ウクライナのゲーム開発スタジオ・GSC Game Worldの人気ゲームシリーズ「S.T.A.L.K.E.R.」で12年ぶりにリリースされる新作「S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chernobyl」で、ゲームシステムに非代替トークン(NFT)を取り入れることが日本時間の2021年12月16日に発表されました。しかし、ファンから猛抗議を受けて、GSC Game Worldはこの機能を削除すると同月17日に発表しました。

S.T.A.L.K.E.R. 2 is getting NFTs, including one that lets you become an in-game ‘metahuman’ - The Verge

https://www.theverge.com/2021/12/15/22834567/stalker-2-nfts-metahuman-dmarket

S.T.A.L.K.E.R. 2 will no longer have NFTs after fan outcry - The Verge

https://www.theverge.com/2021/12/16/22840488/stalker-2-nft-metahuman-gsc-web3-canceled

「S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chernobyl」は、1972年に発表されたストルガツキー兄弟の長編SF小説「ストーカー(路傍のピクニック)」をモチーフにしたオープンワールド「S.T.A.L.K.E.R.」シリーズの4作目となる作品。ゲームプレイトレイラーが以下のムービーです。

S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chernobyl - Gameplay Trailer - YouTube

12年ぶりのシリーズ最新作となるS.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chernobylは、「プレイヤーにとって最高の体験になる」ことを目標に、さまざまな最新技術が取り入れられているとのこと。例えば、よりリアルな演出を追求するため、S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chernobylに登場するゲームキャラクターの多くが、実在の人物を3Dスキャンすることでモデリングされています。実際に以下のムービーのおよそ3分20秒辺りで、スキャンによるモデリングの風景を見ることができます。

S.T.A.L.K.E.R. 2 - Dev Highlights: E3 2021 - YouTube

GSC Game Worldは「ブロックチェーン技術を使い、プレイヤーコミュニティにS.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chernobylを所有させる」という「STALKER Metaverse」を、2021年12月16日に発表しました。



このSTALKER Metaverseは、「NPC(ノンプレイヤーキャラクター)を所有する権利」を販売するオークションを2022年1月に開催するというもので、一定期日まではこの権利を自由に売買することが可能でした。そして、最終的に所有権を持つ者は、GSC Game Worldのスタジオで顔や体をスキャンし、S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chernobylの中にNPCとして登場することができます。

S.T.A.L.K.E.R. Metaverse | Be The First Meta Human

https://gsc-game.ru/index.htm



また、ゲーム内に登場する机や壁に、NFT所有者のニックネームを書き込んだり、マルチプレイヤーモードの手袋やタトゥー、バッジといった見た目や、ゲームに関連はないもののNFT市場で取引可能なデジタルカードをNFTで販売することも発表されました。GSC Game Worldは、NFTの売り上げをすべて開発費に回す予定としていたとのこと。

しかし、シリーズのファンからは、NFT導入を批判する声が多く挙がりました。



「『完全なオプション』と『ゲームをプレイすればお金を稼げます』というのは、プレイヤーをだますやり口だということを将来のために覚えておいてください。DLCやガチャも『完全なオプション』であることを忘れないでください。つまんないゴミにしないでください」



「ゲームコミュニティーのみんなが暴れるのにうんざりしたので、冷静に話します。NFTはゲームのオプションかもしれませんが、ほとんどのプレイヤーはNFTなんて望んでいないと思います。私はS.T.A.L.K.E.R. 2が成功するのを見たいし、NFTはその妨げになると思うので、開発の皆さんが考えを変えることを心から願っています」



これを受けて、開発チームはTwitterで「昨日の誤解で、いろいろとご心配をおかけして申し訳ありませんでした。私たちは、皆さまが私たちのゲームのために最善を尽くすことを望んでいることを知っていますし、感謝しています」と述べ、NFT導入を見送ったと発表しました。



IT系ニュースサイトのThe Vergeは、NFT導入撤回についてGSC Game Worldにコメントを要請しましたが、回答はなかったそうです。