主要鉄道会社の中で、定期券の割引率がもっとも高いのはどこか(写真:BASICO/PIXTA)

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため在宅勤務に切り替えた人の中には、通勤定期券をまったく使っていないという人もいるだろう。いよいよゴールデンウィークの到来だが、その期間中もそのまま放置しておくべきか、それともいったん払い戻しをして、再び電車通勤をするようになってから買い替えるべきか悩みどころだ。

こうした定期券に関する大手鉄道会社の取り組みについては4月15日付記事(「通勤定期、出勤自粛で『払い戻しラッシュ』に?」)を参照いただきたいが、そもそも、定期券は切符を1枚1枚買うのと比べてどのくらい割安なのだろうか。

通勤定期、割引率1位は名鉄

国土交通省鉄道局監修の下、運輸総合研究所が毎年発行する『数字で見る鉄道』には鉄道各事業者の運賃に関するさまざまな情報が掲載されている。その中には定期運賃(1カ月)の平均割引率に関する情報も含まれる。

そこで、大手私鉄および地下鉄の定期券について、平均割引率をランキングしてみた。数字は2019年10月1日時点のものである。まず、通勤定期から。割引率が最も高いのは名古屋鉄道で45.1%だった。1カ月の間すべて普通運賃で移動するのと比べると約半額となる。

2位は小田急電鉄の43.4%。ただ、約30年前の1990年には割引率が50%を超え、割引率は断トツのナンバーワンだった。3位は近畿日本鉄道と京浜急行電鉄が42.2%で並び、5位は東武鉄道の39.7%という順になった。

下位を見ると、ワースト1位は札幌市営地下鉄の30.0%。その後も京都市営地下鉄、福岡市営地下鉄、神戸市営地下鉄、名古屋市営地下鉄と、地下鉄勢がワーストを占める。

一般的には1カ月を30日として土日は休むという前提なら1カ月に22日利用することになる。1回の運賃を200円とすると、22日分の往復普通運賃は8800円。30日分の往復普通運賃は1万2000円なので、割引率が26.6%以上なら定期券を買うほうが安いということになる。

その意味では、札幌市営地下鉄の割引率30%は、定期券を買うほうがお得という点でぎりぎりに近い水準ということができる。

年末年始やゴールデンウィークなど通勤日数が少ない時期は、人によっては定期券を購入せず回数券のほうが割安というケースも生じる。通勤定期が会社から支給されるサラリーマンと違い、アルバイトなど自分で定期券を購入する人の中には、その月の勤務日数が何日あるかによって定期券と回数券を使い分けている人もいるようだ。多くの上場鉄道会社は月次営業概況などで輸送人員に占める定期券客の比率を発表しているが、「休日数の違いによって、定期券客の比率が上下することもある」と、ある鉄道会社の担当者は話す。

通学定期の割引率トップは?

続いて、通学定期の割引率ランキング。1位は通勤定期と同じく名鉄で82.2%。月に5〜6回学校に行けば元が取れる水準だ。2位は西日本鉄道の81.6%。3位は京急と近鉄が80.9%で並び、5位は西武鉄道の80.8%という結果になった。通学定期の上位組の顔ぶれは通勤定期とほぼ同じだ。

通学定期のワースト組の顔ぶれも通勤定期とほぼ同じ。ワースト1位は仙台市営地下鉄の50.4%。以下、京都市営地下鉄51.3%、福岡市営地下鉄59.7%、神戸市営地下鉄と札幌市営地下鉄の60.0%と続く。通勤定期は割引率の上位と下位の格差は15.1ポイントだったが、通学定期における同格差は31.8ポイントに広がった。

1990年当時(6月1日時点)と比べて、定期券の割引率がどれだけ変化したかも調べてみた。通勤定期券で変化率が最も大きいのは東武鉄道のマイナス11.2ポイント。次いで阪神電鉄マイナス11.0ポイント、小田急マイナス10.9ポイントと続く。

割引率の縮小だけでなく消費税導入などに伴う運賃値上げも何度か行われており、金額の変化度合いはさらに大きいことになる。多くの鉄道事業者が通勤定期券の割引率を縮小する中で、割引率が低い京都市営地下鉄、仙台市営地下鉄、名古屋市営地下鉄は逆に割引率を拡大している。

通学定期券割引率がもっとも縮小したのは東京都営地下鉄でマイナス4.3ポイント、次いで京王電鉄マイナス4.0ポイント、東京メトロのマイナス2.8ポイントという結果となった。逆に横浜市営地下鉄、名古屋市営地下鉄、京都市営地下鉄、京成電鉄は割引率を拡大している。

普段何気なく使っている定期券も、調べてみるとさまざまな事実が浮かび上がってくる。今年のゴールデンウィークは多くの人が自宅で過ごすことになりそうだが、自宅にいても多くの発見ができるかもしれない。