<林鄭離職なら市民は歓迎も、体制寄りの次期長官が「第2の林鄭」と化す可能性は高い>

英フィナンシャル・タイムズ紙は10月末、中国政府が香港特別行政区の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官の更迭を検討していると報じた。2022年までの任期満了を待たず、来年3月までに「暫定」長官を任命するという。

事実なら中国共産党の狙いは明らかだ。長引くデモによる混乱を収拾するため、林鄭をスケープゴートにするつもりなのだろう。しかし香港の行政長官は名目上、政財界の代表から成る選挙委員会が選任する。この手続きを中央政府が覆せば、「1国2制度」はますます看板倒れになる。

暫定長官候補には体制寄りの人物が検討されているという。長年公職で香港に尽くしてきたか、デモ参加者の若者に同情的な人物でなければ、事態を打開できる見込みは薄いが、それは望めそうにない。

警察と市民、あるいは香港と本土との間の信頼はかつてなく損なわれている。この状況で不人気の林鄭の離職は香港で歓迎されるだろう。だが課題は山積したままだ。

From Foreign Policy Magazine

<2019年11月5日号掲載>

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