背番号8のユニフォームを持って並ぶイニエスタ(右)と三木谷オーナー

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長らくバルセロナの中心選手だったスペイン代表MFアンドレス・イニエスタが、J1・ヴィッセル神戸に正式に加入した。注目されるのは、世界最高峰の選手がJの舞台でチームにフィットできるかどうか。

1人で局面を打開するより、周囲の選手の力を引き出す方が得意のイニエスタ。キーマンは同クラスの実力と実績をもつ元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキであるのは間違いないが――。

「チームメイトと知り合い、一緒にサッカーするのを楽しみにしています」

イニエスタの神戸入団は2018年5月24日、都内で開いた会見で三木谷浩史オーナーが発表。三木谷氏は「バルセロナの保守本流といえる選手です。バルサのDNAが注入されるような大きな刺激になるでしょう。次世代育成にも期待しています」とチームへの波及効果を期待し、「新・ヴィッセル神戸はアジアナンバーワンを目指します」と宣言した。

イニエスタは「チームメイトと知り合い、一緒にサッカーするのを楽しみにしています」と述べ、「日本サッカーをリスペクトしています。プレーヤーもそう。技術が高く、よく考えている。コンビネーションもよく使います。Jリーグも日本代表もよく知っていますよ。高いレベルの選手が多い」と日本への印象を述べた。そのうえで「チームを助け、日本サッカーを発展させるために頑張りたい」と決意を述べた。

神戸には、負傷離脱中ながら世界クラスのポドルスキがいる。24日、来日を伝えるポドルスキのツイッター投稿に、「もうすぐ会おう」と応じ、入団が正式発表されると「ウェルカム」と喜んだ。W杯優勝経験のある2人。人間関係も円滑に進みそうだ。

ポドルスキは今季2トップの一角を担うことが多く、離脱までほとんどの試合に出場してきた。だが11戦で3ゴールと振るわない。その得点能力をパサーのイニエスタが引き出せるか。

今季神戸の布陣は2ボランチの4-4-2が基本。一方バルセロナは4-1-2-3を敷き、イニエスタは左インサイドハーフで高めのポジションから攻撃を展開してきた。これだけ見れば多少勝手が異なりそうだが、神戸のチーム強化を担う三浦淳寛・スポーツダイレクターは1月、「バルセロナのサッカーを目指す」と宣言。ボール支配率を高めるチーム作りを進めている。チームの方向性としてはイニエスタがフィットしやすい状況にあるかもしれない。

吉田孝行監督も、「若いときは中盤のボランチとかもやっていた。どこでもできるし、来てからの判断になる。彼ともコミュニケーションを取りながら、一番、良いところで」(25日・スポーツニッポン)と柔軟に起用法を考えていくようだ。

「これを転機に飛躍する選手がいたら面白い」。候補は?

もちろん2人だけでは限界がある。サッカージャーナリストの河治良幸氏は25日にツイッターで、「イニエスタはJリーグではバルサ以上に個人技で解決するシーンも増えるかもしれないですが、基本的には2、3人のユニットを活用するタイプのMFなので、ポルディはいるけど、さらに中盤に感じて動ける選手がいた方が実力を発揮しやすいと思う」と、もう1人スムーズに連携できる選手の必要性を指摘。「これを転機に飛躍する選手がいたら面白い」と期待を込めた。

一般ユーザーからMF三田啓貴はどうかと指摘されると、河治氏は「三田選手が崩しのところでもうひと伸びしたら代表にも呼ばれるぐらい資質はあると思うので楽しみですし、覚醒する選手が出てきたら面白いです」との評価をしている。

三田は、イニエスタの背番号として発表された「8」を今まさにつけていることでも話題を呼んだが、三木谷氏は25日のツイッターで「昨日の一番の感動 イニエスタが三田選手に自分から電話をして、大切な背番号を譲ってくれてありがとうと丁寧に話をしたこと。やはり我々の判断は間違ってなかったと思いました」と、円満に解決しそうであることを伝えている。