【ヴィクトリアM みどころ】 豪華メンバー 春の府中に咲き誇る、百花繚乱の花たち

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写真:日刊スポーツ/アフロ


第17回ヴィクトリアマイル みどころ

 女王が女王らしく舞うのか、燻っていた実力馬が花を咲かせるのか、それとも......

近年のヴィクトリアマイル(GI 芝・1,600m)はその年ごとによって、顔つきが大きく変わってくる。

 もともとはクラシック戦線で惜敗続き、あと一歩でGIを取り逃していた悲劇のヒロインが輝ける舞台として注目されたように思うが、いつしか波乱のレースの色合いが濃くなっていた。

 そして、ここ2年はアーモンドアイにグランアレグリアと強い馬が強いレースをして、女王の品格を見せつける結果となった。

 牝馬が強くなり、牡馬混合のGIでも結果を残すようになった昨今において、牝馬のGIホースは昔ほど珍しい存在ではなくなった。

ヴィクトリアマイルでもこの10年、3頭以上GIホースが出走するケースは珍しくなく2016年は出走18頭中7頭がJRAでのGIを制していたほど。

今年のヴィクトリアマイルも2006年、2018年に続いて歴代で2番目に多い5頭のGIホースがエントリー。いずれも今が旬というべき5歳以内の馬たちなので女王の座を争うのだから豪華なメンバーになったと言えるだろう。

 その中でも注目を集めるのは唯一の4歳GIホース、ソダシだろうか。

 振り返れば1年前、無敗で桜花賞を制した直後からソダシには試練ばかりが続いたように思えてならない。二冠制覇を目指して臨んだオークス(GI 芝・2,400m)では距離の壁に泣かされて初黒星となる8着に惨敗。

秋へのリベンジを誓って臨んだ札幌記念(GII 芝・2,000m)で古馬を粉砕すると、再び1番人気で迎えた秋華賞では勝ちたいという思いが強すぎたか、ゲートに顔をぶつけて歯を折るというアクシデントに見舞われ10着に大敗した。

このままでは終われないとばかりに急遽の参戦となったチャンピオンズC(GI ダート・1,800m)は一族が得意としているとはいえ、自身は初体験となるダート戦。

1枠1番の最内枠から果敢に先行するも、直線では見せ場なく失速してこれまでで最低着順となる12着に敗れるなど、その純白の馬体は幾度となく土に塗れた。

 復活を期して、ソダシが挑んだのはフェブラリーS(GI ダート・1,600m)。2度目とはいえ、ダート適性は未知数な上に百戦錬磨の牡馬たちばかりという一戦だったが、ソダシはメゲずに先行して抜け出しを図り、3着に。

敗れはしたが勝つか負けるかがハッキリしていた彼女が初めて馬券圏内に入って敗れたのは復活の兆しと言えるだろう。

 今回はいまだ負け知らずの芝マイル戦。敗北を知り、地に塗れたことで一回り成長したソダシが真の女王として戴冠なるか。同期のライバル、アカイトリノムスメが現役引退を発表したばかりだけに4歳世代のトップとしてはなむけの勝利を捧げたいところだ。

 ソダシ以外の4頭のGIホースはすべて5歳の牝馬たち。

その中でもレイパパレ、アカイイトの2頭は昨年GIを制し、レシステンシアはGIで3度の2着を記録しているという具合に牝馬が強い世代ということがわかるが、唯一、4歳以降GIで活躍できていない馬がいる。

 その馬こそ、デアリングタクト。

かつてはこの世代の頂点に立った元無敗の女王である。

 祖母は重賞戦線で活躍したデアリングハートだが、それ以外の活躍馬は皆無という血統構成に加え、大きな牧場で生まれ育ったわけではない。

一見、どこにでもいそうなプロフィールしかもっていなかった彼女だが、その爆発的な末脚を武器にクラシック戦線に乗ると、桜花賞(GI 芝・1,600m)でレシステンシアを破って女王の座を奪還すると、続くオークス、秋華賞(GI 芝・2,000m)と危なげなく勝ち進み史上初となる無敗での牝馬三冠を達成。一気にこの世代の女王となった。

 史上初となる三冠馬3頭の争いとなったジャパンC(GI 芝・2,400m)では先輩三冠牝馬・アーモンドアイに屈して3着に終わったが、それでもこの世代の女王としての立場は不動のものと誰もがそう思っていた。

ところが、明け4歳緒戦となった金鯱賞(GII 芝・2000m)で道悪馬場に脚を取られ、伏兵ギベオンに逃げ切られ2着に終わると、香港へ遠征して臨んだクイーンエリザベス2世C(G1 芝・2,000m)は遠征慣れした先輩牝馬ラヴズオンリーユーに完敗する形での3着。

国内に戻ってリベンジを果たそうとした矢先、右前脚に故障が見つかり、休養を余儀なくされてしまった。

先が見えない牧場での療養生活。彼女が休んでいる間に、同級生でクラシックには縁がなかったレイパパレ、アカイイトがGIを制し、桜花賞で破ったレシステンシアは短距離GI戦線で牡馬と互角に渡り合っている。

かつて自分が輝きを放ったターフに同期の牝馬が台頭するたび、悔しい思いをしたことだろう。

万全の調整を進め、ようやく復帰緒戦として選んだのがこのヴィクトリアマイル。

1年以上のブランクは大きなマイナスとなるのは百も承知だが、それでも彼女の強さを知る者はあの漆黒の馬体が躍動する姿を期待してしまうことだろう。

あのトウカイテイオー以来となる1年ぶりの休み明けを克服してのGIは果たして叶うのだろうか。

 あまりに豪華なメンバー構成だけにGI馬ばかりに目が行ってしまうが、このレースでタイトルを奪取したい挑戦者にだって、当然チャンスはある。

 その筆頭格こそ、ソングラインだろう。

 昨年のNHKマイルC(GI 芝・1,600m)でシュネルマイスターのハナ差2着に激走して以来、マイル戦線で地道に力をつけてきた彼女。

富士S(GII 芝・1,600m)で重賞初制覇を飾るなど、東京マイルは3戦して2勝2着1回とほぼパーフェクトな成績をマークしている。

そして4歳になった今年はサウジアラビアへ遠征し、1351ターフスプリント(G3 芝・1,351m)を勝利。そのスピードはワールドクラスであることを実証して見せた。デアリングタクトとともに1枠に入った青鹿毛の彼女が番狂わせの主役となる可能性は十分にある。

 一回り成長した女王の戴冠か、かつての女王の復活か、それとも新女王の誕生か――どうやら今年の春の女王決定戦は一筋縄ではいかないようだ。


■文/福嶌弘

第17回 ヴィクトリアマイル(GI)枠順
5月15日(日)2回東京8日 発走時刻:15時40分

枠順 馬名(性齢 騎手)
1-1 デアリングタクト(牝5 松山弘平)
1-2 ソングライン(牝4 池添謙一)
2-3 メイショウミモザ(牝5 鮫島克駿)
2-4 マジックキャッスル(牝5 戸崎圭太)
3-5 ソダシ(牝4 吉田隼人)
3-6 ディヴィーナ(牝4 武豊)
4-7 レシステンシア(牝5 横山武史)
4-8 クリノプレミアム(牝5 松岡正海)
5-9 アブレイズ(牝5 菅原明良)
5-10 ローザノワール(牝6 田中勝春)
6-11 ファインルージュ(牝4 C.ルメール)
6-12 ミスニューヨーク(牝5 M.デムーロ)
7-13 レイパパレ(牝5 川田将雅)
7-14 アカイイト(牝5 幸英明)
7-15 アンドヴァラナウト(牝4 福永祐一)
8-16 デゼル(牝5 藤岡康太)
8-17 シャドウディーヴァ(牝6 坂井瑠星)
8-18 テルツェット(牝5 D.レーン)

※出馬表・成績・オッズ等は主催者発表のものと照合してください。