Web面接でも採用担当者をがっかりさせる発言はないようにしたい(写真:jessie/PIXTA)

コロナ禍によって2021年卒就活は大変動した。例年なら連休明けに一段落している学生が多いが、今年は5月中旬を迎えた現在でもほとんど終わっていない。

また、企業と学生のリアルな接触の場が激減した。昨年までWeb説明会やWeb面接を実施する企業は話題になったが少数派だった。ところが、今年は否応なくWeb化が進行している。


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リアル面接とWeb面接は大きく違う。リアル面接では入室、着席などもチェックされるが、Web面接では最初から対面しているから、動作はあまり問題にならない。動作が問題にならない反面、内容の吟味はより厳しくなるだろう。どんな学生が落とされやすいのか?

HR総研が採用担当者を対象に昨年6月に実施した「2020年&2021年新卒採用動向調査」の中から、「評価が低い学生の面接態度・回答内容」を紹介し、採用担当者がうんざりする言動を探ってみたい。

関心があるのは「仕事以外」

初対面の学生と話すのは、人事担当にとってもけっこう疲れる作業である。だが、報われることもある。若者の前向きな姿勢は大人を期待させ、素敵な言葉を聞いて、意外な発見をするとうれしくなる。

しかし、面接経験者の話を聞くと、うんざりすることも多いらしい。うんざりする理由はたくさんあるが、最も嫌われるのは、「関心のあることは仕事以外」という学生だ。社会貢献やワークライフバランスについてまくし立てる学生はかなり多い。

環境問題、弱者救済、働き方改革。いずれも学生は「良いこと」だと信じ込んでいる。しかし、面接官が評価するのは、仕事の仲間としての適性だ。面接という場の意味を理解せずに、大きな夢を無思慮に話す学生に下されるのはマイナス評価だ。

「社会貢献的な志望動機のみの学生。○○以外はできない、と言ってしまう学生。テンプレどおりの意思表示、質問しかしない学生」(1001人以上・メーカー)

「ワークライフバランスばかり気にして、仕事内容を理解していない」(1001人以上・情報・通信)

「○○をやりたい」という学生のなかには、それ以外はやりたくないと言う者がいる。組織や社会は、いろんな役割の人間によって成立していることを理解していないのだ。

ワークライフバランスでも同じことが言える。働き方改革を論じ、「残業はしません」と明言する学生もいる。こういう学生を採用すると職場でトラブルが起きる。トラブルの種になる学生をわざわざ採用する人事はいない。

就活でまずやるべきことは「自己分析」だ。誰でも「やりたい」という希望や、「ほしい」という願望、「なりたい」という意欲を持っているだろう。だが、そんな自己実現の夢を持っているからと言っても、そのままでは単なる妄想である。妄想に根拠を与えるのが自己分析だ。

「好きこそ物の上手なれ」ということわざがある。好きになることが上達の秘訣だ、という意味だ。しかし、すべてのことわざには例外がある。絵が好きだが、下手な人がいる。走るのは速いが、熱中できないタイプの人間もいる。そういう自分の得手不得手、好き嫌いを理解するのが「自己分析」だ。自己分析に基づく志望動機はぶれない。

実際には、ふらついたままの状態で面接に臨む学生もいる。こういう弱さは話しているとすぐにあらわになる。このようなミスを避けるためにキャリアセンターがある。コロナ禍によって構内立ち入りが制限されている大学が多いだろうが、メールやオンラインで相談を受け付けているキャリアセンターは多い。面接の前にぜひ相談してほしい。

「就労観が明確でない(どんな仕事、キャリアを築きたいかのイメージがない)。企業、仕事の理解が低い。複数内定取得後の企業選択の基準が、人や福利厚生などだけで、仕事軸ではない」(1001人以上・商社・流通)

「面接を受けに来る下準備が圧倒的に不足している学生。試しに受けるというのはある程度仕方ないにせよ、基本的な会社情報すら頭に入っていない学生には怒りを覚える」(300人以下・商社・流通)

やる気、覇気、意欲がない

昨今のキャリアセンターは至れり尽くせりの就職支援活動をしている。疑似面接も行っているので学生は面接に慣れていてもおかしくないが、「学生に元気がない」と嘆く面接官は多い。いろんな言葉がある。やる気、覇気、熱意、意欲、元気がなく、おとなしい。落とされる学生はこういう言葉で形容されている。

こういうマイナス評価を避けるために話法を身に付けよう。営業の基本トークに「応酬話法」がある。Webで検索すれば解説を読める。話し方の理論を知ることができる。理論を読むだけでは話せないから、キャリアセンターを利用し、あるいは友だちに協力してもらって練習するといい。オンライン面接の練習にもなるだろう。

「やる気が感じられない。人の話を聞いていない」(1001人以上・運輸)

「熱意に欠ける」(301〜1000人・メーカー)

「おとなしく、反応、喜怒哀楽がない」(301〜1000人・サービス)

人生にはステージがある。保育園や幼稚園、小中高を経て大学生になり、卒業して社会人になる。ステージごとに大きな変化があるが、対人関係の本質が変わるのは社会人になってからだ。大学生までは家庭と友人関係の延長だ。気の知れた人間集団だ。

ところが、社会に出ると人間関係は名刺の交換から始まる。他人同士が知り合って関係を作っていくのだ。他人同士のコミュニケーションを円滑にするために、身だしなみ、礼儀、マナーがある。それらをわきまえていない者は大人ではない。

就活までスーツを着たことがない、革靴を履いたことがないという学生も多いだろう。しかし、服装を整えてはじめて「わたしは御社を志望する学生」に見えるのだ。

「外見・身だしなみ・礼儀・マナーがなっていない学生、働くという事を真剣に考えていない学生」(1001人以上・メーカー)

「身なりを整えられない学生(襟がスーツから出ている、ネクタイが緩い、など)」(301〜1000人・メーカー)

「身だしなみ(清潔感)などが伴っていない学生」(301〜1000人・商社・流通)

なんのための面接なのか

なんのために面接の場に臨んでいるのかがわからない学生もいる。面接官は、自主性、積極性、主体性がなく自立していないと形容する。こういう学生は見かけだけでなく、言葉も不明瞭だ。

「自主性がない、積極性が感じられない」(1001人以上・メーカー)

「質問の意図を理解した回答ができない、説明や回答がわかりづらい」(1001人以上・メーカー)

「コミュニケーションが成立しない」という不満も多い。学生は「用意してきた台本」を読むだけで、面接官との質疑応答が成立しないようだ。あらかじめ決められた会話を覚えればうまく行くと勘違いしているらしい。「覚えてきたことをそのまま話す」「会話がかみ合わない」という批判もある。たぶん面接官の質問を聞き取る能力に欠けているのだろう。

「コミュニケーションが成立しない、用意した台本を読む、自己分析不足」(1001人以上・サービス)

「視線を合わせられない。会話のキャッチボールができていない。参考書通りの回答しかしない」(300人以下・メーカー)

話のできない学生への評価が低いのは当然だが、話しすぎるのはもっと問題だ。たくさん話すことで良い印象を面接官に植え付けようという作戦だろうが、しゃべりすぎるとメッキが剥がれる。ウソや誇張表現から素の姿が透けて見えてしまう。

面接官が評価するのは、飾らず、素直に話す学生だ。

「自分を言葉で飾ろうとする学生」(300人以下・メーカー)

「知ったかぶり」(300人以下・情報・通信)

笑顔がない学生も

「目は口ほどにものを言う」という言葉がある。口でたくみに誤魔化しても、目に本心が表れるという意味だ。確かにその通り。話しているときに相手の目線に注意すると、相手の感情の揺れがわかる。


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面接官も学生の目を見ている。目がキョロキョロして落ち着かない学生の多くは笑顔がない。声は小さく、言っていることが不明瞭だ。オンライン面接でも目と笑顔は大事だ。自信がないと目があちこちを見てしまうが、そんなときに有効なのは、深呼吸したり唾を飲んだり、いったん視線を上に向けてから相手の目を見るようにすることだ。

早口は禁物。大事なのはゆっくり話すことだ。「ご質問は○○ですか」と質問内容を確認してもいいだろう。

「目が泳いでいる。声が小さい、元気がない。言いたい事を簡潔にまとめられない」(301〜1000人・メーカー)

「笑顔がない(緊張でやむをえなくても、1度も笑顔が出ない)、ハキハキさがない」(301〜1000人・商社・流通)

オンライン面接が増えており、一時流行した圧迫面接は減っているようだ。リアル面接よりもオンライン面接のほうが練習しやすいと思う。健闘を祈りたい。