元日本代表の箕内拓郎氏【写真:編集部】

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アイルランド戦に向けて立った目処「ディフェンスは強度を上げるだけ」

 ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会が20日に開幕し、日本は開幕戦でロシアに30-10と快勝し、幸先のいいスタートを切った。前半こそノックオンなどのミスが続いたが、終わってみればWTB松島幸太朗が日本代表選手としては初のハットトリックを決め、チームとしても4トライを奪ってボーナスポイントを獲得。勝ち点5を得て初戦を終えた。

 自国開催で大きな期待と注目が集まる中、白星発進した日本の戦いを、元日本代表の箕内拓郎氏はどう見たのか。2003年、2007年とW杯2大会連続でキャプテンとしてチームを率いた男が「THE ANSWER」に語った。

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 ワールドカップ開幕戦、しかも自国開催。計り知れない期待やプレッシャーを感じる中で、日本代表は普段通りのプレーができるかがポイントになるだろうな、と思っていました。立ち上がりに少しミスが続きましたが、あれも予想の範囲内。ロシアが思ったよりプレッシャーをかけてきたので、意外と引きずった印象はありましたが、収穫も課題も見えた試合だったと思います。

 この試合で安定していたのは、ディフェンスですね。ロシアに先制トライを許しましたが、彼らのアタックの形から取られたトライではなかった。日本はしっかりプレッシャーをかけ続け、ブレることはありませんでした。次のアイルランド戦に向けても、ディフェンスは目処が立っているので、あとは強度を上げるだけですね。

 3トライを奪った松島(幸太朗)の活躍は大したものです。松島が生きたのは、両CTBの中村(亮土)とラファエレ(・ティモシー)の存在が大きいですね。2人がオフロードパスなどでしっかりボールをつなぎ、ロシアのディフェンスを2人、3人と引きつけられたから、松島が走るスペースが生まれた。チームとして取り組んできた形が、しっかり出せていたと思います。

らしさが出せなかったSO田村だが、メンタルの強さに期待「次戦は田村らしいプレーを」

 その一方、少し気になったのがアタックがちぐはぐになってしまった部分です。キックの使い方を見ても、高く上げたいのか、距離を稼ぎたいのか、ボールを再獲得したいのか、チームとしての意思統一が少しズレていたように思います。ボールを持っているべき場面で高くキックしたり、パシフィックネーションズ(PNC)で見せた日本のアタックの形が作れなかった。4トライも全てが自分たちのアタックの形から取れたわけではなく、松島の個人的なスキルに頼っていた部分があります。

 アタックを展開する方向も、チームの中で意思統一が図れていなかった場面もありましたね。SHの出したパスに反応できず、ボールが転がる場面が何度がありました。これは流(大)から田中(史朗)に代わってからもあったので、チームとしての課題です。SOの田村(優)は、最後まで普段の彼らしいプレーが出ずに、引きずっている感じがありました。キックにも影響は出ていましたね。相当なプレッシャーを受けていたと思います。ただ、田村はメンタルが強いし、切り替えも上手。次戦は田村らしいプレーを見せてくれると期待しています。

 開幕戦を勝利で終えて、チームは少し落ち着くんじゃないかと思います。やっぱり自国開催での開幕戦で感じるプレッシャーは相当なものですよ。W杯に初出場した時、僕は緊張以上に気持ちが高ぶったのを覚えています。興奮しながら迎えた第1試合で、キックオフで蹴り上げられたボールが、ちょうど僕のところに飛んできたんです。決して高いボールじゃなかったのに、あの時はキャッチするまでの時間が本当に長く感じられました。W杯は本当に特別なものですから。

 1点差でもいいから勝つことが大事。そう思っていた初戦に30-10で勝利し、ボーナスポイントも獲得できた。なんだかんだ言っても結果が全てですから、開幕戦は100%よくやったと思います。次のアイルランド戦までにアタック面での意思統一を図ること。自分たちの形でしっかりアタックできれば、3トライ、4トライと取れるチャンスもあると思います。この1週間でどこまで修正できるか。日本の戦い方に期待したいと思います。(THE ANSWER編集部)