ケネディ大統領と握手する池田首相(右、1961年)。歴史的な連騰記録は何を意味するのか(写真:AP/アフロ)

衆議院選挙で与党が大勝した。日経平均株価は10月23日で史上最長の15連騰となるだろうか。23日の株価がどうなるかもさることながら、今回は連騰記録の意味について考えてみたい。

過去の連騰記録は「大相場のシグナル」だった

まず、今回の20日までの「56年9カ月ぶりの14連騰」は、外国人投資家が買い転換しただけの中で偶然起こった事象に過ぎないかもしれない。事実、現物先物合計の外国人投資家売買動向を見ると、9月第2週からの買い転換では当初の3週間は現物・先物手口がちぐはぐで、買い戻しにバタバタしている様子がうかがえた。

だが、10月に入っての2週間は現物・先物とも大量買いとなり、明らかに新規の買いが入ったことを示している。しかし、下値を支えていた日銀のETF(上場投資信託)買いがこの間、「何もすることが出来なかった」ほどの「これだけの連騰」は、単なる偶然だろうか。

直前に並んでいた13連騰の1988年は、大きな意味を持っていた。その頃を経験した投資家は多いと思うが、この13連騰は、前年である1987年10月のブラックマンデーの傷が癒え、翌年の1989年の平成大バブル相場の入り口となった。ある意味では「株価的バブル相場に火をつけた13連騰」と言えるかも知れない。

また、1960年―1961年の年越し14連騰を経験した現役の投資家は少ないと思うが、安倍晋三首相の祖父である岸信介内閣が1960年の「安保騒乱」で辞職し、その後を受けた池田勇人内閣の所得倍増計画によって成長が加速した。この1961年に実質経済成長率14.5%をたたき出した。その年の新年スタートがこの14連騰だったのだ。今回の14連騰も、意味のないものとは思えない。ではどんな意味があるのだろうか。少なくとも2つの意味がある。

一つは、チャートを見ると見えて来るものだ。ひとまず次の日経平均の目標は、1996年6月26日につけた2万2666円だということがチャートからわかる。これは1997年に消費税が増税(3%から5%)され、立ち直りかけたバブル崩壊後の日本経済が致命傷を受け、真性デフレの奈落に陥った直前の高値なのだ。

つまり1996年の高値を取るということは、1997年の橋本龍太郎内閣の大失策を、20年かけて取り戻すことを意味する。

もう一つは、56年前の14連騰は、日本の経済政策史に燦然と輝く「池田所得倍増政策」の成果であり、それに並んだということは、「アベノミクス」が「所得倍増政策」に並んだということにもなる。

23日の株式市場は総選挙の結果をかなり織り込んでおり、与党大勝という結果に対する反応は意外に乏しい感じもする。だが、先週末のNY株の大幅高、ドル円相場の1ドル=113円半ばへの円安、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)日経平均先物2万1550円などから考えると、15連騰になりそうな気配だ。

もし仮に前場で下げれば、10月に入って1度も買えなかった日銀ETFの買いが入るだろう。もし月曜日の株価が15連騰になると、当時とさまざまな条件は違うとはいえ、「所得倍増政策」を「アべノミクス」の評価が抜いたことになる。祖父である岸内閣が倒れた後、評価の高まった池田所得倍増政策への、「孫のリベンジ」という面白いエピソードも含んでいる。

銀行株がさらなる上昇のカギ握る

さて、日経平均は目先の目標が見え、それを抜けると新しい日本経済が見えて来る。だが、TOPIX(東証株価指数)で見ると景色が違う。TOPIXは20日現在1730ポイントであり、2008年のリーマンショック前の2007年2月に付けた1823ポイントをまだ抜けていないのだ。原因は時価総額の大きいメガバンクの株価水準の違いだ。その頃の高値と今(20日終値)を比較して見ると、三菱UFJフィナンシャル・グループが1950円と727円、三井住友フィナンシャルグループが1万3900円と4387円、みずほフィナンシャルグループが1030円と198円といったように、株価水準が全然違う。

筆者はこの14連騰の意味を評価し、2019年に向けた大相場をイメージしているが、カギを握るのは銀行株ということがわかる。リーマンショック前は、この異常な株価が示すように、海外の投資銀行が突っ走った「サブプライム金融バブル」だった。ここを抜くということはかなり難しい。上向いた日本経済がどのような条件でどこまで銀行株を押し上げるか、最大の関心を持って見守って行きたい。

今週の日経平均予想レンジは2万1200円―2万1850円としたい。