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●スマートフォンのようなIoT専用デバイス

ビッグローブは4月11日、法人向けの新しいIoTデバイス「BL-02」を発表した。2.8インチのディスプレイを搭載し、ジャイロセンサーやGPSなどを搭載した小型のAndroid端末で、一見すると「小さくて厚いスマートフォン」なのだが、なぜスマートフォンではなく、法人専用のIoTデバイスを用意する必要があるのだろうか。

○小型スマートフォンのような形状の「BL-02」

KDDIの傘下企業となって以降、積極的なテレビCM攻勢などによって、MVNOとして個人向けのモバイル通信サービスとしての認知度が高まっているビッグローブ。だが同社は元々老舗のインターネットサービスプロバイダー(ISP)であり、法人向けのビジネスにも力を入れている。

そのビッグローブが、法人向けの分野で現在力を入れているのが、IoT関連のソリューションビジネスである。同社はネットワークを持つことを強みとして、企業のIoTを活用したビジネスの支援を推し進めており、IoT向けネットワークの提供だけでなく、IoT専用のデバイス「BL-01」を開発するなど、企業のIoT化の包括的なサポートに力を入れているという。

そこでビッグローブが4月11日、法人向けデバイスとしてに新たに発表したのが「BL-02」である。これはAndroid 6.0を搭載し、2.8インチディスプレイを備えた小型のデバイスで、BluetoothやWi-Fi、そしてLTEによる通信機能を備えていることから、各種センサーからの情報を収集するゲートウェイとしても活用できる。

またBL-02には、加速度センサーやジャイロセンサー、GPSなど多くのセンサーも搭載。デバイス単独でも、工場内での人の動きを監視する行動センシングや、車の運行状況測定など、センサーとネットワークを備えたIoTゲートウェイとして活用できることを想定しているとのこと。価格は開発サンプル提供価格で3万9800円だが、本導入時にはボリュームディスカウントなども検討されていることから、比較的安価に導入できるのも強みだ。

だがセンシング機能を備え、ディスプレイを搭載したAndroid端末といえば、既にスマートフォンが存在する。なぜスマートフォンではなく、専用のIoTデバイスを用意する必要があるのかというと、そこには法人ならではの理由があるようだ。

●IoT導入の3つの課題

○企業がIoTで抱える課題をクリアするためのデバイス

企業のIoT活用は、センサーを用いて必要な情報を集め、それをゲートウェイでエッジ処理して必要な情報だけを抽出、ネットワークを通じてクラウドに送信し、分析してビジネス向上に役立てるというのが大まかな流れとなる。

具体的な例を挙げると、倉庫における作業員の行動センシングの場合であれば、体に身に着けたセンサーから位置や動きなどの情報を取得、分析して人の動きを把握し、動線を効率化して生産性高める、といった具合だ。

だが、4月11日にビッグローブが実施した説明会において、執行役員常務の松田康典氏は、企業がIoTを導入する上では、大きく3の課題が挙げられるという。1つはIoTデバイスの数が非常に多く、選ぶのが難しいことだ。IoTに必ずしも詳しくない顧客が、多数のセンサーデバイスから、ゲートウェイとの相性やモバイル通信への対応など、条件に適したものを探すというのはハードルが高い。

2つ目はエッジ処理をするアプリケーションの開発がしづらいこと。エッジ処理はゲートウェイでする形となるが、そのゲートウェイが採用しているOSの多くは組み込み機器専用のもので、開発ハードルが高くその分コストがかかってしまうという。

3つ目は、収集したデータをいざ分析しようとするとうまくマッチングができず、システムの作り直しが多く発生してしまうこと。それだけ、デバイスからシステムまで全体をトータルで設計するのは難しく、多くの困難が伴うことから導入をためらってしまうというのだ。

そうした課題を解決するために投入されたのがBL-02であると、松田氏は話す。先に触れた通り、BL-02はセンサーからゲートウェイ、ネットワークまでを1つのデバイスにパッケージングしているため、別途デバイスを選択する手間を省くことができる。またBL-02は、開発者が多いAndroidをOSに採用しているため、エッジ処理するアプリケーションの開発も容易だ。

また松田氏によると、クラウドやAIとの連携も想定した設計となっており親和性が高く、「作り直しの問題も回避できると思っている」とのこと。センシングから分析までトータルで考慮した専用のデバイス設計となっていることが、BL-02の最大のセールスポイントとなっているようだ。

●専用デバイスを用意する理由

○「スマートフォンでない」ことが求められる現場

だが、先にも触れた通りこれらの機能はスマートフォンに一通り備わっているものであり、あえて専用のデバイスを用意する必要があるのか、という疑問が湧く。この点について松田氏は、「業務用の端末なので、業務で使うという顔をしている必要がある」と話している。

特に接客の現場などで導入する場合などで、業務用端末を操作している姿が、スマートフォンをいじっているように見られてしまうのが嫌だという顧客もいるという。またスマートフォンでは必須となっているカメラ機能も、工場などでは御法度となる場合が多い。そうしたことから、スマートフォンとは明確に異なる企業ニーズに応えた専用デバイスが求められているのだそうだ。

また一般的なスマートフォンはファームウェアのカスタマイズが制限されているため、例えば「車のエンジンがかかった時にデバイスをオンにし、エンジンを切ったらオフにする」といったようなカスタマイズは、専用端末でないと実現が難しいという。加えてスマートフォンはモデルチェンジの頻度が高いことから、長い間安定して同じ機種を供給してもらうという意味でも、専用端末のメリットがあるのだそうだ。

松田氏は、少子高齢化や訪日外国人の増加によるインバウンド対応などといった社会課題と、それに伴う労働者不足や多言語対応など、企業が抱える課題を解決する上で、IoTの活用による業務効率化や業務の継承が大いに貢献すると考えているようだ。それだけに、BL-02の活用によって企業のIoTを一層支援していきたいと、松田氏は話している。

一方で通信事業者として見た場合、通信量が少ないIoTはネットワークによる売り上げがあまり見込めないので、通信を軸とした包括的なソリューションの提供によって収益を上げる必要がある。そうした意味でも、ネットワークだけでなく、汎用的な用途に応えられる専用のハードを提供するというビッグローブのアプローチは、IoTに詳しいとは限らない顧客を獲得する上で、有効に働くと考えられる。後はシステムも含めたソリューションをいかに幅広く展開できるかが、勝負になってくるといえそうだ。