えっ大晦日に寝ると老ける…?「運気を上げる」年末年始の過ごし方

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一年で最も重要な年中行事ともいえるお正月。そのお正月にはさまざまなしきたりがありますが、新しい年が安全で幸せに恵まれるようにと、民間に伝わる行事と、宮中でのしきたりとが、一般にも広まり、現代の正月の行事に組み込まれるようになりました。ここでは新しい年をよりよく迎えるために、知っておくと運気の上がる年末年始の過ごし方をレクチャーします。

文・御瀧政子

お正月とは

一年の始まりであるお正月は、福徳(ふくとく)を司る神であり、人々に生命力を与える歳神様を迎え、五穀豊穣、家内安全を祈りました。またお正月はみんながひとつ歳をとる「数え年」で誕生日を迎える意味でもおめでたい日と考えられています。歳神様から新しい魂をいただいて歳をとり、新しい一年を改まった気持ちで始めるために行うのが、数々のお正月の行事なのです。

大掃除

神社仏閣では12月13日の「煤払(すすはら)い」行事からお正月の準備が始まります。

掃除には、邪気を取り除いて神様を迎える意味があります。日本には「八百万(やおよろず)の神がいる」と言われ、家の中のいたるところにも神様がいらして、かまどには火の神、井戸には水の神、厠(トイレ)の神など、私たちを守っていると昔から考えられてきました。そのことに感謝をしつつ掃除を行いましょう。神棚から始め、台所など各部屋をやるといいでしょう。住まいの運気を上げるためにも重要です。

神様はきれいなところを好みます。普段おこたっている場所も、いつもより丁寧に掃除をすること。そして、恵みをもたらす歳神様にお正月の間、心地よく過ごしていただくため、そして自分たちも新たな気持ちで新しい年を迎えるため、念入りに「掃き納め」しましょう。

大晦日からお正月

お正月の準備が整った大晦日の入浴を「年(とし)の湯(ゆ)」といいます。一年の垢を落とし、身を清める意味もある特別なお風呂でもあります。

日没を一日の境目と考える古来の風習にのっとると、大晦日の夜つまり現在でいう12月31日の夜にはすでに新年が始まっています。一年で最も大事な、歳神様をお迎えするには起きていなければなりませんでした。そのため、寝ると白髪になる、しわがよるなどの言い伝えもあったようです。

細く長くの縁起物である年越しそばを食べたり、除夜の鐘を聞きながら、清々しい改まった気持ちで正月元日を迎えることは、新しい年の大きな活力を得ることにもつながります。

「元日」は、すべてが元に戻った、まったく新しい年の「はじめの日」という意味です。気持ちを新たに、一年の目標を立てるなど大事なけじめの機会です。何かひとつでも新品の衣類を身に着けたり、食器なども新しいものに取り替えたり、特別な日を意識してみるのも良いでしょう。

おせち料理

もともとは、節句に神様に捧げる食物をおせち料理といいましたが、今では正月料理のことを意味するようになりました。家族やお客様の繁栄を願って食べる意味もあります。

神と人をつなぐ役割を持つのが重箱。そこに詰めたおせち料理は、まず歳神様に供えたのち、家族でいただきます。歳神様がいらっしゃる間は煮炊きを控えるという考え方や、普段忙しい主婦が正月三日間くらいは炊事せず過ごすために、保存食としての役割も果たしています。

正式とされるのが三段から五段の重箱に詰めるもの。一段目は伊達巻き・昆布巻き・きんとんなどの口取りを、二段目はタイ・ブリ・エビなどの焼き物を、三段目はゴボウ・レンコン・八頭などの煮物を、四段目は紅白なますや酢だこなどの酢の物を詰めるのが正式です。五段目は控えの重として予備の料理を入れます。

一年の豊穣を願ってこのように多彩なメニューを用意するのです。昔は、大晦日にもおせち料理を食べましたが、現在は正月7日までに食べるのが一般的です。

< 各品の縁起>

伊達巻き:文化の発展昆布巻き:喜ぶ、福を授かる、長寿、大漁などきんとん:金運を呼ぶタイ:めでたい、縁起が良いブリ:出世を願うエビ:長寿、成長、若返りの象徴ゴボウ:開運レンコン:将来の見通しがきく八頭:人の上に立つように紅白なます:水引に見立てて酢だこ:紅白でめでたい

祝い肴三種

黒豆・田作り・数の子の三品は、お正月料理の中にあって豊作と家内の繁栄を願う正月の縁起物です。訪問客をもてなすときに屠蘇(とそ)の肴(さかな)として欠かせないものです。(関西では田作りが叩きゴボウに替わります)。

< 各品の縁起>

黒豆:マメで健康、無病息災を願って田作り:豊作、尾頭付きで縁起よく、良い一年がおくれる数の子:子宝、子孫繁栄

元日の過ごし方と初詣

伝統的でもっとも一般的な、向かいのお正月の過ごし方とは、元日は家族そろって家に籠もり、歳神様の来訪を静かに待つというものですが、いまや正月といえば、初詣です。正月になって最初に神社や寺院にお参りすることをいいます。2015年の発表による参拝客数は東京の明治神宮310万人、千葉県の成田山新勝寺305万人、神奈川県の川崎大師300万人など、全国各地の社寺でも大勢の参拝客が訪れています。

初詣の歴史は意外にも明治期以降に広まった習慣なのです。お参りするのは神社でもお寺でもどちらでも構いません。いずれも参拝して願い事ができると考えていいようです。1月7日(松の内)までに済ませるのがいいでしょう。

< 参拝マナー>

神社の境内に入るとき

1. 鳥居の前で軽く会釈をして境内に入りましょう。鳥居から先は神の空間です。

2. 参道を歩くときは神様が通る中央を避け、左右どちらかをゆっくりと歩きましょう。参道に玉砂利が敷かれている場合は踏みならす音は清めの音。ゆったりとした気持ちで、拝礼のために心を整えながら歩いていきましょう。

3. 手水舎(てみずや)で心身を清める。手水舎の前で軽く会釈をする。ひしゃくを右手に持って水を汲み、左手に水(ひしゃくの1/3の量の水)をかけてから持ち替え、右手にも水をかける(同じく1/3)。右手に持ち替えて左手に少しの水を受け、口をすすぐ。最後にひしゃくを両手で立て、残りの水を流して柄を洗ったら、元の位置に伏せて置き、会釈をして退きます。

4. 神前に立ったら、軽く会釈をし、御鈴(みすず)を鳴らす。これが「聞いてください」という神様への合図に(御鈴の音で心身を祓い清めるの意味も)。賽銭箱にお賽銭を入れて「二拝二拍手一拝」(神社によって違う場合もあります)。深々と2度お辞儀(拝)拍手2回(背筋は伸ばして、両手は目線の高さで)姿勢を正し、深々とお辞儀(拝)。そのあとであらためて手を合わせて祈念します(感謝、お礼、願い事の順に)。軽く会釈をし、神前にお尻を向けないようにして退きます。

お賽銭を入れるとき

お賽銭は神様への感謝の気持ちを持って、そっと丁寧に落としこみましょう。お賽銭は、自分の気持ち。決まった金額や相場はありません。お願いするだけでなく、感謝の気持ちを込めましょう(※お賽銭に、穢れや厄を移して投げ入れて祓うという考え方もあります)。

おみくじ

神様のメッセージやパワーが秘められたおみくじ。たとえ結果が悪くても、それがそのときの神様からのメッセージと受け止めましょう。一般的には一度しか引かないからこそ、そのメッセージに価値があります。自分の運勢を素直な気持ちで受け入れたら、吉へ転じることを祈り、神木に結びます。その行為自体も厄を払う行動です。しばらく持ち歩き、あとでお礼を込めて納めることもOKです。

おみくじの内容もさまざまですが、運勢は一般的に7〜12段階位にわかれます。

7段階の場合は、大吉、中吉、小吉、吉、末吉、凶、大凶。12段階の場合は大吉、中吉、小吉、吉、半吉、末吉、末小吉、凶、小凶、半凶、末凶、大凶の順になります。

※神社によっては何度引いてもいいというところもあります。

お神(ふ)札(だ)

罪や穢れを祓ってくれます。神仏の加護により厄難から逃れさせてくれる護符。神棚がない場合は、南か東向きの、棚の上など背丈よりも高く、清潔なところに置きます(貼ってもよい)。薄い紙に包まれていたら、外しましょう。

お守り

神札を携帯用にしたもの。常に身に付けることで、災いや厄から身を守る役割を持っています。違う願いのお守りはいくつ持っていても大丈夫。

破魔矢(はまや)

家族を外から入ってくる邪気や魔から守り、開運や一年の幸福を射止める霊力がある縁起物。

絵馬

願い事はできるだけ具体的に心を込めて書きましょう。名前だけでなく住所や年齢まで書くと神様に願い事が届きやすいといわれています。願いが成就したときはお礼参りを忘れずに。たとえ、願いが成就しなくても一年後には神様にご挨拶に行くのは礼儀です。

初夢

元日の夜から二日の朝にみる夢を、初夢といいます。

昔の人は、夢を神仏のお告げと信じていたので、新年最初の夢は、その年の吉凶を示すものと考えていました。良い夢をみられるように願って、枕の下に宝船の絵を入れる風習は室町時代から。金銀財宝満載で七福神をのせた宝船のお札が、神社で売られていました。もし悪い夢をみたら、この宝船のお札を川に流すか土に埋めるなどしたようです。

「一富士二鷹三茄子」が見るといい最高レベルの初夢ですが、それ以外にも見ると運気が上がるものがあります。・明るい太陽・朝日を見る、浴びる・黒い雲・龍に乗る・金色に輝く鶏・鶴・池の中の島に花が咲く・虹・川を渡る・豊かに実ったブドウの木・よく繁った松・餅をつく・バラをもらう

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