日本全国7万の歯科医院への普及に挑む! わずか5分でお口の状態を測定できるライオン唾液検査システム「SMT」 で丸山邦彦氏が目指す『後悔しない人生のための習慣づくり』

写真拡大 (全6枚)

歯の健康は、健康の中でも非常に気になる項目の一つになっている。
食事、美容、老化、口臭エチケットなど、社会生活や日常生活において影響も大きい。

しかしながら歯の健康は、いまだに旧態依然とした歯磨きといった習慣に頼っている。

ライオンが開発・販売した「SMT(Salivary Multi Test)」は、唾液を取るだけで、わずか5分で口内の状態を測定し、歯の健康、歯ぐきの健康、口腔清潔度に関する6項目をチャートで表示することができる。

「SMT」は口腔内の状態が一目でわかるため、口腔ケアを考えるきっかけになることが期待されている。


■ライオンが唾液検査「SMT」を開発した目的と夢とは


ライオン歯科材 予防歯科事業室 副主席部員 丸山邦彦 氏


ライオンの 唾液検査「SMT」のプロジェクトリーダーは、丸山邦彦氏(52歳)だ。
ライオン歯科材 予防歯科事業室 副主席部員を務める。

丸山邦彦氏は、
1990年にライオン入社。名古屋支店に営業職(販売担当)を務める。
1997年には、大阪本店に営業職に移動。
2004年に家庭品の営業統括部(本部スタッフ)の所属となる。
その後、リビングケア事業部、ヘルス&ホームケア営業統括部などの事業部を経る。
2018年1月に事業開発部の事業育成担当部長となり「SMT」開発・育成に関わる。
2019年1月ライオン歯科材に移籍となり、予防歯科事業室のSMT担当となっている。

丸山邦彦氏
「去年の1月に事業開発部に移動になりまして、SMTの育成を担当することになりました。私自身は開発に長く携わっていたわけではないのですが
『SMTを世に広めていく』
という役割を担っていると自覚しています。」

丸山邦彦氏は、SMTについて、3つの想いがあるという。

丸山邦彦氏
「1つめは、
歯をしっかりと守っていくことで、年齢を重ねても楽しい人生をおくって欲しい、
そのために、気軽に歯医者さんにお口の状態をチェックしてもらいに行く文化(もしくは習慣)を作りたいと思っているんです。そのツールとして、ぜひSMTを使って欲しいということです。

2つめは、
歯科業界に対して、少し大きな話ですが、SMTで歯科業界を発展させるきっかけを提供したいと思っています。
SMTにより予防という習慣が定着していけば、歯医者さんへ行く人が増えます。
口腔ケアの指導をする、歯科衛生士の方の活躍の場も増えます。
そういったことで、業界全体に貢献したいと考えています。

3つめは、
社内的な話になりますが、SMTは開発をはじめてから10年経っているので、SMTに携わった人たちがたくさんいます。それぞれにいろんな想いがあります。
それを事業化するということは、我々が最後のパートを引き継いだかたちなので、
責任を持って、世にしっかりと広めていきたいと思っています。

SMTが、お客様の未来の健康に役立ち、
さらに、私どもも含めた業界全体の発展につながってほしいというのが、
私の想いです。」

高齢化社会が進んでいる日本。年齢を重ねても元気な毎日を送るためには、
食べることに直結している、歯のケアがより重要になってくる。
歯の健康を保つため定期的に歯科医で歯をチェックする。
そんな習慣を広めたいとしている。


■わずか5分で口の中の状態が測定できる 唾液検査「SMT」
SMTの最大の特徴的は、わずか5分で口内の状態がわかることだ。




ライオン歯科材 予防歯科事業室 主任部員 稲葉宏幸氏


ライオン歯科材 予防歯科事業室 主任部員 稲葉宏幸氏に、
SMTの機能や特徴について、説明していただいた。

稲葉宏幸氏
「取った唾液を試験紙に付けると色が変わります。
その色調変化を機械で読み取っています。」

試験紙には試薬が染みこませてある。
・歯の健康 ・・・ むし歯菌、酸性度、緩衝能
・歯ぐきの健康 ・・・ 白血球、タンパク質
・口腔清潔度 ・・・ アンモニア
これらの6項目の唾液因子を測定することができる。


今回、唾液検査「SMT」を実際に体験させていただいた。




検査前、2時間以内の飲食は禁止。
この状態で検査を実施する。

SMTでの検査は、
・採取   10秒間、軽く洗口する
・測定   試験紙と専用機器で測定
・結果   測定結果を患者さんと共有
わずか、この3ステップで検査できる。

さっそく検査をしていただいた。
・3mlの水(滅菌蒸留水)を口に含み、10秒間、口を注ぐ。
イメージとしては、口の中を洗う感じだ。
その後、口の中の水を紙コップに出す。
あとは紙コップ内の水を試験紙に染みこませて測定する。

検査の手順は単純だが、実際には、水質や検査時間など、配慮しないといけないデリケートな要素も多いのだそう。

丸山邦彦氏
「水によってpH値が異なります。
ですので、SMTでは専用のお水(滅菌蒸留水)をセットにして検査していただくかたちになっています。
検査では、どんどん色調が変化しますので、採取後、設定時間内に測るのも大きなポイントになっています。」



測定器にかけて、5分程度で測定結果は出る。
SMTによる検査結果の精度だが、すでに確立された各種の分析法と相関を示すことを実証済みだという。

ところで、SMTの5分という検査・測定時間は、業界的に早いのか?
そのあたりを聞いてみた。

丸山邦彦氏
「SMTの検査時間はとても早いほうです。
検査できる項目は限られていますが、スピードと手軽さを重視して、
かつ、お口の状態を測定するには十分な項目を選んで設定しています。」

SMTによる検査時間は確かに早く、その場で結果がわかる。

SMTの主な目的は、あくまでも、
歯科医院で手軽に口腔内の状態の検査ができることを普及させ、
定期的に歯医者に行く習慣を広めていくことなのだ。
実際の検査代は(自由診療となるので)歯科医院ごとに決められることになるのだそう。

さてSMTの特徴には、検査結果のわかりやすさもある。
測定結果は、馴染みのある一目でわかる六角形のチャートとなっているのだ。
六角形の形で、平均的な状態と比較できるようになっている。



測定結果をまとめたチャート(資料提供:ライオン歯科材)


稲葉宏幸氏
「歯科医院でSMTを使っていただければ、
診断の際にSMTの検査での客観的なデータも出して、患者さんに説明することができます。
もし、歯科健診と合わせてSMTを導入していただければ、ご自分の口の状態がよりわかりやすくなるのではないかと思っています。」


■SMTを通して予防歯科を広めたい



SMTは、5分で口内の状態を検査できる。
十分に優れている唾液検査システムだと言える。
しかし、丸山邦彦氏は、まだ改善しなければならない課題も多いと語る。


丸山邦彦氏
「SMTを受けていただく方にも、活用していただく方にも、
ストレスなく使っていただく工夫が、まだまだ必要かと思っています。

唾液を検査するということがこれまであまり経験がないと思いますので、
一度口に含んだ水をコップに出して、
唾液を採取することにも抵抗を感じる方もいらっしゃいます。
そこは、なんとか解決しないといけないです。

SMTを使う歯医者さんや歯科衛生士さんにとっても、
例えば、(唾液を検査紙に)滴下する操作など、
よりやりやすいように、
その辺を改良していく必要があります。

また、一番大事なのは、
結果をどういう風に患者様にお伝えすると、
お口の健康に関する関心を高めていただけるかということです。
これをもっとレベルアップさせていきたいです。」


2019年1月からSMT事業は、ライオン歯科材という会社に変わった。
それにともないSMTに関わる仲間も増えてきている。


丸山邦彦氏
「全国に歯科医院は約7万医院あります。
現状では、まだ1,100医院への導入です。
まだ十分な評価ができる段階でないというのが率直な認識です。

SMTを使っていただいた医院さんからの声を聞くと、
患者さんとのコミュニケーション向上に、かなり手応えを感じている医院さんが多いです。

ただ、しっかり使っていただいている医院さんと、そうでない医院さんで二極化している傾向もあり、そこが問題だと感じています。
新しい体制にもなったので、その辺を歯科医院の皆さんのご意見を聞きながら、改善していきます。」

日本全国7万医院という数字は、実はコンビニ数よりも多い。
どう日本全国の医院に普及させていくのか?

丸山邦彦氏
「まずはSMTを活用して良かったという成功事例の創出ですね。
理論ばかりでは普及はできません。
まずは歯科医院さんと患者さんのコミュニケーションアップと
患者さんご自身のセルフケアのモチベーションアップに繋げていただくことが重要だと思っています。」


歯や口腔内の健康管理は、継続したケアや予防が必要不可欠だ。
しかし、現状は、悪いところを治療して終わり、といったケースが多いのだそう。
虫歯などになってから治療するのではなく、なる前に予防を大切にすることを「予防歯科」というそうだ。
丸山邦彦氏は、「予防歯科」を生活習慣として定着することを目指し、様々な関係者と協力して「予防歯科」の普及に取り組んでいる。

5分で測定できる唾液検査「SMT」


執筆:ITライフハック 関口哲司
撮影:2106bpm