ベトナム・ハノイで27、28日と2日間に渡って行われ、北朝鮮の「非核化」について今度こそ合意に至るか否か注目が集まっていた第二回目の米朝首脳会談。しかし、いざフタを開けてみれば「合意せず」という中途半端な結果に終わりました。韓国在住歴30年の日本人著者が発行する無料メルマガ『キムチパワー』は、韓国に住む日本人という視点で今回の米朝会談について率直な感想を綴っています。

決裂の第二回「米朝首脳会談」で、トランプは何を北に要求したのか?

2月27日、28日の両日開かれた米朝首脳会談(第二次)が、合意点を見出せず決裂した。

結論的な部分だけ書けば、トランプは北の核施設の全てをリストアップして教えろといい、金正恩はヨンビョンの核施設だけを提出するだけでも経済制裁を全面的に解除してくれと要求した。

段階的にちょこちょこと出し合う形式ではなく、それこそビッグディール(莫大な取引)を双方が各自の視点から望み、それが(予想通り)全面衝突して決裂したという格好だ。だったら、いままでの2、3か月間、双方の高級幹部たちが水面下でやってきたミーティングは何の意味があったのかといいたいところだ。

いったい何を議論してこの日を迎えたのかと。結果だけからみると、高級幹部らがやったことは何もないように見える。

次の会談の約束はしていないとトランプは言った。こういう形で決裂するとはちょっと想像をはるかに超えるダメージだ。トランプはいつも、「彼(金正恩)はいいやつですばらしい指導者だ」という。今回も、決裂後の記者会見で同じような表現をしている。これはリップサービスレベルでとらえるしかないのかもしれない。

今回の会談は決裂したけれど、しかし筆者としては、意味はあったと思える部分もある。当たりさわりのないレベルでお互いの腹のうちをうかがっていた2018年のシンガポール会談よりは、具体的に双方が「どういうことを望んでいるか」がはっきりと分かったからだ。

米としては、それこそ「CVID」つまり「完全(Complete)かつ検証可能(Verifiable)で不可逆的(Irreversible)な非核化(Denuclearization)」を望んでいるのであり、これ以上でも以下でもないということ。

北朝鮮としては、ヨンビョンの核施設の全てを申告するくらいのレベルで全面的な制裁の緩和を頼むということ。

双方の希望の値はわかったけれど、それじゃこれをこれからどうやって解決していくのか。

北は、ヨンビョンだけではなく、いろいろな地点に核施設(プルトニウム工場や濃縮ウラニウム工場、加えて核弾頭作りの工場など)を保有している。米は衛星写真などを通して、かなりの率で把握している模様だ。

きょう28日の会談でも、トランプがヨンビョン以外での濃縮ウラニウムのことをちょっと話しただけで金正恩が腰を抜かすほど驚いたというじゃないか。「なんでそんなことまで分かってるんだよ」という訳だ。

金正恩の外交力はどの国の誰にもまして素晴らしいものを持っていると今まで思っていたのだけれど、今回の結果を見て、あまりにも相手方のポイントを掴めていないなあとつくづくと思わされた。

今後どうなっていくか。金正恩にとっては、前が何も見えなくなったような状態じゃないかと筆者には思える。相当の自信をもってハノイにやってきたはずだ。65時間も列車に乗ってやってきた。しかもその一挙手一投足を北の住民に知らせる格好で。

今回こそ、ビッグディールに成功して、北の制裁を解き、お前たちにも楽をさせてやるぞとかなり意気込んでハノイにやってきたはずだ。

ヨンビョンの核施設を100%リストアップし提出してやれば制裁は解いてくれるだろう、と期待して。でもヨンビョンなどは米にとってはすでにほとんどなんの重みもないほどのものだったんだ。ヨンビョンについては、ほとんど分かっているから。米はそれ以外の核施設のリストを要求していたのだ。

お先真っ暗となった金正恩。今後のやり方としては、

本当のリストアップをして、制裁を解いてもらう。嘘のリスト(これで全部だといいながら隠し持つスタイル)を提出して第三次の会談を行なう。段階的にやっていこうと提案し、それを米が認めるように交渉してゆく。金正日スタイルで、かたくなに核開発をさらに推し進め、米などに脅威を与える。

1番はほぼ不可能な予測だ。これをやったら北は丸腰となってしまい、いつでも米の攻撃にさらされるし、体制の崩壊も時間の問題となる。2番はかなり可能性のある方向かもしれない。3番もかなり有力だと筆者には思える。しかし「段階的に」という複雑・煩雑なディールをトランプがうけいれるどうか。4番は、これもほぼ可能性ゼロだと思う。きょうのトランプの記者会見でも、「金正恩は核開発やロケット飛ばしはもうやらないと言った」と強調している。4番の線はないと思う。

筆者の頭では今はこの4点くらいしかわからないけれど、ほかの方向性があるかもしれない。どちらにしても、今後の米朝交渉はかなりの泥沼となることは避けられない。

でもそうなると一番困るのは北朝鮮だ、今も死活問題なのだから。「経済制裁」によってこれまでも多くの国が倒れてきたのだ。どこまでがんばるのか、北。

国民のことを心から愛している金正恩のことだ、このままズルズルいくとは思えないのだが。まったく好きではないけれど、金正恩のことが心配になってきた。

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