増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ

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・若者の情弱化が進む
バイト先の食品をつかって不衛生ないたずらをし、それをSNSで自慢し合うことなどがバカッター行為と呼ばれますが、必ずしもツイッターでの露見には限りません。インスタグラムやTiktokなど、次々現れる新SNSの中には、「時限で投稿が消える」機能があるものもあり、最近はメジャーなSNSでもそうした時限機能を搭載したりします。

そのSNS内だけの機能である「時限で消える」ことで安心し、仲間内でのウケを狙って拡散した結果、永久に投稿が保存される他のインターネット上に転載されて公開され、炎上。自宅住所や学校、家族の勤務先をさらされて破滅するという、昔繰り返し行われたバカッター行為と全く同じオチに行きついているようです。

「デジタルネイティブの若者はITに強い」どころか、そのIT知識はどんどん劣化しているといえます。大学生でもPCを操作できなかったり、触れられない者までいます。何でもスマホで済んでしまうため、就職活動時期になって、MSオフィスができないことが露見して大騒ぎになることもあります。

2015年5月11日付けanレポート「バイトテロ、ネット炎上を未然に防ぐ――今、求められるネットリテラシー教育とは」で語ったことがそのまま、全く改善もされずに再び亡霊のように蘇っているのが現在といえます。

・笑いを「見る側」の劣化
ユーチューバ―のカジサックこと、お笑い芸人キングコング梶原さんが、ネット動画番組で評論家の宇野常寛さんをいじり倒し、宇野氏が番組中に帰る事件がありました。カジサックさんは番組のなかのイジリであるとして謝罪も拒否しますが、宇野氏や番組を見た人たちからは、お笑い芸人でもない宇野氏を下手なイジリで笑いに昇華できないカジサックさんの腕が無いという批判が多いようです。

子供のいじめ問題でも、お笑い番組で芸人さんが行う罰ゲームを強要したり、恥をかかせるいじめ行為がありますが、すべてお笑い番組というプロの作品の上辺だけしか理解できない浅はかさによるものといえます。プロのお笑い芸人さんのイジリを見て、一切笑いなど作ることができないど素人が、表面的な言動だけマネて他人を攻撃するのは、ただのイジメであり暴力です。カジサックさんはプロのはずなのに、宇野氏の怒りを買ってしまった以上は残念ながらお笑いを作ることはほとんどできなかったと、いわれて仕方ないと思います。

店長自らが、客として来たたむらけんじさんについて「カメラなかったらおもろない奴」という、いかにも芸人風に見えるだけで、実はオモシロ要素ゼロのツッコミをツイートしたラーメン店が大炎上しました。プロの芸人さんの伏線や振りといった細かい設定を理解できない、表面的な、おもしろ「風」ど素人ツイートは一連のバカッター行為に共通する、知性もおもしろ能力もゼロの馬鹿ぶりを表しています。

伏線や振りといった構成は、本来お笑いを深めておもしろさを増すための重要な要素ですが、そんなめんどうな構成を理解をできない馬鹿者が、素人いじり能力ゼロで表面的お笑い「風」でもインターネットでは情報発信できてしまえます。クリックさえ稼げれば巨額の報酬も得られます。もはや決して若者だけではない話ですが、見る側の劣化は笑いを劣化させ、それはリテラシーを含めた知性の劣化が招いているのだと思います。そうした状況が笑い作りにまで影響しているのでしょう。

・店/企業側の責任
当然のことながら、こうしたバカッター行為を犯す愚か者が責任を負うのは当たり前です。ネット上に永久に行為と氏名、家族情報まで残されるという悲惨な結果を迎えるのも、ほぼ犯罪行為である以上弁護の余地は感じられません。しかし自己責任だけで済ませてしまっても、考える力が劣化している人たちは次々企業価値を毀損するような行為をやらかすことでしょう。企業側の危機管理責任はどんな時でも問われます。

やはり先日バイトスタッフのバカッター行為で被害を受けたくら寿司は、犯人に対し解雇だけでなく、刑事、民事での法的処置を告知しました。「若気の至り」で大目に見るのではなく、問題を顕在化させてさらなる行為続発への抑守としたいという意図には賛成です。

私がこうした飲食やサービス業など接客を伴う業界向けにお話ししているのは、インタビュー記事にもある通り、絶対に他人事と思わず、自社・自店でも起こり得ること、あるいはすでに起こっているかもしれないという危機意識を持つことです。新規入店のアルバイトへの指導を形骸化させず、必ずSNSの扱い方やその結果の損害賠償などについてもいちいち直接説明する。

バカッター事件が表に出るたびに朝礼や臨時スタッフ研修として、事件を共有するといったことが常日頃から行われないことで、発生リスクが高まります。セブンイレブンのようにフランチャイズ店舗など、本部や本社から離れれば離れるほど発生リスクは高まります。

「絶対に起きること」「絶対に他人事ではないこと」と自覚し、不断の対策を講じて下さい。