「おいしい」と言わないかみさんに高級米を食べさせてみた【編集部員のひとりごと #10】

記事を書いたのは……

macaroni 編集部 エディトリアルフォトグラファー / 植松富志男
嫁にはまるで頭が上がらず、家での立場は飼い犬(トイプードル/14才)以下。嫁にいびられ、犬には噛まれ、それでも「編集部一の愛妻家」を自称する恐妻家

「おいしい…!」って言わせてやるんだからねっ

誰に?
勝手気ままの傍若無人を地で行くうちのかみさんです。

結婚以来、あれやこれやと食事を作ってきましたが、「おいしい」と言われたことがありません。味はどうかと尋ねても、「悪くはない」とどっちつかずの返答ばかり。一応食べてはくれるんで、別にいいっちゃいいんですけどね……、モヤモヤとしたこの気持ちはなんなのでしょう。フラストレーションを伴うこれは……、そう、敗北感。気まぐれにかみさんが作る料理がやたらと旨いこともあり、くやしさから来る静かな怒りが澱のように積もっていくのを感じています。

そんな日々に終止符を打つべく、金銭的にちょっとがんばってあるものを購入しました。
米です。

【令和2年産】内山農産の「有機JAS認定米コシヒカリ」5kg 5,390円(税込)と、インディヴィマックスの「古代米入り うまい米」840g 1,080円(税込)。

我が家の食卓にかつてのぼったことがないレベルの高級米を食べさせることで、とにかく「おいしい!」と言わせる……そういう作戦です。

消費者に「おかずがいらないっ!!」とまで言わせたという有機栽培の一等米に、自然栽培の玄米+古代米(黒米・赤米・緑米)を適量混ぜ込んで炊き上げる。おそらく、健康的かつ風味豊かでもっちりとしたごはんができるはずです。

うちのかみさんは炭水化物と甘いものに目がないクセにヘルシー思考という面倒な人なのですが、我ながらツボを押さえたセレクトではないでしょうか。うん、これで勝つる!

知る限りの「おいしいごはんを炊くコツ」を試してみた

質の良い米を手に入れたからといって、素材まかせでは安心できません。そこで、仕事を通じて聞き覚えた“おいしいごはんを炊くコツ”を全部やってみました。

米が最初にふれる水にこだわる

乾物である米は、水に浸けた瞬間に吸収できる水分の6割程度を吸い込んでしまうそうです。つまり、最初に米にふれさせる水が大事。浄水器から出した水で良いかと思いましたが、念には念を入れて、冷えたミネラルウォーター(軟水)を使いました。

米が浸るくらい水を入れたら軽くかき混ぜ、10秒程度でこの水を捨てました。ヌカやゴミを米が吸収しないようにするためです。

米とぎは20回

洗米では、米ぬかを落としすぎないよう注意しました。

以前おにぎりのプロに教えてもらった米とぎの回数は20回。手をボールをつかむような形にし、やさしく動かすようにと言われました。ただ、この日は手をケガしていたため、泡立て器を使用。力まず丁寧に20回だけ動かして、米とぎを終えました。

2度ほど水を入れ替えて、水が薄い乳白色になったら浸水へ。

浸水時間は45分。炊飯は鍋+ガスコンロで

ベストな浸水時間は季節によって変わります。寒い季節は長く、暑い季節なら短く。桜の季節を間近にひかえ、比較的暖かい日だったので、浸水時間は45分としました。経験則での判断です。

炊飯道具は熱伝導率の良いアルミ製のクッカーを選びました。アウトドア用品です。土鍋も良いですが、アウトドア用のライスクッカーは機能的で扱いやすく、優秀です。ちなみに、奥の鍋にはごはんと一緒に食べるものが入っています。

火加減は中火一択

これも経験則ですが、ガス火での炊飯に繊細な火加減は必要ないと思っています。基本的にずっと中火。ガスコンロに炊飯モードが搭載されているなら、もちろんそれを使えば良いと思います。

うちのコンロには炊飯モードがついていないため、吹きこぼれるのがイヤなときは、弱中火くらいで炊くか、炊飯用に作られている鍋を使うようにしています。縁が高くなっているものが多く、吹きこぼれを防いでくれるので。

10分蒸らして完成!

蒸気が出なくなり、グツグツという音がしなくなったら火を消して放置。約10分そのままにして蒸らしました。

その後は、炊き上がったごはんを切るようにしゃもじを入れて、全体をほぐしたら炊飯終了。この時点で炊きたてごはんのにおいがキッチンに漂っていたのですが、さすがは一等米、とてもふくよかな香りでした。これは期待できそう!

さあ実食!目的は達成できたのか

ご覧のとおり、ごはんと一緒に食べるために用意したのはカレー。比較的かみさんが好きなメニューを選びました。ごはんをおいしく食べさせてくれる料理という点で、カレー以上を知りません(異論は認めます)。

せっかくの良い米なので、ごはんだけをつまんで食べてみると……、

「うまっ!」

かみさんに「おいしい」と言わせる前に、こちらの声が出てしまいました。ありきたりな感想ですが、こんなごはんはじめてです。 雑味が少なく甘みが豊かで、ごはんだけでももの足りなさを感じません。以前取材した農家の方が「おいしいごはんさえあればおかずはいらない」とおっしゃっていたのですが、なるほど、こういうことか……。

このごはんならば……とかみさんが食べる様子を見守ると、いぶかしむような表情のままスプーンを口に運び……、

そのまま無言で完食しました。

……あれ?
おいしさのあまりスプーンを取り落とすんじゃないかくらい思っていたこちらとしては、完全に想定外です。用事は済んだとばかりに席を立つかみさんに、「え?おいしくなかった?」と声をかけると、「うーん……まあまあ?」と、期待していたトーンからは格段に落ちる反応。

普段の「悪くはない」に比べれば、「まあまあ」と言われただけマシだったのでしょうか……。

というわけで、私にとっては感動するほど美味だったごはんでも、かみさんに「おいしい」と言わせることはできませんでした。残念、無念、完敗です……。

もはや何を作ったら今回の目標を達成できるのか、皆目検討がつきません。もし良い方法をご存知の方がおりましたら、こっそり教えてくださいませんでしょうか。個人的なお願いなので、編集部としてお礼を用意することはできませんが、勝利を得た暁には、心の底から感謝させていただきます。

写真・文/植松富志男(macaroni編集部)