前頭11枚目の石浦が決めた「三所攻め」は、舞の海氏以来となる26年ぶりの珍手だった

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大相撲九州場所(福岡国際センター)が2019年11月17日に中日を迎え、幕内の取り組みで26年ぶりの珍しい決まり手が出た。前頭11枚目・石浦―同14枚目・錦木の一番。175センチ、110キロと小柄な石浦に対し、錦木は185センチ、180キロの巨漢力士である。ここで飛び出したのが石浦の「三所攻め」だった。

当初の決まり手は「外掛け」だったが...

体重差70キロもある両力士の取り組みで、小兵の石浦は、大きな相手の懐(ふところ)に飛び込んで胸に頭を付け、自身の左足を錦木の右足に掛ける「外掛け」を見せた。と、ここまでは比較的見られる形なのだが、石浦はさらに自分の右手を相手の左足に掛ける「渡し込み」に出た。「頭+外掛け+渡し込み=三所攻め」で相手を土俵下に押し倒した。

しかし、場内のアナウンスは「外掛け」を取った。NHK実況の藤井康生アナウンサーも、解説を務めた元小結の舞の海秀平氏もその場はそのまま流して続けた。しかし、約30分が経ったころ、決まり手が「三所攻め」に変更されたのだ。

実は、この珍手を26年前に決めたのが、当時「技のデパート」と称された舞の海だった。1993年秋場所初日、巴富士戦で同じく「頭を付け、足を掛け、手で渡し込む」という大技を見せたのだ。これに藤井アナが「あの舞の海さん以来26年ぶりですよ」と言うと、

舞の海氏は、

「あ、そうなんですか?」

と少し驚いた様子だった。藤井アナは続けて「あれで相撲に『三所攻め』っていう技があるんだ...ということを知ったファンも多かったのでは?」と振られた舞の海氏は、

「あ〜、それは(当時)よく言われましたね」

と少し、照れ笑いを浮かべた。

引退時には「相撲は体の大きい、小さいは関係ない」と発言

そんな舞の海氏は、新弟子検査を受ける時、身長が足りず、頭皮と頭蓋骨の間にシリコンを埋め込んで身長計に乗った...という逸話は有名だ。日本相撲協会も、これを機に「身長が少し足らなくても入門を認めては?」という動きになっていったという経緯もある。

舞の海氏は20年前の九州場所千秋楽で現役を引退。角界に残るという選択をせず、相撲解説やスポーツキャスターとして活動する道を選んだ。

舞の海氏は引退時、こう話していた。

「相撲は体の大きい、小さいではなくて、小さい人も相撲界に入ってチャレンジしてくれればいいな...と思います」

石浦と26年前の舞の海氏が、重なって見えた。

(J-CASTニュース編集部 山田大介)