「コチェビ」と呼ばれる北朝鮮のストリートチルドレンたち(資料写真:デイリーNK)

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北朝鮮の金正恩党委員長は昨年の春、コチェビと呼ばれるストリート・チルドレンやホームレスが急増していることを受けて、次のような「心配のお言葉」を発した。

「世界的な観光国家に跳躍しようとする党の意図に反して、全国に老人流浪物乞い者が増えたのは、孝行を第一の美風良俗と考える朝鮮式社会主義の民族的なあるべき姿に反する非道徳的な現象で、外国人や世界の進歩的人民に社会主義のイメージを乱す重大な対外的権威毀損問題だ」

貧しい人々に救いの手を差し伸べようというのではなく、コチェビがうろつくような状況は見てくれが悪いということだ。これ以降、コチェビの施設への収容が強化されたが、コチェビは減るどころかさらに増加しているという。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、本格的な冬が到来した清津(チョンジン)市内の市場では、コチェビの数が急激に増加した。彼らのほとんどは、一度収容された施設から逃げ出した者たちだ。

郊外の羅南(ラナム)区域には、孤児を収容する保育院、愛育院、初等学院、中等学院など、複数の施設が存在する。2014年に金正恩氏が、「親を失った子どもたちの真の親になる」として、新設、拡充させた施設だ。

ところが、まともに食事が提供されず、暖房もなく、寒さと空腹に耐えかね逃げ出してしまうのだ。別の地域の同様の施設では、劣悪な待遇に加え、暴力、性的虐待など様々な問題が起きている。

別の情報筋によると、富潤(プユン)区域には、道内の行くあてのない老人を収容する施設があるが、ここも他の施設同様、食事がまともに提供されないため、老人たちは逃げ出して物乞いをして暮らしている。

(参考記事:「強制学習」で児童が死亡…金正恩氏が主導「孤児政策」の闇

清津市安全部(警察署)は、来年1月の朝鮮労働党第8回大会を控えたこの時期に、通りがコチェビであふれかえることについて、「清津のイメージが悪くなる」との理由を挙げて、再び「浮浪児狩り」に乗り出したが、コチェビたちは逃げ足が速く、取り締まり班が現れるとあっという間に姿を消してしまう。彼らは輸城川(スソンチョン)の川原や橋の下、市場の周辺に穴を掘って身を隠してしまうのだ。

また、捕まえようとしても激しく抵抗する。寒さの中で物乞いをして生き抜いている彼らにとって、安全員(警察官)など恐れるに足らないのかもしれない。

安全部と糾察隊は、川原にあったコチェビの掘っ立て小屋に次から次へと火を放って回っている。そんない「焼き討ち作戦」に市民の間からは「国は飢えに苦しむコチェビの面倒を見るどころか、寒さをしのごうと建てた掘っ立て小屋を燃やすとは何事か」と批判の声が上がっている。

国は、関連施設に一切の予算を出さず、地方政府や施設が自力で運営することを求めている。