「シュッとした写真」を撮ってもらうコツ

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SNSなどで自分の写真が必要になったとき、どんな写真を載せているだろうか。証明写真のような「真正面」からのカットは印象が悪い。「シュッ」とした写真を撮るにはどうすればいいのか。40代の男性ライターが、プロカメラマンの指導を受けてきた――。

■女性の写真写り向上に比べて……

「昔に比べるとキレイな女性やかわいい娘が増えた」と、筆者の周囲ではときおり話題にのぼる。もちろん日本人の造形が大幅にアップデートされたわけではないだろう。おそらくその理由はスマートフォンとSNSの普及だ。写真を何度でも気軽に撮り直せるようになり、その写真を簡単にシェアできるようになった。撮られたり見られたりする機会が増えれば、普段のファッションやメイクにも自然と磨きがかかる。

ひるがえって男はどうか?

以前に比べて見た目に気を使う男性は増えたように感じられる。しかし写真となると、プリクラ以降、この20年で「盛る技術」を日々研鑽してきた女性に比べれば、ごく一部を除いて未熟と言わざるをえないだろう。ひらたく言えば、男性の多くは写真慣れしていない。

SNSだけでなく、企業のホームページなどでも社員のプロフィール写真を掲載するケースが増えている。仕事でもプライベートでも、もはやカメラからは逃げおおせられないのが現実だ。ならば男もそろそろ「撮られ方」のスキルを磨くべきではないか。

■カメラと向き合うときの気構えを学ぶ

それを学ぶべく、9月9日に「新宿マルイメン」で開催された「『2時間で写真写りが良くなる』写真の撮られ方教室」に参加してみた。主催は「ストアカ」という“まなび”のマッチングサイトで、講師はプロカメラマンの橘田龍馬氏。通常は女性向けにおこなっている人気講座を、マルイメンとの協賛で男性向けにアレンジした特別回だという。

今回の定員は8名。筆者が参加した回は満席で、見たところ受講者は20〜30代が中心だ。この講座では、プロフィール写真を撮るときの対応方法についてレクチャーする。ポイントは「カメラと向き合うときの気構えを知ることで、写真自体への苦手意識を減らすこと」(橘田氏)。

受講者の悩みは「写真写りがよくない」といったものから、「カメラを向けられると緊張してしまう」「笑顔はいいけどキリッとした表情が苦手」「集合写真でにらんでしまう」「趣味のカメラでモデルの自然な表情を引き出したい」とさまざまだ。

橘田氏は、「誰も写真の撮られ方を習った人はいないから、写真写りがよくないのは当たり前」と話す。

「撮られ方は単なるスキルだから、やり方さえ覚えれば誰でもできます。問題は、恥ずかしい気持ちがそれを邪魔すること。写真の8割はメンタル。感情が表情に出てしまうから、まずは緊張を解きほぐすことが大切です」

そこで示されたのが、橘田氏が仕事で実践しているという被写体への「魔法の言葉」だ。

「『目をつむってもいいよ』と言うんです。みんな『目をつむってはいけない』と緊張してるから、表情が硬くなってしまうんですね。でもプロフィール写真なんてベストな1枚があればいいんだから、すべての写真をよく撮られる必要なんてないし、NG写真がいっぱいあってもいい。だからまず自分で『目をつむってもいい』と思うだけで、とてもリラックスできるんです」

■ポーズの決め手はこの5つ

続けて、表情に直結する「姿勢」について具体的な指導が入る。いわく──

□カメラに対してななめ45度で立つとシュッとして見える
□逆に真正面に向くとアスリートのように大きく強く見える
□足はレの字で開いて立ち、後ろ足に重心をかけると細長く見える
□前脚の膝を少し内側に曲げるとより細長く見える
□手の位置は左右非対称が基本。片側だけポケットにかけるなど

などなど。いずれも小ネタのようでいて、覚えておけば確実に差が出る、つまりは自信につながるポイントばかりだ。

姿勢ができれば、あとは表情だ。一般的には、口角をあげて目を大きく見開いた表情がいいとされているが、橘田氏は「笑うと目が小さくなるのが当たり前です。目が大きくなるのは、びっくりしたときの表情。それを両立するのは不可能なんです」という。

「僕はモデルさんからいい表情を引き出すために、『最近なんかいいことありました?』という質問をよくします。そうすると思い出し笑いをして、自然な笑顔が引き出せる。写真を撮られる時には、好きな食べ物を食べるとか、自分が楽しいと思うことを想像するといいんです。逆にかっこよく撮られたい時は、自分の好きな俳優を思い出すとか、心の中でスーツ姿になってみるのも有効です。どういうふうに写りたいかゴールを決めておいて、自分が何を思えばどういう表情になるのか、妄想の引き出しをたくさん用意しておくといいですね」

そのほかにも「『振り向いた時にシャッターを切ってください』と伝えておいて、表情を作るまでレンズから目線を外す」「ずっと固まっていると緊張するので、体を動かしてみる」「カメラマンと常におしゃべりしながらリラックスする」といったコツがあるという。

2時間の講座中、何度もくり返されるのがメンタルの重要性だ。たとえ恥ずかしくてもナルシストだと思われようとも、「なりたい自分に『なりきる』のが大事」と橘田氏は説く。教室の最後には、参加者全員のポートレートを橘田氏が撮影。後日2パターンの写真が10〜20枚程度データで送られてくる。受講料は2時間で5900円。プロカメラマンの細かい指導つきで写真を撮ってもらえると考えれば、リーズナブルだろう。

カットの内容も用途ごとにオーダーできる。参加者の希望は「合コン前の顔見せ用」「マッチングサイトのプロフィール用」「会社の社員紹介ページ用」などだった。

■公開!これがビフォー・アフターだ

筆者は、「ITベンチャーの経営者風」「自由人を感じさせるフリーランス風」というお題で、2パターンのスマイルカットを撮影してもらった。比較用に撮影した真正面からの写真を撮影しておいたが、比べるとその差は歴然。自分のイケてる写真が数枚あると、かなり自信がつきそうだ。

「やはり女性に比べて、男性は写真に撮られるのが苦手な人が多いですね。特に堅い企業に勤めている方で、年齢や社会的地位が高くなればなるほど、撮影で苦労します。会社案内や取材記事ならば、いい写真を使ったほうがいい印象を残せてビジネスもうまくいくはずです」(橘田氏)

男性はまだ、女性のような “盛る”テクニック以前の段階に立ちすくんでいる。だが仏頂面の正面顔をさらし続けることは得策ではない。マインドセットを変えて、「写真の撮られ方スキルはビジネスの一環」ととらえることが重要になってくるといえそうだ。

(ライター 熊山 准)