初ケータイは1000円で買った「F501i」だった…平成の終わりにiモードの歴史を振り返る(石野純也)
![初ケータイは1000円で買った「F501i」だった…平成の終わりにiモードの歴史を振り返る(石野純也)](https://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/3/0/3089a_1186_27a45981_42600416.jpg)
間もなく平成も終わりを迎えますが、iモードはまさにその時代の代表ともいえるサービスでした。誕生したのは1999年(平成11年)と、今からちょうど20年前。今でこそこの業界の取材暦も長くなった筆者ですが、サービス開始当時は、ただの大学生でした。あの頃は若かった女優の広末涼子さんを起用した発表会は、ニュースで見た記憶があります。しかし、正直なことを言うと、当初はあまり興味をひかれませんでした。
当時、携帯電話でのメッセージというと、今のSMSに当たるショートメッセージが主流。メールはPCで送れていましたし、テンキーをつかってポチポチと長い文章をやり取りするというのが、あまり実感できなかったのです。サイトに至っては、「そんな小さな画面で使わないでしょ」と思っていました。
そんな筆者でしたが、なぜか初号機の「F501i HYPER」を購入したことは今でも覚えています。当時は徐々に折りたたみ端末が増えている中で、ストレート形状がなんとなくカッコよかったこと、近所のケータイショップで1000円と破格の安さで売られていたことなどが、F501iをチョイスした理由です。売れなかったんでしょうか。今でも値段を覚えているほどなので、当時としても安かったのでしょう。というか、今、改めて見ても、いいデザインですね。なんとなく、海外携帯に通じるシンプルさがあったと思います。
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▲iモード初号機で、筆者の最初のiモード端末でもあるF501i。製品が手元にないため、富士通HPより
端末のデザインや、価格の安さに釣られてiモードデビューした筆者ですが、そこからガッツリとはまっていきました。結局、メールは使うわ、サイトもガンガン見るわで、パケットの定額プランがなかったため、毎月の請求額が不安だったことを覚えています。パケットの使い過ぎで請求額が跳ね上がってしまうことが「パケ死」と呼ばれ始めたのも、このころでした。iモードケータイに送られてくる迷惑メールは、まさに金食い虫で、憎悪の対象だったことも覚えています。
そんなこんなで大学を卒業後、就職氷河期の荒波を乗り越え、無事に某出版社に潜り込めた筆者ですが、そこで渡された端末がシャープの「SH821i」。ドッチーモというペットネームがついた端末で、第2世代のmovaと、PHSがハイブリッドになった珍しいケータイでした。1台の端末が2つの電話番号を持つというのは、今でいうと、デュアルSIMに近いのかもしれません。PHSは内線としても使えました。というか、内線としても使うために、この端末が導入されていました。またまたストレート端末です。
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▲movaとPHSに両対応していたドッチーモ。実は2回も壊してしまい、総務に怒られたのは、ここだけの秘密
うれしいことに、この端末は、iモードにも制限がかけられておらず、自由に使うことができました。当時、携帯関連のムックの企画、編集をしていた筆者は、市場調査と称してiモードを使いまくった記憶があります。金額がすごいことになり、後から、上司に呼び出されましたが(笑)。このころには、いわゆる「勝手サイト」と呼ばれるiモード対応したサイトがネット上にごろごろあり、いくらでも時間を潰すことができました。
そんな編集者時代に、3GのサービスであるFOMAがスタートしました。当初は端末も大きく、バッテリーも持たず、さらにエリアも狭かったため、なかなか移行が進みませんでしたが、普及を加速させたのが900iシリーズ。現・ドワンゴの代表取締役社長、夏野剛氏が、自信満々のプレゼンテーションをしていたことを、今でも覚えています。これはほしいと思った筆者が買ったのは「N900iS」。プリインストールされている「ドラクエ」は、通勤電車の中でクリアしました。
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▲筆者が個人で購入した初のFOMA端末のN900iS。ドラクエは通勤のお供だった
振り返ってみると、この当時からケータイでドラクエができるというのは、かなりすごいことだったと思います。今のスマートフォンの先駆けともいえるでしょう。実際、iPhoneやAndroidは、エコシステムに関してiモードを参考にした部分が多いと言われており、特にグーグルは、幹部がそれを認める発言もしています。iアプリはおサイフケータイも含め、色々使いました。jigブラウザとか、Googleマップとか。ゲームだけでなく、実用ツールがそろっていたのも気に入っていたところです。
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▲iアプリのフルブラウザ「jigブラウザ」。公式サイト以外からも、さまざまなアプリが登場したのが、iモードの魅力だった
実はN900iで初めて折りたたみケータイを選んで筆者ですが、おサイフケータイデビューを果たした「SH901iS」を経て、次に選んだのが、ソニー・エリクソン(現・ソニーモバイル)製の「SO902i」。「FOMA STICK」なる愛称がつけられていた端末で、これは発売日に即買いしました。F501iを手にしたときからそうなのですが、やっぱりストレートケータイが好きなのかもしれません。
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▲ストレート端末好き垂涎のSO902i。画面の小ささやキーの押しづらさには、思いっきり目をつぶって購入した
おサイフケータイを使い始めたのもこのころからで、モバイルSuicaは開始後、すぐにSH901iSで登録しました。モバイルSuica開始が2006年1月28日で、SO902iの発売が同年3月21日だったため、サービス登録後、割とすぐに機種変更手続きをしなければいけなかったことを、うっすらと覚えています。このとき作ったアカウントは、今でもドコモ版のP20 Proに引き継がれていて、それはそれですごいことだなと思います。iモードの新規受付は終了してしまいますが、モバイルSuicaは、13年の時を経ても最新のスマートフォンの中で生き続けているわけですから。
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▲モバイルSuicaを使い始めたのは、サービス開始直後の2006年
すっかりFOMA全盛となったあとに、movaの「premini」を買ったのも今ではいい思い出。2002年からサービスを提供していたデュアルネットワークサービスを使えば、FOMA契約のまま、ちょっとした外出時だけ超小型なpreminiを使うことができるとひらめいたのが購入の動機で、発売からかなり時間が経ったあと、在庫を何とか探して契約できました。どんだけストレート端末好きなんだ......と思いますね。iモードではないですが、auでもTalbyやらXminiやらを即買いしましたし。このPreminiは、デュアルネットワークサービスで使い続け、movaの停波を見届けることができました。
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▲デュアルネットワークサービスで使っていたソニー・エリクソンのpremini
その後、903iシリーズは「SO903i」を、904iシリーズは「N904i」を選びつつ、905iシリーズではちょっと機能てんこ盛り感が嫌になって、薄型派生モデルの「N905iμ」を買ったりしてました。「SH906i」を経て、次のモデルでドコモは900シリーズ、700シリーズの区分を廃止。新たに「PRIME」「STYLE」「SMART」「PRO」という、4ラインを作り、カテゴリーを細分化しました。筆者が好みそうな主力のハイエンドモデルはPRIME、記録より記憶に残る変態端末はPROに多かった印象があります。
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▲900シリーズの集大成ともいえる905i。当時は、発売記念イベントも開かれていた
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▲2018年の秋冬モデルから、3ケタ型番のシリーズ名を廃止。4つのシリーズが作られた
新シリーズになってから、特に記憶に強く残っているのが、コラボモデルの「SH-06A NERV」。官給品という渋い設定で、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」の劇中に実際登場していたのもしびれました。発売日当日の早朝から、ビックカメラの店頭に並んだこともはっきり覚えています。新劇場版のエヴァはまだ完結していませんが、世の中はすっかりスマートフォン時代になってしまいました。SH-06A NERVが発売されたのは2009年。iPhoneでいうと、「iPhone 3GS」が発売された年になります。
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▲官給品という設定が斬新だったSH-06A NERV
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▲ちなみに、SH-06A NERVと同時に発表されたのが、日本初のAndroidスマホであるHT-03A
職業柄、当然、並行してスマホは使っていましたが、このころまでの筆者のメイン端末はiモードケータイ。その翌々年の2011年に、XperiaがXperia acroで初めておサイフケータイに対応し、ついに端末をスマホに一本化しました。筆者のiモードの歴史は、ここで終わっていますが、その後は徐々にラインナップが縮小。ケータイもAndroidベースになり、今に至ります。
駆け足で筆者の視点から見たiモードを振り返ってみましたが、改めてまとめてみると、当時としては先進的で、今のスマートフォンのベースになっている機能や技術も多く含まれていることが分かります。そんなiモードも、あと5カ月足らずで新規契約を終了してしまうことに。ただ、そのスピリットのようなものは、今のスマホにもしっかり息づいているような気がしています。iモードがなければ、筆者は今、この仕事をしていなかったわけで、その意味でも新規契約終了のニュースは感慨深いものがありました。