東京都江東区にある日本通運の大規模物流センター(提供:日本通運)


 日本通運(日通)は2019年度中に、AIやロボットに強いスタートアップ企業のRapyuta Robotics と共同でAI(人工知能)を活用した自走式ロボットを物流センターに本格導入する。深刻になりつつある人手不足への対策として、当初10台ほどのロボットを稼働させ、商品のピッキング作業の省人化・省力化を図る。

 日通は6月に東京都内の物流センターで実証実験を行い、ピッキングに要する時間を20%程度減らせることを確認した。作業員とロボットが協働するための業務フローの微調整やロボット自体の改良を加え、今年度中に複数の物流センターで改めて実証実験を実施。そのうえで本格展開に乗り出す。

 自走式ロボットと、ロボットを管理・制御したりするクラウドシステムはRapyuta Roboticsが開発した。

「既存の倉庫のレイアウトやベルトコンベアなど設備を変更せずに導入できる」。ロジスティクス開発部の糸賀吉則課長は、自走式ロボットを利用した新たなピッキングシステムの利点をこう説明する(写真1)。

写真1 日本通運の糸賀吉則ロジスティクス開発部課長


 Rapyuta Roboticsのクラウドシステムと、既存の業務システムとのデータ連携機能を用意すれば、商品の入荷・在庫データや出荷指示データを管理するWMS(倉庫管理システム)の改修も必要ない。自走式ロボットを制御するクラウドシステムに、物流センター内のレイアウトや棚番号をあらかじめ登録しておけば、WMSの出荷指示データを基にクラウド側で複数台のロボットにピッキング作業を振り分ける。

 自走式ロボットは既設の無線LAN経由で出荷指示データを受信すると、ピッキング対象商品が保管してある棚まで移動して待機する。従業員が待機中のロボットを見つけて棚から商品を取り出しロボットに載せると、ロボットは次にピッキングする商品の保管棚まで移動。すべての商品のピッキングを終えると商品の検品・梱包エリアに戻る。

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未経験者でもピッキング作業時間を20%程度削減

 都内の物流センターで実施した実証実験では、4台の自走式ロボットを同時に稼働させた。具体的には、30列ほどの棚を配置した約200坪のエリアを大きく2分割し、2人の作業員がそれぞれの担当エリアに到着したロボットのモニターに表示された商品画像を確認し、所定の商品をピッキングした(写真2)。

写真2 日本通運が6月に実施した実証実験の様子(提供:日本通運)


 商品をロボットに載せる際、作業員はモニターの下部に取り付けた小型スキャナーで商品コードを読み取り出荷指示データと照合する。こうすることで誤った商品のピッキングを防ぐ。実証実験のピッキング作業は当該物流センターでの作業経験がない作業員が担当したが、誤りが起こらなかっただけでなく、現状より作業時間を20%ほど削減できた。現在は紙の出荷指示書を参照しながらカートを手押ししてピッキングしている。

 ただし、いくつか細かい課題も浮かび上がった。一つは作業員の移動距離である。自走式ロボットの導入によって作業員は検品・梱包エリアと棚との間を行き来する必要がなくなるが、その代わり棚の前で待機しているロボットを探すために担当エリア内をくまなく歩いて回る必要がある。その移動にかかった歩数を計測したところ、現状の方法よりいくらか多くなっていた。「ロボットとの協働作業に慣れていないこともあり、いったん確認した棚にまた戻ってロボットがいないかを確かめるなどの作業をしていたことも要因」とロジスティクス開発部の新藤克典係長は話す(写真3)

写真3 日本通運の新藤克典ロジスティクス開発部係長


 モニターの表示内容にも改善の余地が見つかった。自走式ロボットは1台あたり4件の出荷指示を同時に処理する。そのため4個のケースを実装しており、ケースごとに出荷指示データが関連付けられている。ピッキングの際に4つのうちどのケースに商品を収容するかの指示がモニターに出るのだが、表示時間が短く商品コードを読み取った際に消えてしまうため、誤ったケースに商品を載せてしまう可能性があった。

複数台のロボットによる自律協調作業も視野に

 これらの課題を踏まえ日通は今年度中に、実証実験の第2弾を複数の物流センターで行う。その際には、自走式ロボットが待機していることを知らせるライトを棚に設置したり、棚に到着したロボットが音を発してピッキングを促したりする仕組みを整え、作業員が物流センター内を必要以上に歩き回らなくて済むようにする。

 ロボット本体の改良も進める。前回の実証実験で使用したロボットは可搬重量が20kg、1回の充電で可能な稼働時間は2.5時間だった。これを可搬重量40kgに倍増させるとともに、稼働時間を8時間に延ばす。さらに、同時に稼働させるロボットの台数も増やして省力化の効果を検証する。

 また、複数台のロボットが自律協調して稼働できるよう、ロボットの制御システムを改良することも検討している。万が一、ピッキング作業の途中で充電容量が低下しても、未了の出荷指示データを別のロボットに引き継がせることで作業の停滞を回避する。

 こうしたロボット機能の改修やピッキング作業のフローの見直しなどによって人とロボットの協働体制を確立し、日通は将来的に30~40%程度の総作業時間の削減を目指す。

筆者:栗原 雅