新型コロナに感染した場合、3回目のワクチン接種はいつ受ける?

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 感染力の強い新型コロナウイルスのオミクロン株の流行により、全国の新規感染者は連日、5万人を超えています。多くの自治体では、3回目のワクチン接種が始まっていますが、2回の接種を済ませた人が、3回目の接種を受ける前に新型コロナウイルスに感染するケースも珍しくないようです。2回目と3回目の間に感染した場合、ワクチン接種は感染後、どの程度期間を空けてから受けるのが望ましいのでしょうか。医療ジャーナリストの森まどかさんに聞きました。

感染から3カ月後が目安

Q.「新型コロナウイルスに感染すると、体内で抗体ができるため、しばらくは再感染する可能性が低くなる」といった話を聞きますが、事実でしょうか。

森さん「新型コロナウイルスに感染することによって免疫がつくため、感染から回復した人は、しばらくの間は再感染しにくいと考えられています。この指標の一つである中和抗体の量(抗体価)は、感染から20日後ほどでピークに達し、感染や発症を防ぐ効果は3カ月程度維持できると報告されているので、感染後すぐに再感染する可能性は低いと言えます。

しかし、抗体価は時間の経過とともに減少し、再感染のリスクが高まります。また、感染によって得た免疫が変異株(デルタ株、オミクロン株など)に対しては予防効果が低くなる可能性や、感染時の症状の重さ、年齢などによって抗体価に個人差があることも指摘されています」

Q.2回のワクチン接種を済ませていた人が感染する確率は、どの程度なのでしょうか。また、2回目と3回目の間に感染した場合、ワクチン接種は感染後、どの程度期間を空けてから受けるのが望ましいのでしょうか。

森さん「国立感染症研究所は『2021年11月29日から2022年1月12日までに、オミクロン株の感染で入院した人の61.9%がワクチンを2回接種済みだった』という調査結果を報告しています。追加接種(3回目の接種)はオミクロン株に対しても有効であると考えられ、日本は、初回接種(1回目、2回目の接種)後に感染した場合も、追加接種の対象(18歳以上)としています。海外の対応を見ても、推奨あるいは接種可能としている国は複数あり、感染から接種までの期間については、フランス、ドイツでは3カ月以上、イギリスでは4週間以上と基本方針で示しています。

こうした海外の状況や、アメリカ・ワシントン大学の『ワクチン初回接種完了者において、デルタ株の感染から2カ月後のオミクロン株に対する中和抗体価は、3回目接種から10日後の中和抗体価と同等であった』という研究報告を踏まえ、厚生労働省は『少なくとも感染から2カ月以内は追加接種することのメリットは少ない可能性がある』という見解を示しています。その上で、『感染から3カ月(2回目の接種から6カ月以上空けることが前提)』を追加接種までの目安として暫定的に提示しています。

今後、研究報告が増えれば感染から追加接種までの間隔が変わる可能性はあります。また、3カ月は目安であり、『感染から回復後、期間を空けずに希望する場合にも接種機会を提供していく』とし、個人の希望で感染後3カ月より早く追加接種することも問題ないという見解です。

接種までの期間について、ウイルス学、感染症学が専門の北村義浩医師(日本医科大学特任教授)に意見を尋ねたところ、『既感染者に対する追加接種は予防、重症化予防の点で有効。中和抗体がある程度低下した頃に接種すべきであり、回復後5カ月程度経過した頃ではないか』とのことですが、データが少なく定説もないことから『厚労省が目安としている3カ月後でもよいのでしょう』という見解も話していました」

Q.新型コロナウイルスに感染後、療養が終わった時点ですぐにワクチン接種を受けると、健康にどのような影響があると考えられているのでしょうか。

森さん「初回接種(1回目、2回目)後に感染した人の追加接種(3回目)について調べた研究はまだわずかだと思います。療養が終わってからワクチンの追加接種までの期間の長さが健康にどう影響するかという研究報告は把握していませんが、先行して追加接種を行っている諸外国においても、感染から接種までの期間を定めていない国は複数あり、直後に接種することも可能です。先述のように、期間を定めている国でも3カ月だったり4週間だったりします。

エビデンス(証拠、根拠)が不十分という状況ではありますが、接種のタイミングによる健康への影響は大きくないと考えられています。ただし、感染し隔離期間が終わっても、急性症状が消失し、体調が回復したことを確認してからの接種が望ましいでしょう」

Q.ちなみに、新型コロナ感染後に3回目のワクチン接種をして健康に影響が出た事例はあるのでしょうか。

森さん「厚労省によると、現在までにそうした報告はないとのことです」