は先発の住友晴城主将の粘投などで両者追加点が奪えず、1点差で9回へ。

 出水工は2死から相手のエラーと4番・橋口翔真主将(2年)の左越え2点適時二塁打で3点を勝ち越した。

 その裏、喜界は連打で粘ったが、最後は併殺で打ち取られ、出水工が接戦をものにした。

 初戦で敗れた喜界だったが、住友晴城主将は「試合ができただけでもありがたかった。関わってくれた全ての人に感謝したい」と振り返った。

 慌ただしい1日だった。本来なら19日開幕の本大会は台風14号の影響で1日延期することが事前に決まった。大会初日の第3試合に組まれていた喜界だったが、台風のため船も飛行機も欠航が続き、大会前日までの鹿児島入りは断念せざるを得ない。

 当日午前の便で鹿児島入りすれば試合開始にギリギリ間に合うが、直行便はすでに満席でチケットが取れなかった。残された可能性は奄美大島経由での乗り継ぎだったが、試合開始に間に合わず「没収試合になる」(松元修監督)こともあり得た。そんな状況だったが主催の県高野連からは、午後1時40分開始予定を午後3時に遅らせて待機するとの連絡があった。

 「勝ち負けよりも、この大会に出ることに意味がある」と思った松元監督は出場を決意。鹿児島空港からの空港バスに乗り遅れたが、午後2時30分に球場に到着。何とか試合開始時刻に間に合った。

 選手は9人ギリギリ。初回に3点を先制されたが、住友晴城、晴哉の双子兄弟の活躍などで反撃し、終盤まで1点差の接戦を演じた。最後は4点差で敗れたが「大会を成立させるためにいろんな人が関わっていることが分かることが彼らの今後につながる」と松元監督。大会を運営する県高野連、旅程を手配した旅行会社、応援してくれる保護者、何より対戦相手の出水工…。全ての理解と協力がなければ試合、大会が成り立たないことが身に染みた。

 だからこそ「負けたことが悔しい」と住友晴城主将。感謝の気持ちも含めて「厳しい冬練でレベルアップして鴨池に帰ってくる」モチベーションにするつもりだ。

(取材=政 純一郎)