『ハイキュー‼』×V.LEAGUE
コラボマッチイベント DAY2レポート

(DAY1:選手たちとアニメ声優陣が語った『ハイキュー‼』とバレーボールへの愛>>)

 人気漫画『ハイキュー‼』とV.LEAGUE(Vリーグ)のコラボマッチイベント2日目の「スペシャルマッチ」は、VリーグトップカテゴリーであるDIVISION1(V1)のチームから選ばれた選手たがチームメイトとなって対戦するという試みで、前日の「ウォームアップイベント」の熱気をつなぐ試合となった。


スペシャルマッチでVOM(MVP)に選ばれた柳田将洋(左)と清水邦広(右)

 試合前の会場のスクリーンには、日本バレーボール協会競技普及事業部で働く黒尾鉄朗(元音駒高校)が、バレーボールファンを増やすためにスペシャルマッチ開催のために奔走する映像が流れる。これは、4月25日発売の『週刊少年ジャンプ』21・22合併号に掲載された読み切りに、アニメの声優陣が声をあてたもの。そうしてファンの期待が高まった中、いよいよ選手が入場した。

 東峰旭(元烏野高校)がデザインしたという、スペシャルマッチのコラボユニフォームの背中には、柳田将洋(ジェイテクトSTINGS)であれば「MASA」といったように、公式戦とは異なるニックネームが入っている。柳田はスポットライトを浴びる際に、振り返ってそれを強調してみせた。

 試合の様子はオンラインでも配信されたが、『ハイキュー‼』の担当編集者とともに、日本代表でもプレーしていた元パナソニックパンサーズの福澤達哉さんが解説として参加した。

 作品のファンだという福澤さんが「リアル尾白アラン(稲荷崎高校)ですね」と紹介したのが、柳田と同じチームAのデ・アルマス アライン(サントリーサンバーズ)だ。キューバ出身のアラインは日本国籍の取得を目指しており、尾白アランのようなパワフルなサーブとスパイク、反応がいいスパイクレシーブも魅力の21歳。今回の試合でも次々と得点を重ね、SNSにも「リアルアラン」の文字が飛び交った。

 一方のチームBは、2年前に行なわれた1回目のコラボマッチにも出場した富松崇彰さん(元東レアローズ。2021−22シーズンをもって引退)が、今回も山本猛虎をイメージしたモヒカン姿で登場。さらに「ウォームアップイベント」で話題になった、稲荷崎高校の宮兄弟を彷彿とさせる髪型の清水邦広(パナソニックパンサーズ)と手原紳(東京グレートベアーズ)も会場を沸かせた。

 事前に練習ができなかったこともあり、手原と清水のコンビネーションはなかなか合わず、左利きの清水が右手で打つ場面もあった。福澤さんは、「日向翔陽(烏野高校)が、トスが合わなくて左手で打ったことがありましたが、清水もたまにやるんです」と、同級生で元チームメイトの清水のプレーについて語った。

 すると試合中に??いきなり、清水がトスを上げ、手原が助走に入る。宮兄弟が決めた双子速攻の「裏」を再現しようとしたが、手原のスパイクはブロックされて得点できず。この後、タイムアウトでベンチに戻ると、清水は手原の肩を抱きながら「俺のトスを打てへんやつはポンコツや!」と宮侑のコメントを叫び、『ハイキュー‼』ファンの笑いを誘った。

 手原はサーブの際にも、エンドラインから6歩進んで振り返り、手を上げて観客の歓声を静めるなど宮侑のルーティンを再現した。Vリーガーたちの通常のプレーも、『ハイキュー‼』を意識したファンサービスが多くみられた。

 ナイスレシーブを連発していたチームAのリベロ、井上航(JTサンダーズ広島)は、床の上に落ちそうなボールの下に手のひらを差し込んで上げる「パンケーキ」を披露。烏野高校のリベロ・西谷夕を彷彿とさせるプレーだった。

 また、チームBでは身長175cmのアウトサイドヒッター・山田滉太(大分三好ヴァイセアドラー)が跳躍力を生かしたスパイクで観客の度肝を抜いた。日向のVリーグ加入後の身長は172.2cm。実際に日向がプレーしていたら......と想像しながら山田を見ていた『ハイキュー!!』ファンも多いだろう。

 見どころ満載だった試合は、チームAが2セットを先取して勝利。最も試合を沸かせたVOM(MVP)は、チームAからは柳田、チームBからは清水が選出された。

 かなりの『ハイキュー‼』ファンであることでも知られる柳田は、「こんな素晴らしい時間を過ごせてとても幸せです」とコメント。さらに試合後の会見では、「このようなコラボ、イベントに参加できることはめったにない。この経験を、バレーボールを盛り上げることに生かしたいです」と今後についても言及した。

『ハイキュー‼』と一緒にバレーボールを盛り上げる。その思いは他の選手も同じだ。

「オフシーズンにバレーボール教室でいろいろな小・中学校を回ったのですが、<『ハイキュー!!』がきっかけでバレーボールを始めた>という子供が多かったです。あらためて作品の素晴らしさ、影響力を感じました。このイベントでVリーグを初めて知った方もいると思うので、実際の試合を見るきっかけになったらいいなと思います」(井上)

「Vリーグではライバルの選手たちが仲間になって、イベントを一緒に盛り上げられたというのはバレーボール界、僕にとってもいい経験でした。Vリーグでも、見る人たちを惹きつける試合をやっていかないといけない。そうして試合を見た方がリピーターとなってくれるように、自分で思いついた案などを積極的に発信していこうと思います」(清水)

 そんな選手たちが所属チームに戻り、しのぎを削り合う「V.LEAGUE DIVISION1MEN」は10月22日に開幕する。2022−23シーズンは、柳田や日本代表の左のエース西田有志、代表セッターの関田誠大らが新加入したジェイテクトSTINGSが話題を集めているが、全10チームが『ハイキュー‼』にも負けないド迫力の試合を見せてくれるだろう。

 時には会場、時には映像で。男子の試合だけでなく、10月29日に開幕する女子の「V.LEAGUE DIVISION1 WOMEN」やDIVISION2以下の試合も要注目だ。そうして、バレーボールの輪が広がっていくことを願いたい。

(選手の敬称略)