知らないと損。専門家に学ぶ真夏の快眠術!手軽な改善方法で寝苦しい夜とおさらば

教えてくれた人

眠りとお風呂の専門家/小林麻利子さん
SleepLIVE株式会社の代表取締役。生活習慣改善サロン「Flura」主催。公認心理師最新のデータや研究を基に、睡眠と入浴を中心とした生活に合った無理のない実践的な指導が人気を呼び、2,000名以上の悩みを解決。自律神経乱れの改善に精通しており、テレビやラジオ等、多くのメディアで活躍中。

本記事では、眠りの専門家としてさまざまなメディアで活躍する小林麻利子さんに、真夏の快眠方法についてお聞きしました。寝苦しさの原因や改善方法、NG行動など、夏の夜を快適に過ごすコツをたっぷりお届けします!

夏の寝苦しさの原因は?

暑くて寝られない、夏の寝苦しい夜。疲れた体が休まらず、翌日の調子が優れないこともありますよね。まずは、小林さんに寝苦しさの原因をお聞きしました。

「寝苦しさを感じるのは、体の内側の温度 “深部体温” がスムーズに下がらず、暑さをうまくコントロールできていないからです。 寝る前に深部体温がきちんと下がっていかないと、体内に熱がこもった状態になります。

暑いと心臓の交感神経が刺激されて鼓動が早まり、末端の血管がキュッと収縮して熱が外に逃げにくくなります。そうすると、深部体温がうまく下がらず悪循環な状態が続いてしまいます」

「さらに、寝苦しさに繋がる外的な原因として、部屋の温度・湿度が適切でないことが挙げられます。エアコンや扇風機、サーキュレーターの冷風も要注意。

気づかない程度の風でも、冷風が体に当たっていると覚醒頻度が増加します。中途覚醒といって、睡眠中に目が覚めてなかなか寝付けない状態へ。これも夏の眠りを妨げる原因です」

教えていただいた原因を元に、さっそく、真夏の快眠方法をレクチャーしてもらいました。知っておけばすぐ試せるコツばかりですよ。暑いこの時期を良質な睡眠で乗り越えましょう!

4つのコツから学ぶ。真夏の快眠術

1. お風呂と睡眠はワンセット。深部体温を下げる

「体の深部体温を下げるには、必ずお風呂で湯船に浸かること。お風呂で一時的に深部体温を上げれば、そのあと温度が急降下します。末端の血流もよくなり、内側の熱を外に排出しやすくなりますよ。入浴後1~2時間後に就寝するとびっくりするくらいよく眠れるんです。

とくに今のご時世、リモートワークや外出自粛で家にいる時間が増えたと思いますが、運動量が少なければ、体温が日中にあまり上がりません。あまり上がらないと、その分夜も下がらない、つまり体温の高低差が小さくなってしまいます。

良質な睡眠のためには、この体温の高低差を極力大きくすることが大切です。そのため、日中の運動量が少ないと感じたときは、お風呂に浸かり、温熱作用を利用して深部体温の低下を促しましょう」

忙しいときはタイミングを工夫する

「お風呂と睡眠の間が空きすぎるのはNGです。お風呂と睡眠はワンセットなので、寝るタイミングを間違えるとあまり意味がありません。汗をかいていて帰宅後すぐにお風呂に入るときは工夫が必要です。

タイミングよくお風呂に入れない方は、寝る前に足だけをお湯に浸けたり、洗面器にお湯を溜めて手だけを温めたりするのでもOK。

また、シャワー浴になってしまう場合もあると思います。シャワー浴は、湯船に浸かるより体温低下が早いので、汗が引いて涼しいなと思う早めのタイミングでベッドに入るのがいいですよ」

2. 環境を整える。就寝用の冷房設定に

「良質な眠りにおいて大事な温度は26度、湿度は50%台です。もちろん筋肉量や体質などによって誤差はあります。よく28度が冷房の目安と言いますが、睡眠時だと正直暑すぎるんです。ただ、環境問題もあると思うので、昼間は28度にするのが良いと思います。

また、雨でなくても80~90%など高湿度になっている寝室は意外と多いです。適温でも高湿度なら、眠りを妨げる中途覚醒が起こりやすくなることがわかっています。エアコンをつける前に、換気をして室内の湿気を放出しましょう」

風量や風向きも重要

「お風呂上がりは、暑いままだと寝付けないこともあるため、体が冷えない程度にエアコンや扇風機の風で涼んでOK。就寝時に直接体に冷風をあてるのはNGです。冒頭でもお伝えしましたが、覚醒度が増加してしまいます。

風量設定は自動、もしくはおやすみ運転がいいですね。風向きは、体に絶対風が当たらない向きがないか何回も試してみてください。位置が決まったら風向きは自動にせず固定にしましょう。寝るときは風で涼しむのではなく、適切な心地良い温度の空間で過ごすということがとても大切です」

3. 寝る前の15分間が大切。極上のリラックス状態へ

「寝るときは、さぁ今から寝るぞ!というより、いつ寝ても良いという猶予を持つことが大事です。寝る前の15分間は極上のリラックスタイムにして自然に眠りにつきましょう。リラックスして副交感神経を優位にすると、質の良い眠りに。私はこれをうっとり美容と名付けています。

あくびがでたり、目がとろんとなったり、呼吸の早さが緩やかになってきたら、副交感神経が刺激されている証拠。ストレッチをしたり、とっておきのボディークリームで全身ゆったりと塗布したりと、いろいろと試してみて、あなたにとって有効な方法を検討することをおすすめします」

香りでオンオフを切り替える

「とくにオンオフの切替えがむずかしいリモートワークや、育児をされている方は、香りで意識をチェンジさせるのがおすすめです。日中は柑橘系やミント系、寝る前はラベンダーやウッディーな香りなど、香りの変化を利用するといいですよ」

頭皮血流をよくする

「頭皮血流をよくするのもひとつの手。マッサージすることによって、血流を促し脳の深部体温を下げます。ベッドに寝転んで、手で頭を揉みほぐすのも良いですし、頭皮マッサージ用のアイテムを利用するのもOK。マスク疲れには側頭部、スマホやパソコン疲れには首の付け根、後頭部をゴリゴリとほぐしましょう。

リラックス方法は、そのときのライフスタイルや気分によって変わってくると思うので、心の反応を見ながら寝る15分前を上手に活用してください」

4. 光を抑えて入眠の準備を

「光も睡眠にとても影響します。日が落ち、外が暗くなってきた夕食時から、部屋の光や照度を少しずつ落としていき、外の光と連動すると良いでしょう。

寝るタイミングで電気を消すのではなく、寝る準備をし始めているタイミングで暗くします。先程お伝えした、うっとり美容をおこなう就寝15分前は、いつ寝てもいいという猶予時間。その時間からは、真っ暗にしておきましょう。

また、家電の電源ライトが意外と明るい場合があります。目を閉じて顔の前で手をかざし、光の変化があるか確かめてみてください。そのちょっとした光が眠りを邪魔していることも。

私自身もエアコンの電源ライトの部分に、ガムテープを貼って光が漏れないよう対策をしています。カーテンを開けたまま寝るのも、街灯の光がまぶしく感じる場合もあるのでおすすめしません」

食事は寝苦しさに関係ある?

「食事内容も大切ですが、それよりも、食事の時刻によって睡眠の質も変わります。体内時計を味方につけることが大切ですね。消化が終わった状態で入眠するのが良いため、私は寝る4時間前に食べ終わるのをおすすめしています。

ただ、消化には個人差があるので、4時間あけて寝た翌朝にお腹が空いているかどうかで判断してみてください。お腹が空いていればOK、そうでなければ少し時間を早めたり、量を減らしたりして調整しましょう」

飲み物は何が良い?

「寝る前の水分補給は、眠りの質を向上させるという研究報告があります。基本的には水が良いです。

冷水は体温を下げますが、体が冷えすぎてしまうこともあるため、常温の水にしましょう。リラックスしたいときは、ハーブティーを。香りを感じながらゆっくり飲んでホッとすることに意味がありますよ。

寝る前のお酒はもちろん控えたほうが良いですね。分解の過程で交感神経が刺激され、トイレの頻度も高くなるので眠りの質は悪くなります。夕食時に嗜む程度がベストです」

寝る前のNG行動をチェック!

最後に、本編に入りきらなかった睡眠を妨げるNG行動をご紹介します!

・裸に近い状態で寝る
汗や皮脂が体と寝具に付着し、熱を放散しにくくなります。必ずパジャマを着ましょう。

・ベッドメイキングを寝る直前にしない
その行動がリラックスの妨げに。起床時のついでにおこなうのがおすすめです。

・寝る前のスマホは愚問!ゲームが一番ダメ
指先使って、心が動いている時点で脳活動量が上がります。お風呂までに済ませておきましょう。

・翌日のことを寝る前に考えない
準備を含め、お風呂前に全部整理しておくことが大切。お風呂から出たらリラックスモードに切り替えます。

「考え事をしてしまう、寝れないことにストレスを感じてしまうときは、あえて “どうでもいいや~!” という言葉を自分にかけ、考えの上書きをしてみてください。スッと寝やすくなりますよ」

筆者もこれやってたなと思う項目がちらほら……。みなさんも思い当たる項目があれば、この機会に改善してみてくださいね。

睡眠環境を整えて真夏の夜を快適に

「体質や体調に合わせて睡眠環境を整えることが大切です。日中は自分に厳しくても、夜はたっぷり甘やかしてくださいね」と小林さん。

ちょっとした工夫で改善できることばかりなので、ライフスタイルに合わせてぜひ試してみてください。暑い夏の夜、みなさんがぐっすり寝られますように……!

取材・文/内山 栞(macaroni 編集部)

【参考著書】

(2021/08/05参照)