具智元(日本ラグビーフットボール協会HPより)

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「ハリー・ポッター」の英国人著者が「こんな話は書けない」と呟いた、イングランドラグビーW杯での奇跡から4年。奇跡には続きがあった。日本代表が静岡で優勝候補アイルランドを撃破した一戦は、「静岡の衝撃」と評されることに。その代表のスクラムで最前線を張るのが韓国出身の具智元(グジウォン)(25)。本来なら英雄扱いのはずだが……母国での立場とは?

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 なにしろW杯開幕の9月20日にはアイルランドは世界ランク1位で、日本戦にも考え得るベストメンバーで臨み、これを19対12で打ち破ったのだから、世界は上を下への大騒ぎ。事実、

〈ラグビーW杯史上最大の番狂わせの一つ〉(BBC)

〈彼らがまたやった〉(NZヘラルド)

 など、センセーショナルな報道が続いた。そんな中、この「静岡の衝撃」にほぼ沈黙する国がある。

具智元(日本ラグビーフットボール協会HPより)

 他ならぬ韓国だ。

 試合の最高殊勲選手にこそ選ばれなかったものの、25歳の伸び盛りは、ゲームのターニング・ポイントとなるプレーの担い手のひとりとなった。具は、1980年代に韓国代表で同じポジションを務めた父親の薫陶を受けた。

 中学時代からニュージーランドへラグビー留学。大分の市立中、日本文理大附属高、拓殖大、ホンダと渡り歩き、2017年から日本代表入りしている。

「11年、サッカーのアジアカップ決勝で日本代表の李忠成が美しい決勝ゴールを決めました。その時に韓国では“日本優勝は自分たちの手柄だ”などと散々報じられたので、今回も“韓国人の具智元がいるから日本は勝利した”というような記事が出てもおかしくなかったのですが。そんな記事は確認する限り1本くらいでしたね」

 と首を傾げるのは現地特派員。

好意的な記事はタブー

 その理由のひとつは、韓国でのラグビー人気のなさ。目下、世界ランクは31位(日本は8位)=9月29日現在=で、9回を数えるW杯には一度も出場できず、また日本にも02年以降、勝利したことがない。

「ラグビーは紳士のスポーツで、礼儀正しく、お互いを尊重し合いながらプレーし、ルールは厳格です。韓国人のサッカーは“テコンドー・サッカー”と呼ばれるほどにラフプレーが多い。そんな国民性ですからラグビーとは水と油なのです」

 とは、『悪韓論』著者で評論家の室谷克実氏。

「冷え込み続ける日韓関係の中で、日本に好意的な記事はタブーになっている。具選手が活躍したと報じるなら、日本の勝利について触れないわけにはいかない。となると『親日』と批判が来る。だから、“英国軍チームが靖国神社に行った”“サムスンの副会長がラグビーの試合を観戦した”とか、日本代表の活躍とは関係ない話を書くしかない。早々に負けていたら“日本は主催国なのに弱い”と批判していたと思います」

 選んだスポーツが悪かったのか、タイミングか、あまりに見事な金星を挙げたからか、あるいはその全部か。サッカーの李の場合と違って、英雄になり損ねた感のある具。果たした偉業の割に母国では立場がないようなのだ。

「週刊新潮」2019年10月10日号 掲載