可搬式オービスのカカシ効果…1台約1000万円!? 「速度違反を検挙できなくても…」警察官語る

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「午前6時半から可搬式オービス、抜け道脇に設置…警察『住民要望も聞いて台数増も検討』」と2022年6月17日、読売新聞が報じた(https://www.yomiuri.co.jp/national/20220614-OYT1T50097/)。

記事中の写真に勇ましく写っているのは、東京航空計器(TKK)の可搬式、LSM-310だ。嗚呼、と私は哀しく思う。記事中にこうある。

【県警は2018年に可搬式オービスを1台導入し、21年に1台追加。県警交通指導課によると、19年103回(うち検挙65件)、20年126回(同59件)、21年80回(同20件)、今年は4月末までに28回(同8件)運用した。】

「運用」とは、速度取り締まりを行ったことと解される。道端に測定機を設置して待ち伏せるタイプの取り締まりは通常2時間やるらしい。1回当たりの検挙件数を計算すると以下のようになる。

2019年 103回で65件=1回に約0.63件
2020年 126回で59件=1回に約0.47件
2021年 80回で20件=1回に0.25件
2020年 28回で8件=1回に約0.29件 ※1~4月分

2021年なんか4回で検挙は1件って、そんなのはもう取り締まりとは言えない。だから、記事にこう出てくる。

【取り締まりを実施した佐久署の椎名祐二交通課長は「速度違反を検挙できなくても、見せること自体が速度抑制につながっている」と効果を口にする。】

そうなのである。TKKの可搬式は、LSM-300も新型のLSM-310も、測定部はスキャンレーザー式(以下、レーザー式)だ。どうもそこに不具合があるらしく、なんというか、取り締まりには向かないようだ。

ゆえに、なるべく堂々と目立たせて設置し、できるだけ記者クラブメディアに宣伝してもらう。そうやって運転者たちをびびらせ、速度抑止につなげようとするのだ。「見せる取り締まり」という言葉も使われる。

1台約1000万円もの可搬式に、カカシとしての役割を大きく与える、おかしいでしょ。いや、「カカシ効果は大事だ。カカシで何が悪い」とおっしゃる方も、もちろんおいでだろう。しかし…。

今のところ、ネットでは可搬式を「移動式オービス」と呼んで「神出鬼没だ。ヤバイぞ」という話になっている。が、「じつはカカシっぽいぞ」と、やがてバレるだろう。

「かなり飛ばしてたら移動式が道端に! あっ、やられた、これで免取りだ! と焦ったけど、移動式は光らなかったよ」
「光ったけど、呼び出し状がこなかったよ」
「呼び出されて出頭したら、ぜんぜん身に覚えのないスピードで測定されてた。ドライブレコーダーの録画を見せたら、なんかオシマイになったよ」
「おまわりさんが移動式を運んできて取り締まりを始めるっぽかったんで、YouTubeにアップしようと思って撮影したんだ。そしたら、なんか延々1時間以上、ごちゃごちゃいじって、結局撤収しちゃった。大丈夫なのか?」

そんな話がネットで広まるのは、時間の問題では? そうなったとき、警察の威信はめちゃくちゃ失墜し、ナメられる。治安的にまずい。しかし、警察庁内の“TKK押し”の一派としては、今さらもう撤退できないのだろう。ダメなレーザー式をすばらしい装置に生まれ変わらせる“夢の新部品”、そういうのが開発されるのを待つしかないのだろう、と私は見る。

それにしても、あと何年待つのか。かつて優に年間200万件を超え、違反別でトップだった速度取り締まりは、どんどん減った。2018年には一時不停止に抜かれ、100万件を切りそうだ。時代は自動運転へ進みつつある。速度取り締まりはマイナーなジャンルになりつつある。1台約1000万円のカカシを、“TKK押し”の一派は、いつまで都道府県警察に購入させ続けるのか。