志村あきほさん(仮名・30歳)は現在小学生を対象とした塾で、講師のアルバイトをしています。かつては契約社員で事務をしていたのですが、業績の傾きにより退職。今の仕事に就いてから早2年が経過していました。

「楽だから事務を選んだし、次も同じ仕事を見つけようと思ったんですが、転職が難しくって。最近事務職は採用のハードルも上がっているらしいです。だから繋ぎで塾講師のバイトを始めたんですけど、いつの間にか数年経っていましたね」

男性とまともに話せないぐらいウブだった

そんなあきほさんは大学在学中が人生で最も楽しかったのだと言います。

「教職仲間であり、サークルが同じだった相手にずっと恋をしてたんです。Tくんって言うんですけど、見た目はちょっと小柄で可愛らしい感じ。モテモテって感じの男の子ではありませんでしたが、皆から可愛がられるタイプっていうのかな?マスコット的な雰囲気が合って、チョー好きだったんです」

あきほさんが彼を意識し始めたのはサークルに入って半年が経過した頃。飲み会で酔いつぶれた女の子を解放している姿を見て、キュンときてしまったとのこと。

「マジ面倒見が良くて、自分も飲んでいるはずなのに酔っている素振りも見せず……。しかもその女の子、めちゃくちゃ酔っていたのでゲロまみれだったんですね。みんながうわ〜とドン引きする中、率先してサッと手を差し伸べたんですよ。その優しさに惚れました」

Tさんはとりわけ目立つタイプではありませんでしたが、彼の行動はサークル内でも評判になったのだとか。

彼女は恋心を抱きながらも、恋愛に奥手だったためなかなかアプローチができません。友人を介して喋る、頑張って側に寄る程度が精いっぱいで、デートに誘うこともままならなかったそうで……。

「実は高校生の時もまともに恋愛したことがなかったんです。ずっと女子高で、男の子に縁がなかったというか。知り合った相手と2か月付き合った経験しかないから、どうアタックしていいか分からなかったんです」

あきほさんは黒髪のパッツン前髪にセミロングヘア、黒いワンピースを着て少しおとなしそうな雰囲気をしています。

ですがスマホやポーチ、鞄は全てキャラクターもので子供っぽさが否めません。話し方も「超」「マジ」や語尾を伸ばすため、あまり年相応ではないような……。それに同い年の彼を“男の子”と表現するのにも違和感を覚えてしまいました。

「片思いのまま大学2年の終わりくらいになっちゃって、周りの友達からは“いつまでモタモタしているんだ!”と(笑)。あんなに優しい男ならすぐ誰かと結婚しちゃうよ〜なんてせかされてTくんに勢いで告白したんです。でも、フラれちゃいました」

振られた際の一言が、心に火をつけた

焦りを感じたままの告白、もちろん想いは通じませんでした。今まで一度もデートをしたことも、二人きりで話したこともなかったのです。

この出来事があきほさんの心に火をつけてしまいます。

「実はずっと私の気持ち、気づかれていたらしいんです。デートとかは一度もなかったけど、気付けば側にいる的な感じでしたからね(笑)返事は“嬉しいけど、ゴメン”から始まり、私の気持ちは非常に嬉しいと。今後はオレも好きになれるかもしれないから、引き続き友達でいよう!と明るく言われたんですよ。しんみりとした空気は全くなくて……。告白後、彼の対応に感動してますます好きになってしまったんです」

告白して諦めるかと思えば、まさかの逆!抱いていた恋の炎は勢いを増し、「フラれたはずなのに帰り道は幸せいっぱいな気分になった」とあきほさんは続けます。

「だって好きになれるかも、なんて言われたら期待しちゃいません?フラれて号泣することを考えていたらこの結果だったので、良い意味で拍子抜けしましたね」

周りの友人達には次の恋へ行くことを勧められたそうですが、彼女はその制止さえも振り切って彼を想い続けます。告白によって殻が破れたのか、Tさんをデートや食事に誘うことも出来るように。彼も二つ返事で来てくれたため、以前よりも距離がグッと縮まったのでした。

彼はサークルを掛け持ちしていて、もう一つは軽音サークルでギターを担当。距離を縮めたあきほさんはチケットを買ってライブを観に行くこともしていたとか。

「もうこの時は好きで好きでたまらなくって、毎日が幸せでしたよ。付き合ってないけど舞い上がっていて、片思いをしていることがとにかく楽しかったんです」

フラれたことがきっかけで距離が縮まった2人。しかし彼の「好きになれるかも」発言は蜘蛛の糸のような魔力を秘め……〜その2〜へ続きます。

好きな人に思わせぶりな態度をとられたら...冷静に判断できなくなる?