matumaru1028b.jpg

写真拡大

<英国で最初の発電所が稼働を始めた1882年以来初めて、再生可能エネルギーによる発電が化石燃料による発電を上回った......>

40%が再生可能エネルギーによる発電

英国における発電史上初めて、再生可能エネルギーを利用した発電量が、化石燃料を使った発電量を上回ったことがこのほど明らかになった。気象科学、気象政策、エネルギー政策に関する情報を発信する英国のウェブサイト、カーボン・ブリーフが明らかにした。

今年の第3四半期(7月、8月、9月)、風力、ソーラーパネル、バイオマス、水力など「再生可能エネルギー」による発電は、29.5テラワット時に達した。同時期、化石燃料による発電量は29.1テラワット時だった。カーボン・ブリーフは、英国で最初の発電所が稼働を始めた1882年以来初めて、再生可能エネルギーによる発電が化石燃料による発電を上回ったことになるとしている。

第3四半期の全発電量に占める割合を種類別に見ると、石炭、石油、ガスによるものが約39%(内訳はガス38%、石炭と石油の合計が1%未満)だった。一方で再生可能エネルギーは、約40%(内訳は風力20%、バイオマス12%、太陽光6%など)に達した。残りの約20%のうち最大は原子力発電で、全体の19%を占めたという。

世界最大の洋上風力発電所などが後押し

再生可能エネルギーの発電量が増えた理由のひとつに、複数の発電施設が2019年に稼働を開始したことが挙げられる。ヨークシャー沖に位置するホーンシー・プロジェクト・ワンは、今年の2月に電力の供給を開始。BBCによるとこの発電所は、2020年に完成してフル稼働となった場合、世界最大のオフショア風力発電所となる。

また今年7月には、スコットランド最大のオフショア発電所となるベアトリス・オフショア風力発電所が稼働を開始した。

一方で英国政府は、炭素捕捉技術を採用していない石炭火力発電所は2025年までにすべて閉鎖する方針を打ち出している(ロイター)。2020年3月には英国全土で稼働している石炭火力発電所は4カ所のみとなるため、カーボン・ブリーフは、2025年の目標よりもかなり速いペースで閉鎖が進んでいるとしている。

ただし、2019年を通年で見た場合に、再生可能エネルギーが化石燃料を上回る可能性は低いとの見通しをカーボン・ブリーフは明らかにしている。

2050年の目標達成は見込み薄

英ガーディアン紙によると、エネルギー担当閣外相のクワシ・クワーテング氏は、再生可能エネルギーの発電量が化石燃料を上回ったことは、2050年までに英国の気候変動への寄与を終わらせるという目標に向けたマイルストーンに沿っているとの見解を示した。

英国は、2050年までにカーボンニュートラル(二酸化炭素の排出を実質的にゼロとする)になることを法的義務としている。「英国は1990年以来、経済を3分の2成長させた一方で、炭素排出量をすでに40%削減した」とクワーテング閣外相は自信をのぞかせた。

しかしカーボン・ブリーフは、2050年までにカーボンニュートラルにするという目標を英国が達成できる可能性は低いとの考えを示している。電力セクターでの進展をもってしても、暖房や運輸からの炭素排出を抑えない限り、達成できないという。

なお、第3四半期に12%を占めたバイオマスに関しては、ゼロカーボン(炭素排出量ゼロ)にはならない。場合によっては化石燃料よりも二酸化炭素の排出量が増えるため、英独立行政機関である気候変動委員会(CCC)は、大規模なバイオマス発電所からは「離れる」べきだとの見解を示しているという。

松丸さとみ