彼氏がすぐにキレる理由…怒りっぽい男性の心理とは?【ひとみしょうの男子学入門】

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数々のWEBメディアで恋愛コラムを執筆し、恋に悩める女性たちを救済してきた恋愛マイスター・ひとみしょう。長年の経験から培った独自の恋愛論で男心を解説します! 出会い、交際、別れ、結婚…などにまつわる“男の本音”をこっそり教えましょう。

■恋愛マイスター・ひとみしょうの男子学入門111



今回は、怒りっぽい男性はなぜ怒るのかについて、見ていきたいと思います。

男性に限らず、女性の中にもキレやすい人はいますね。ちょっと理不尽なことを言われたらすぐ怒る人。それがダメだと言っているのではないですよ。いいとか悪いではなく、人はなぜ怒るのかという「人の深部」に一緒に迫ってみましょう。

■キレやすい人は絶望している


怒りっぽい人とは、自分に絶望している人です。どうせわたしはこの仕事をするしかない。この安い給料で働くしかない。「理想の自分」になんかなれっこない。今日も明日も来年もずっと、このしみったれた町でしみったれた暮らしをするしかない――たとえばこんなふうに思っている人は、自分に絶望しています。キレやすいです。

ではなぜ、自分に絶望したら、人はキレやすくなるのでしょうか?その答えは「自分の正当性を周囲の人にわかってもらいたいから」です。

■怒りっぽい人はなぜ怒る?


怒りっぽい人は、じつは「本当の自分はこうじゃなくて、もっと他にある」と思っています。たとえば、安月給でつまらない仕事をしている(と自己認識している)現実の自分ではなく「語学学校に2年ほど通って、アメリカに留学するのが<本当の>自分だ」という思いを持っています。

がしかし、留学の目標なんて、周囲の人にはわからないですよね。「ぼくは(わたしは)留学する夢を持っています」と言わない限り誰にもわからないのです。

でも、怒りっぽい人はそういう夢を他人に語りません。精神的に少し引きこもりの傾向にあるからです。だから彼(彼女)は怒ります。「本当の自分はこんなもんじゃないんだ!立派な夢を持っているんだ!立派なことを成し遂げたいのだ!」という思いが、その怒りの背景にあります。

怒ることで自分の「正しさ」や「本当の自分が持つ立派さ」を、周囲の人にアピールするために怒ります。一般化して言うと、怒りとは、現実の自分と「本当の自分=理想の自分」との乖離が大きければ大きいほど生まれやすくなるのです。

■怒りっぽい人とどう付き合う?


さて、では、怒りっぽい人とどう付き合えばいいのでしょうか?怒りっぽい彼氏とどう付き合う?この答えは二択です。

一つは、自分の人生に自ら絶望している彼の「すべて」を受け止めてあげること。もう一つの選択肢は、怒りっぽい彼氏とは別れるというもの。このいずれかしかありません。

なぜなら、自分に絶望している人は、自分のすべてを受け入れてくれる人を捜し求めているから。DV彼氏とかDV夫とは、彼女や妻に、自分の「すべて」を受け入れてもらいたいと思っている人です。

たとえば、お給料が少ないと彼女や妻に言われた、だから暴力を振るった、という男性。彼は、彼女や奥さんに「どんなに頑張っても少ないお給料しか稼げない現実の自分」と、「本当は立派な会社に転職してバリバリ働いて今の倍くらいのお給料をとることを目標にしている自分」の両方の自分を理解して受け入れてもらいたいと思っている(でも受け入れてもらえなかったから暴力を振るった)ということなのです。

念のため、言っておきますが、受け入れなかった女性が悪いという話ではないですよ。冒頭に書いたように、いい悪いの話ではありません(そもそも、恋愛を善悪で語っても、それは感想文にはなっても説明文にはならないのです)。

■怒りっぽい彼氏に効くひと言


女性は男性に比べて、精神的にわりと大人ですから、「理想の自分とやらがあるのであれば、それを言葉にして説明してくれたらいいのに」と思うでしょう。「現実と理想との乖離が大きいのであれば、問題を細分化して、小さい目標を一つずつクリアしていけばいいじゃない」と思うでしょう。

でも、彼はそうしません。というか、できません。なぜなら彼は絶望していて、つねに「別の自分」になりたいと焦っているからです。彼は完全に「息があがっている」のです。

そういう場合はどうするのか、についてもここで触れたいのですが、そろそろ紙幅を超えてしまうので、最後にひとつだけ。

「あなたはなんにでもなれるし、どこにでも行けるよ」このひと言を、絶望者は聞きたいと思っています。それがたとえきれいごとであっても、それを聞きたいのです。なぜなら彼は、「自分は新しい自分に生まれ変われる」と信じたいと切実に思っているからです。

※参考 キルケゴール・S『死に至る病』鈴木祐丞訳(講談社)2017

ライタープロフィール
ひとみしょう
作家/『ひとみしょうの男子学入門』(ココロニプロロ)『今夜はちょっと、恋の話をしよう』(ハウコレ)『ひとみしょうのお悩み解決』『ひとみしょうの余談ですみません』(共にGrapps)ほか好評連載中。コラムの受賞歴多数(すべて小学館『Menjoy!』編集部より)。恋愛&不妊治療をテーマとした中編小説『鈴虫』好評発売中(Amazon独占販売)。