食後もダルくならず脳の働きがアップ!Dr.白澤すすめる「糖質制限」

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内閣府の発表によると、’12年の65歳以上の認知症患者数は約460万人で、’25年には約700万人、実に高齢者の5人に1人が認知症になると予測されている。

一方、認知症の治療法はまだ確立されておらず、超高齢化が進む今、誰もが気になる疾患だ。特に脳が萎縮するアルツハイマー型は認知症の中でも最も多いが、これは“脳の糖尿病”だと老年医学の専門家である白澤卓二先生は指摘する。

「アルツハイマー型認知症は脳の神経細胞に問題が起きる疾患なのですが、その大きな要因のひとつに糖質の摂取過多があります。糖質は体内で分解されてブドウ糖となり、インスリンというホルモンによって、体の細胞や組織に取り込まれます。ところが糖質過多になるとインスリンの分泌が追いつかなくなり、肥満や糖尿病の原因となります」

糖尿病はいくつかに分類される。すい臓からインスリンが出にくくなるのが1型糖尿病、運動不足が原因で筋肉にインスリンが効きにくくなるのが2型糖尿病、そして脳でインスリンが効かなくなるのが3型糖尿病のアルツハイマー型認知症のことなのだという。

特に注意をしたいのが、パンやケーキ、パスタなどの麺類の原料である小麦。小麦に含まれるグルテンが糖尿病の進行を加速させるだけでなく、認知機能の衰えにも関係するのだという。

「グルテンに含まれるグルコースが分解されてエネルギーとして脳に入るとき、ちゃんと入らずに問題を起こすのです。たとえるならガソリンを入れるパイプが詰まってしまうようなもの。すると、記憶をつかさどる細胞や学習機能を担う細胞がエネルギーを使えないため、認知機能が落ちてしまうのです」(白澤先生・以下同)

■ケトン体回路は脳の働きをよくする

しかし私たちは、脳を働かせるためには糖質が必要だといわれて、勉強中などに糖分を取ってきた。これについてはどうなのだろうか。

「実は私たちが教わってきたほど脳に糖質は必要ではありません。体のエネルギー燃焼の仕組みは面白い具合にできていて、糖質を取っているとき、体は糖を分解してエネルギーを作ります。ところが、摂取する糖質量が少なくなると体は脂肪を分解して燃焼し、エネルギーにする回路にスイッチするようになるのです。これがケトン体回路と呼ばれるもので、ダイエットだけでなく、脳の働きをよくするエネルギー回路でもあるのです」

体がケトン体回路に切り替わると、脳にエネルギーが行き渡るようになり、頭が冴えて、仕事や勉強のパフォーマンスが上がる。自然に脂肪を燃焼させるため、ダイエットにもなる。

ケトン体回路の利点はそれだけではない。糖分を取ると、血糖値が急上昇した後に急降下する「血糖値スパイク」が起こり、眠くなったり、体がだるくなりがちだが、ケトン体回路を使えば、食後も頭はスッキリして作業パフォーマンスも向上し、イライラしなくなり、ストレスに強くなる。

「海外では小麦製品の摂取過多が認知機能低下と関係しているという論文は多くあります。特に菓子パンは、グルテンに加えて糖分の塊ですから注意しましょう。まずは小麦製品を大幅にカットするだけでも、脳への影響がわかると思います」

■肉や魚、ナッツなどが脳によくておすすめ

菓子パンは血糖値を急激に上げる。小麦製品を好んで食べる人は、まずは主食を米(ご飯)に替えてみよう。

しかし、ご飯だからと安心して糖質過多になると3型糖尿病を招きかねない。ご飯も1日にお茶わん1〜2杯くらい(60〜120グラム)にし、最終的には白澤先生が推奨する1日60グラムまで減らしたい。

「いちばん簡単なのは、おかず中心の食事にすることです。肉、魚、野菜はそのままの量で構いませんし、果物も砂糖を加えず生食であれば問題ありません。魚や肉、卵といったおかずから、良質な脂質を取ることができますし、野菜や果物、ナッツ類からも一定量の炭水化物が取れます。食事から炭水化物を減らすだけで、たった1日でケトン体回路に切り替わります。まずはそれを体感してもらいたいですね」

さらにココナツオイルやMCTオイルなどの中鎖脂肪酸を多く含む油をコーヒーに混ぜて取るとエネルギー燃焼が持続し、脳神経細胞の働きが活発になるそう。

実際、白澤先生もグルテンが脳に及ぼす影響を知ってから、炭水化物の摂取量を1日60グラム程度まで減らしたという。

「私自身、仕事のパフォーマンスが向上したり、体が軽くなった実感がありますし、睡眠時間が短いときでも眠気に襲われずに脳が冴えています」

脳の健康を考えて、まずはおかず中心の食生活を!