初陣は0-5の大敗に終わった。ここからリージョ監督はチームをどう再建していくのだろうか写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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[J1リーグ28節]神戸0-5鹿島/9月29日/ノエスタ

 ついにリージョ体制が動き出した。9月29日、神戸は28節で鹿島と対戦。登録手続きが未完了だったファン・マヌエル・リージョ監督がコーチとしてベンチ入りを果たしたのだ。
 
 9月17日に就任したリージョ監督は世界有数の戦術マニアとして知られる。マンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラ監督も師と仰いだほどで、スペインのクラブなどでポゼッションスタイルを追求してきた。
 
 そうした経歴を持つ神戸の新指揮官が果たして、どのようなサッカーを展開するのか――。

 しかし、注目された初陣の鹿島戦は、0-5でまさかの大敗。59.1%とポゼッション率は高かったものの、最後の局面で崩し切れない。その結果、ボールをロストしてカウンターを浴びる場面が目立った。

 ビルドアップでもミスが散見し、鈴木優磨に決められた3失点目はGKのキム・スンギュが高い位置でパスを受け損なって生まれたもの。攻守で多くの課題を残し、理想のサッカーを完成させるまでに多くの時間を擁しそうな気配を漂わせた。
 
 試合後、取材対応を行なわなかったリージョ監督。そのため、鹿島戦をどう見たかは分からない。だが、選手たちの言葉からは新たな挑戦を手探りで進めている様子を感じさせた。
 
 そのなかでチーム状況を事細かに説明したのが、ディフェンスリーダーの渡部博文だ。試合後のミックスゾーンで「時間は掛かる」と話し、今はリージョ新監督のスタンスや考え方を理解している真っ最中だとした。
 
 そうした状況は鹿島戦の総括からも見て取れる。「ショートカウンターを受け過ぎた。一番大事なのはボールを動かす際にどれだけ自信を持って、狙っているところにボールを運べるか。それだと思う。ミスから失点したことで、相手が怖いと思う裏のスペースにボールを運べなかったし、自分たちは自信を持ってそこを狙えなかった」と渡部は語り、恐る恐るサッカーに取り組んでいたとした。
 思い通りに進まない現状だが、渡部はネガティブに捉えているわけでない。「必ず次の試合は来るので、そこに向かって切り替えて、顔を上げて戦えるかがすごく大事」とし、地道に積み上げていく考えを明かした。実際に徐々にリージョ監督の考え方は頭に入ってきており、確実に前へ進んでいる。
 
「少しずつなので、全部は理解できていないのですが、やっぱり、大事なのはグラウンドの中で選手が臨機応変にやれるか。ざっくりとした言葉ですが、人が来たらパスを出す、スペースが空いたら運ぶ。単純に相手が嫌がることをやり続けるのが、リージョさんのスタイル。それをより吸収したいと感じています。守備も今までとは少し違うやり方をやっているので、僕はそれを学びたいと思うし、学ばせてもらっているなと思っている」(渡部)
 
 鹿島戦では辛酸を舐めたが、その苦しみも新指揮官の掲げるサッカーを実現するためだ。渡部が言うように、今の神戸は我慢の時期に来ているのかもしれない。

取材・文●松尾祐希(サッカーダイジェストWeb編集部)